オーディオ日記 第49章 終わりの始まり(その19)2020年7月25日


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ラズパイチューニング遊び

ラズパイオーディオもSymphonic-MPD V1.0.6となって、機能アップ、音質向上策を重ねてきた成果が一段と出ているように思う。一方でこのような汎用的かつ廉価な機器で音質追求や安定性を求める難しさも改めて実感する。ラズパイ4になって処理能力が一段と向上されたこともあって発熱対策などを中心に相当頻繁にファームウエアのバージョンアップが行われているようで、これがオーディオ的なアプローチとは必ずしも方向性が一致しないことになるようなのだ。この辺りは開発者にとっても非常に悩ましい点だと改めて思う。

ラズパイという機器は小癪にも結構細々とした設定が出来る。CPUのクロックは元より、GPUやメモリのクロック、電圧も微調整可能。だが、新しいファームウエアになるほどその調整の範囲が狭まり、自動設定になってしまうところもある。従って音楽再生にとって「最適な設定」というものが新しいファームウエアでは適用し難くなるという現実がある。このため敢えて古いファームウエアを選択せざるを得ない、ということも。しかし、ハードウエアのリビジョンが上がることによって、逆に古いファームウエアでは安定動作しなくなる、という課題もいずれ浮かんでくるかもしれない。

今までのPCオーディオの経験(PCベース)からはハードウエアが固定されているのであれば、安定動作するOSやファームウエア、ドライバーを敢えてアップデートせず「AS ISで使う」ということの方がベターであることが多かった。

現状のラズパイ4、Sympnonic-MPD V1.0.6では2019年8月時点のファームウエアが推奨であり、新しいファームウエアにすると若干の対応を加えないと安定動作をしない、という現象が現実に起きている。この一連の対応の中でいろいろと考えてみたのだが、やや古いこのファームウエアであれば自分でいろいろな制御ができることが逆に利点である。

で、しばしいろいろな実験をやってみた。まず一番にやってみたのは「電圧」である。これは config.txt における「over_voltage」と設定で細かい上下が出来るのだが、安定動作するのであれば、電圧は低い方が良いかもしれない、という試み。次に「core_freq」という設定。これは案外と広範囲に作用する設定のようで、Symphonic-MPDにとっての肝はメモリ駆動の部分。標準のSymphonic-MPDではこの部分はオーバークロックする設定になっている。だが、この部分もメモリ動作の観点であれば、CPU周波数のほどの依存関係は少ない(相対的なスピードが速いため)のではと推測し、これも下げる方向で実験してみた。

いろいろと試してみて以下は当方が案外これが良いんじゃないかな、と感じた設定。CPUクロック(arm_freq)は変更していない。(sdram_freqの設定はラズパイ4では無効なのでコメントアウト)

over_voltage=0
core_freq=360
core_freq_min=360
#sdram_freq=594
#sdram_freq_min=594

実体として聴き較べて大きな差が出るというような事は全く無いのであくまでも主観のレベルであるのだが、やや穏やかな方向だと思う。この辺りはそれぞれのお好みのチューニングということでも良いのかもしれない。

(閑話休題):今更失うものなど何も無い:

このタイトルは「ff(フォルテッシモ)」の一節からの借用である、、、若かりし頃から大切に集めてきたアナログディスクのほとんどを処分した。思い入れのあるディスクも結構あったのだが。実のところ喪失感はあまり無く自分でもちょっと意外である。この勢い?でCDも処分してしまおうかと。こちらは未だ多少の迷いはあるのだが。

そうなると手元に残る音源はほぼハードディスクに在るものだけとなる。一応バックアップは2次、3次と3台構成で取得してあるのでまぁ音源保全としては大丈夫かな、と。後はストリーミングで適宜という対応になるので、ダウンロード購入は別としてもこの先CDを買うことは基本無くなるだろう。買い物の楽しみがちょっと薄れるかも、なのだが。

機器構成に関して云えばまだまだ物欲は枯れてはいないと思うのだが、そこそこ納得の音が聴けるようなってきたこともあるのか、次のチャレンジや打ち手が見えて来ず明確に「次はこうしよう!」というものが現状無い。これを退化あるいは老化?による意欲減退と叱咤してみるのだが、具体的な行動には繋がっていかない。

良い音楽を良い音で聴きたい、という情熱がオーディオの本筋とは思うし、それが完全に実現できているとは全く思わない。だが、充分に幸せの音楽を堪能できるようにはなってきたんだろうか。オーディオは今ある音への不満とより良い音への期待値、そして自己満足という人間の根源的なところにある「成長の欲求」によって支えられているものなのかもしれない、と今更ながら思う。

多くの場合、音源の良さがオーディオの評価に直結する。また、良い音源というものはいろいろなシステムで聴いてもその輝きが失われる事は無い。逆もまた真なりで、納得の行かない音源を素晴らしく鳴らす、という装置には巡り会わない。結局そこには曲、演奏、録音という音源に対する三大要素が歴然と存在するのかもしれない。

だからと云って、素晴らしい音源をより自然でかつ感動的な音で聴きたい、という熱意や向上心までも失ってはいけないのだろう。ある程度の年齢になれば、「枯淡の境地」に辿り着くことが人間としてのひとつの幸せであることは間違いないと思うようにはなってきた。その年齢に自分が到達しつつある事は改めて言うまでもなく自覚し始めている。だが、枯淡の境地に至ったという自覚も感慨もまだ無いのだ。

我が家のオーディオシステムから聴ける音楽が「好ましく」なければ、それはどこかに課題、問題があるのでは?とあれこれ呻吟してしまう事は珍しくないし、そのこと自体は何も変わってはいない。だが、日々聴き流す音楽にだんだんと不満が無くなってきた事ももう一つの事実ではある。これが自分のオーディオの成長の成果だと考えればこんなに嬉しい事はない。だが、それが冷徹に音を評価する能力の衰えかと思えば震撼せざるを得ないこともまた現実。

おそらく「足るを知る」日々は自分には訪れはしないだろうという予測、予感はある。一方で、どこかに上昇のきっかけやそのための施策があるはずだとの想い、期待値もある。だが、闇雲に何かやってみたところで結果はたかが知れている、という経験値も邪魔をする。ならば足掻くよりは幸せの音楽を聴いている方が良い。真にこの思考こそが弊害であるとは気付かずに、、、

自分の音を劇的に変える決定打など妄想の中にしか存在しないだろうことは薄々は判ってきている。だが、それでも見栄という飾り荷物を振り捨てて、自分の理想を探していかねばならない。機器の価格や価値観、評判などは実際何の役にも立たない。自らの実聴、実験、経験での評価しか自分の音を向上させる要素にはならない。

だから、捨てるべきもの、捨て去るべきもの、は多くあるのだ。滅びに至る門は広く、幸せの音楽に至る門は狭い。「ff(フォルテッシモ)」の一節からまた借用。「激しく昂ぶる夢を眠らせるな!」


                 4way SUP-T11構成の設定備忘録(2020年6月17日更新)設定値
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+4) 90 (+0) 110 (+17) 93 (+0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +0.0 +1.2 -10.0* +4.0
*DF-65 Att ON
マスターボリューム
アッテネーション
dB -7.0 -6.0 -3.0 -5.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 90.0 85.2 85.0 80.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

224
180

800
800

3550
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 24-24 24-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 0.0 -30.0 +28.5 +32.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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