オーディオ日記 第50章 幸せのひと時(その8)2020年9月25日


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何処まで行けば

果つることなき妄想も動き出せば自ずと現実となる。妄想のままで終わらせるのか、ダメ元でもチャレンジしてみるのか、どちらの選択肢であっても良いのだろうと思うけれど、やはり手元に引き寄せたいという想いはあるもの。遥か昔に忘れてしまった片思いというような感情なのか、と訝しんでもみるのだが。

あれこれ思い返してみれば、当方のオーディオのかなりの部分はスピーカーユニットへの形容し難い憧れで成り立っていたような気もする。そこに機能美というものがあるのかどうか定かでは無いのだが、遥か昔にJBLのユニットやホーンの姿、形に惹きつけられるものがあり、それがずっと継続しているんだろうと自己分析している。社会人になってそこそこまともなオーディオを購入できるようになった時、何よりもまずスピーカーユニットの選定からスタートした。完成品のスピーカーシステムを購入しようとは最初から思わなかったのだ。もちろんその後幾多の変遷もあったのだが、サブシステムとしてはともかくメインの環境にスピーカーシステムを導入したことはない。

自分なりの言い訳を考えれば、マルチアンプシステムで自在に自分なりの音を組み上げたいということか、、、だが、素人である自分で構成を考えたスピーカーなどともすれば破綻した音しか再生してくれない。多分そういう時代が長かったんだろうと自分でも思う。今でこそ測定ツールなどは当たり前になっているが、マルチアンプシステムの構成には理論と経験のみならず客観的な測定という指標が不可欠。測定に関しては早くから必要性を感じていたが、昔手にしていたのは単なる音圧測定機。特定周波数のサインウェーブを発生させ、その音圧を測るという単純なもの。自分で周波数分布に応じてレスポンス状態をグラフ化するなど工夫はしていたが、誤差が多くてそれほど効果的とは云えなかった。

今となれば多様で簡便、かつ廉価な測定機器やソフトウエアも豊富で自分で使いやすいと思うものを選べば良いだろう。加えて、位相やタイムアライメントまでちゃんと測定してくれるのだ。全幅の信頼というのは危うい点もあるので聴感での補正は必須なのだが、測定に裏打ちされた再生音は少なくともあまり破綻はしない(良い音がしているかどうか、それは別問題なのだが、、、)。技術の進歩がもたらす恩恵が大きく良い時代になったと思う。

だが、測定結果がまずまずということと、オーディオ的に納得する音かどうかは微妙にズレもある。それは当然ながら部屋の影響や使用している各機器の個性も関係してくるのだが、やはりスピーカーユニットの個性、能力が再生音に対して支配力を持つ。周波数特性や歪率、指向性、過渡特性などなど個性を評価するパラメータはいろいろとあるのだが、総合的にみて「魅力的な音」との関係性は今もって当方には判らない。

一般的にスピーカーシステムを使っているオーディオファイルの多くはその「システムとしての音」を販売店などで聴いて惚れ込み導入するものと想像する。そして音のブラッシュアップについては設置に係わる部屋との関係性(主として配置)、チューニング要素としてのケーブルやアクセサリーや電源周りに注力するものと思う。

ユニットの選択から始める場合、ユニットの音を聴いての評価は案外と難しい。自作派でそのユニットをお使いの方に拝聴させていただく以外は確認のしようもない(だが、案外と有名なユニットにはユーザーが居るもの)ので、なるべくその努力はする。しかし単体ユニット構成ということはほぼないので、出音だけでは判断仕切れないこともある。また、比較的新しいユニットの場合や姿、形に惚れ込んでしまった場合は実際に聴いて納得して、というステップは飛び越さざるを得ない。結局のところ、大して当てにもならない直感に頼ることになる。

そしてそこから戦いと葛藤が始まる。優秀といわれるユニットでも自分のシステムの中に組み込んで十全に能力を発揮してくれるようになるまでは存外に時間も掛かる。もちろん使いこなしが下手な当方所以でもあるのだが。

現状我が家の4way構成は二つのパターン(ミッドハイをAccuton C51とするかSony SUP-T11とするか)がありそこそこ落ち着いては来ているのだが、それでも妄想の中の理想は膨らんで行く。ミッドローも二つの構成で試したい。現状ミッドローのユニットはFPSであり、特段の不満があるという訳でもない。だが、より魅力的な音のするユニットは他にもあるかもしれない。実際のところは何が「魅力的な音」なのか、その定義すら自分では出来ていないのに、、、

少年の頃に、ふと何処かですれ違った少女に心ときめく時、その少女の性格や声など分る術もない。でも何故か惹かれる。そういう事はある。今はもう枯淡の境地のはずなのだが、スピーカーユニットが放つオーラの前にはいつかの少年と同じであって心を閉ざすことはできない。

新しいユニットを導入するとなれば、当然現状のシステムに波風の立つ変更を加えねばならないし、それが結果的に正解だったとなるとは限らないことは経験が教えてくれている。これがオーディオ的趣味の推進ということなのか、単なる憧れ的なものの具現化に過ぎないのか、一般論的に云うところのただの物欲なのか、、、

今回導入する予定のミッドロー用のユニットは今まで聴いたことがない(注記)もの。のみならず、このメーカーの他のユニットも浅学にして全く聴いた経験が無い。多少情報をググってはみたけれどそれで音が判る訳でもない。結局自分のシステムに組み込んでみなければ結果は分からないのだし、であればやってみるしかないだろう、そう自分に思わせるSomethingがこのユニットにはある。痘痕も笑窪とはよく言われることではあるが、何かが心の琴線に触れてくるのかもしれない。それはTextremeと呼ばれる振動板素材? あるいは姿、形? 正直、自分でも分からない(笑)。

(注記) 前回 リストアップしたユニット群のうち、Focal、Scanspeak、Morel、Accuton(型番は異なる)、Audio Technologyは聴いているが、ParadigmとこのSB Acousticsは未聴。また、カーボン振動版のユニットは所有したことがない。


                 4way SUP-T11構成の設定備忘録(2020年6月17日更新)設定値
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+4) 90 (+0) 110 (+17) 93 (+0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +0.0 +1.2 -10.0* +4.0
*DF-65 Att ON
マスターボリューム
アッテネーション
dB -7.0 -6.0 -3.0 -5.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 90.0 85.2 85.0 80.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

224
180

800
800

3550
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 24-24 24-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 0.0 -30.0 +28.5 +32.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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