オーディオ日記 第48章 妄想と葛藤(その21)2020年4月4日


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葛藤は進歩へ:

オーディオも人間社会もであるが、おそらく現状に対する葛藤がなければ進歩など無いのだろうと思う。安寧の中でぼやぼやしていれば現状維持すらやっとではないかと危惧する。それでも、ただうだうだと音楽に浸る心地良さは「何かをしなければ」という気持ち、意欲を萎えさせる。へたに弄るよりは現状維持でも良いのではないかと、、、

物事に対して否定的になっている訳ではないが、もうこれが終着駅かもしれない、と感じるようになってきた。PCオーディオにおける構成やソフトウエアについても、その微小の差異を云々ということに徐々に意義を見出せなくなりつつもある。理想は理想として厳然と辿り着けないままにあるのだが、この先どのようなアプローチでブレークスルーして行くことが望ましいのか、その道を見出せていないことも大きい。専用のリスニングルームという構想が既に選択肢として無い以上、瑣末なところに終始しているだけでは大きなステップアップも起こりそうにもない。

オーディオは総合力であって小さなことも含めた積み上げである事は経験的にも承知している。音楽を聴くツールだけではないという存在価値も十分に認識している。だが、愛聴する多くの音源は決してキレキレの録音のものではない。Oldiesと呼ばれる50~60年代の音源の音楽としての素晴らしさをしみじみと感じることも多い。それは単なる懐古趣味なのかもしれない。しかし、聞こえだけを意識したようなオーディオ的音源をチェックや試聴用に度々使ったとしても、その音楽に愛着を感じる事はほとんどない。

Mozartの音楽再生については、多少なりとも納得の境地にはなってきた昨今であるが、このところ若干古い音源でもあるRockやVocalものを聴くことが増えているという現実がある。改めてその良さを実感していると云っても良いかもしれない。この背景には4wayスピーカーシステムの主役としてSUP-T11というホーンドライバーが確固たる主役として返り咲いたことがある。

ある意味での普遍的な音を求めて、スピーカーユニットを試聴し、また導入もしてきたのだが、此処へ来て音楽として官能を刺激してくれるユニットへ回帰したということになる。つまるところ普遍的な音を求めたはずのユニットでは音楽が楽しいと感じる部分が少なく、魅惑的な音質というところにも行き着かないかもと改めて理解できたのかもしれない。音の魅力はホーンドライバーの固有のキャラクター故であるかもしれない、ということは否定しないが周波数特性的には少なくともフラットではある。

単純にスピーカーユニット的に考えれば、ホーンドライバーというものは時代の流れも含めて逆行することにも繋がる方向性だろうと思う。だが、110dBという能率に支えられた4インチアルミダイアフラムが醸し出してくれる音楽の官能の機微はやはり何ものにも代え難い。自分で思う事は、今まではこのホーンドライバーの良さを引き出すことが出来ずにいたのだ、という反省である。極めて高い能率、つまり一般的なユニットの能率を90dB程度と考えれば、+20dBということは10倍の感度を持っているということ。それ故に、上流の音の純度に対しては極めてシビアに反応する。微小な音を曖昧にすることなく、上流部分に課題があればその課題をイヤな音として冷徹に提示してくるのだ。

だが、ここをしっかりとコントロールできれば、その音の魅力や自然さ、反応の良さは比類がない(ホーンドライバーの愛好家はそれ故に存在するんだろうと思う)。今、ようやっとそれが実感出来るようになった、ということかもしれない。その要因として思う事は、やはりデジタルトランスポートとしてPCオーディオに取り組んできたことの若干の成果なんだろうか。昨今のPCオーディオは相当に高い次元にあるデジタル出力が可能であると実感している。またデジタルノイズ対策、電源対策についても様様なノウハウが共有されるようになり、完璧では無いにしてもそれらを着実に実践することにより、所謂上流の音の純度が相応には確保出来てきたと自己流ではあるが要因分析をしている。

また、ホーンドライバーの受け持ち周波数帯域をあまり高域方向に伸ばさず(必然的に指向性が強まるので現状は1600Hzまで)、それ以上はセラミックドーム(4KHzまで)、ベリリゥム(4KHz以上)という現代的なユニットに任せてしまうということも功を奏しているのかもしれない。リアリティと質感、音色はホーンドライバーに、倍音の伸びや超高域の自然さはそっちに任せてしまうという構成だ。

4wayマルチアンプシステムとデジタルチャンデバにより各ユニットの受け持ち帯域は自在にコントロール可能なのだが、それはまた音楽の纏まりという観点からは高い課題を要求する。当然ながら測定ツールの存在無しではまともな音を出すことすら厳しい。いろいろな試行錯誤、葛藤を経ながら、情報を漁り良かれと思える事はやってみる、素晴らしい音を出しているオーディオ仲間のシステムの音を聴かせていただきそのエッセンスを取り込むよう努力する。何よりも出てきた自分の音に単純には満足しない、そう言い聞かせてやってきた。またデジタル故にデジタル絞りは使わない、構成的にもSimple is the best(余分なD/A変換は行わない)という原則にも固執してきたため、特にマルチチャネルアッテネータという音量調節のための機器の調達にかなりの苦労をした経緯もある。

駄耳故に纏め上げるのに相応の時間が掛かってしまった事はやむを得ないが、それでも大言壮語できるような音は此処にはない。ただ普通に音楽が流れるのみ。小音量でも程々でも、時にやや大きめでも、さらさらと優しく音楽は流れていく。それでいいんじゃないか、と思い始めたのは実のところどういう心境の変化かは自分でも分らない。好きな音楽に、あ~素敵だな~と素直に浸れれば、それが至福というものであろう。

もちろん微温湯的に自画自賛する心算も毛頭無い。音に対する葛藤が無ければ進歩は止まる。その真理は否定しようもない。だが大切な事は、良い音楽があってこそ。未だ知り得ていない素敵な音楽が沢山ある。新しい感動を求めることの重要性は今更云うまでもなく、この先のオーディオライフを左右するような幸せな音楽に出会いたいと切に思う。


4way構成の設定備忘録(2020年4月4日更新)設定値

項目 帯域 備考
Low Mid Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
Sony
SUP-T11
Accuton
C51-286
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+4) 110 (+17) 93 (+0) 93 (+0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.2 -10.0* +1.7 +4.5
*DF-65 Att ON
マスターボリューム
アッテネーション
dB -3.0 -3.0 -6.0 -3.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB -6.0 -12.0 -6.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.2 85.0 82.7 82.5
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

710
710

1600
1600

2500
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-48 24-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -7.0 -36.0 +28.5 +32.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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