オーディオ日記 第49章 終わりの始まり(その8)2020年4月29日


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あれこれ思うこと:(究極のデジタルトランスポート考)

何十年にも亘りオーディオに勤しんでいるといろいろなことがあるなと回顧することも多いのだが、現状を鑑みるに音楽とオーディオの有難さが身にしみる。旅(基本は冒険の旅=貧乏旅行)することは生きがいとも云えるもののひとつだし、体育会系の活動も未だ捨て去れない、、、でもしばらくは我慢状態か。

長尺ものの音楽をじっくり堪能する事は普段は時間に追われて案外とできないものなのだが、この機会に改めて味わおうと思っている。またオーディオ系のプラッシュアップも日々の努力が必須なのでこれもしこしこと。一方でオーディオ仲間との相互訪問がしばらく難しいのはとても残念、、、

さて、つらつらと振り返ってみれば、この一年余りデジタルトランスポート探しと云いながら結局ラズパイオーディオにどっぷりだったな~と。ハードウエアのことやLinuxの中身などはあんまり判っていない(前提の知識が無い)のだが、見様見真似であれこれと手探りで環境構築をしてきた構成もかなり煮詰まってきたようにも思う。相当に満足感の高い音楽のプレイバックがやっとこさ可能となってきたと云っても良いのかもしれない。

自分のPCオーディオの越し方を俯瞰するに、デジタル再生の難しさを痛感し続けてきたことが、このラズパイチャレンジの原動力になったのかも、とは思う。だが、どうしてこんなに音が変わるのだろうかと自問しても明確な答えは出ない。音が変わること自体は上流がアナログであろうとデジタルであろうと同じとは頭では理解している。だが、デジタルの方がより多くの可変要因を抱えているような気がしてならない。特にPCオーディオの場合はハードウエア領域にまで自分で踏み込まねばならない。単に機器の吟味、組み合わせ、セッティングということだけには留まらないsomethingがまだどこかに隠れている。

音源ファイルからデジタル信号を生成して伝えるという過程で多くの変化(基本的には劣化なのかとも思うのだが)が起こっているような気がしてならないのだ。所謂「ビットパーフェクト」という言葉があるのだが、これは何処までの部分をさしているのだろうか突き詰めて考えてみれば曖昧模糊としている。D/A変換を行う前のプロセスで完全にこれが保障されていれば(理論的にはであるが)、音源ファイルからデジタル信号を生成してD/Aチップに渡すという最上流のプロセスで音の変化など起きない(同じDACを使う前提に於いて)ようにも思える。だがそれは現実とのギャップとして痛感するところ。音楽から生気を奪い雑味を増加させるということが簡単に起きてしまう、、、

要因として電源系の良否も考えられる。またクロック廻りの影響も実際のところ無視できない。デジタルファイルをCPUプロセスで処理、演算しデバイストライバーをキックする。デバイスドライバーは物理的な出力デバイス(USBチップ、LANチップ、PCI-eカード、ラズパイならHATなど)を駆動する。コンピュータ処理なので確かにこの過程ではビットパーフェクトを損なう事象は起こり難いだろうとも思う。だが、最終的にI2S信号からD/A変換に至る処理で音の変化(劣化?)は起きていると感じる。それは処理タイミングの揺らぎ、あるいはクロック精度などでもたらされるものなのか。

PCオーディオにおける負荷変動は実際間違いなく音へのインパクトがあるし、またクロックの良否やリクロック処理に於いても音の差が現れる事は否めない。シンプルなOS環境、プロセスカットの効果は決して否定できない。また高精度のクロック、そしてリクロック処理も音の純度を高める方向に間違いなく作用していることは体感している。

デジタルと云っても「デジタル信号も所詮はアナログ波形」ということに鑑みれば、ビットパーフェクトなどあり得ないとも云えなくもないのかも。「信号のエラー訂正が行われず垂れ流し」なのが音の変化の要因、というなるほどと思ってしまうような説もある。純粋に科学的に分析、解明すれば真相は見えてくるような気もするが、一方でオーディオビジネス上ではそれでは困る、ということも多々あるのかもしれない。オーディオファイルの感性に訴えた方が、あるいは理論的根拠など無い方が都合が良いこともあるのかも。逆に訳のわからない理論を振りかざして優位性を主張するということだって可能である。

シンプルに考えれば、「処理プロセス」と「伝送」という組み合わせとなっているものと大筋は理解できる。コンピュータ処理的にプロセス(演算)に誤謬が無ければ、あとはDACに至るまでの伝送(含むプロトコル変換)の課題か。

もちろん、オーディオシステムによって再現される音はここで言うところの「デジタルトランスポート」だけでは決まらないのだが、後段の構成が全く同じなのに受ける印象が変わる事は誰も否定できないだろう。変化自体が質的な向上に繋がっているかどうかは単純には語れず、逆に後段となるシステムの力量にも大きく依存している。

だから、それ故に「絶対的無誤謬のデジタルトランスポート」など「有り得ない」という悲観的な結論にも至るかもしれないが、それではPCオーディオをやる楽しみも発展性も減少してしまう。究極的に音の良いデジタルトランスポート! それを信じているからこそ、である。

人それぞれ拠って立つところが異なるように、ここでも感性や哲学が違う。従ってより完成度の高いデジタルトランスポートを求めようとする上でも評価基準、価値判断はそれぞれなんだろうと思う。そもそも音の差を感じなければ、そこに良し悪しが存在するという根拠は成り立たない。

翻って思えば、この訳の判らない、あるいは在るか無いか微妙なものも追い求めてきたような気もする。全てが分った、などということは有り得ず、そんな自信も全く無い、、、

単純な影響要素の変化(悪影響の排除)だけで「音が良くなる」ということも実際有ると思うのだが、多くの場合は重層的である。つまるところ僅かな劣化要素を丁寧に取り除いて行くというプロセスか、、、日本酒の醸造において雑味を減らすために精米割合をどんどん上げていくということがある。何かその辺りにも近いようなものがあるようにも思うのだ。

現実の、いちオーディオ愛好家としては確かな理論、科学的に正しいものなのかどうかやはり分らないことが多く進む方向に逡巡してしまうことも多々。あるいはいずれ技術的なブレークスルーが起こって、そんな杞憂は無くなる日が来るのかもしれない。ゼロリンクという新しいテクノロジーも額面通りであれば大いに期待し得る。

音楽を聴きながら堂々巡りもしながらこの駄文を書いているのだが、やはり自分のラズパイオーディオの進化も若干はあったと改めて思う。特にSymphonic-MPD。現在は未だベータ版のV.1.0.0b12なのだが、b11からこのb12になって予想以上のジャンプアップが実感できている。内部処理の徹底的な最適化を実施したとのこと。詳細は知る由もないのだが、まだこれだけの伸び代があったのだと、、、高域方向の純度感の高さ、低域のディフィニションの確かさは他のプレーヤと比しても明確なアドバンテージがある。

ラズパイという廉価な機器で究極(に近い)デジタルトランスポートが出来てしまったら、、、ある意味で(業界の?)激震であるかもしれない。かってESOTERIC P-0が登場した時のインパクトも思い出す。だが、それは僅か先の未来に実現しつつあるもので遠い話では最早ない。

しかし、自分としての謎解きは終わっていない。期待し続けているSymphonic-MPDとて素の状態のラズパイ4で聴けばここまでの感激は実は得られないのだ。ノイズカットトランスからACフィルターを通したアナログ電源でDCラインにもノイズフィルターを入れて、ラズパイにはHAT経由供給している。またデジタル信号ラインへのコモンモードノイズフィルタ、果てはHAT基板上のクロックを高精度のものに換装し、ここもクロック専用のアナログ電源から供給している。また、ラズパイの後段では同様にノイズカットトランスから電源供給している10MHzマスタークロックをベースとしてS/PDIF信号の打ち直しを行っている(リクロック処理でここも専用アナログ電源)。

確かにラズパイ自体は廉価だろう。だが、結果として一般論から見れば異様とも云える程のデジタルトランスポート周りの構成になってしまっていないだろうか。目指すべき目標に近づけるのであれば、それで良いのかもしれないのだが、、、理解できないことも多いが故に何か釈然としないものを引きずっている。

しかしながら、この構成で聴くBruno Walterのモーツアルト交響曲40番第二楽章、Leopold Stokowskiのスメタナ我が祖国第二曲モルダウの何と美しく饒舌であることか。これらの古き音源を何ら色褪せることなく、今ここにある音楽として感動を提示してくれるのなら確かに幸せだし、すべて許せる気もする。

(参考)
PC Audio Configuration


                 4way構成の設定備忘録(2020年4月4日更新)設定値
項目 帯域 備考
Low Mid Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
Sony
SUP-T11
Accuton
C51-286
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+4) 110 (+17) 93 (+0) 93 (+0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.2 -10.0* +1.7 +4.5
*DF-65 Att ON
マスターボリューム
アッテネーション
dB -3.0 -3.0 -6.0 -3.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB -6.0 -12.0 -6.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.2 85.0 82.7 82.5
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

710
710

1600
1600

2500
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-48 24-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -7.0 -36.0 +28.5 +32.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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