オーディオ日記 第47章 巡礼(その8)2019年11月4日


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私を忘れないで:FPS編(その3)切磋琢磨

人生において大切なものは家族であることは疑う余地もない。そして仕事(今はもうリタイアしたが)、旅、友人、音楽、そこに数々の冒険の思い出も加わる。大切なもののすべてをリストアップすることはとてもできないが、心の中にある記憶が自分の人生を語ってくれている。言葉を変えれば思い出こそが自分の人生そのものなのかもしれない。

オーディオにおいても音楽を聴くという幸せの時間が何よりも大切なもの。ほとんどの場合オーディオや音楽に向き合うのは自分一人なのであるが、良き仲間に巡り会えればそれはまた至福の時間ともなる。昨今ではオフ会などという表現もあるのだが、当方にとっては音楽や友人との交流という意味でもっと大切なものだと思う。もちろんオーディオを核とした話題や寸評が中心になるのだが、そこに多様な音楽がBGMとして加わり、お互いのオーディオの哲学ともいうべき経験談や意見、施策の交換も行われる。そして何より感動するのは究極を目指そうとするオーディオへの熱意そのものである。また時には美味しい料理とお酒、そして息抜きとなる温泉や散策、そういうものが加われば更に云うことなし、の喜びとなる。若き日のように夜を徹して語らうという程のことは無いにしても、夜も更けてもなお語り尽きないオーディオや音楽の話題があることは幸せである。

また自分のオーディオシステムの音との対比において学ぶことも多い。日頃聴き慣れた自分の音はある種の惰性もあって、そこそこだけどまぁこんなもの、という閉塞感が強い。だが、手塩にかけて練り上げられたシステムの音を拝聴させていただく時、自分の音の未熟さ、至らなさに大いに気が付かされることになる。有体に云えば、そこそこという自惚れや満足感などぬるま湯のようなもので、目指さなければならないのはもっともっと高みにある音のはずなのだ。おそらくは自分ひとりのオーディオで終始していればここから抜け出すことはかなり難しい。だが、別の新たな音に触れれば、それが自分にとっても切磋琢磨となっていろいろな見直しが始まり、少しでも少しでも前進しなければという強い気持ちになる。

それはまた自分のシステムの構成に於いても、切磋琢磨しうるような異なる機器や構成を持つことによって、それぞれを練り上げていくことにもなるのだと思う。個性の違い、パフォーマンスの違いを正確に判断し、それを踏まえて己の好みの音に近づけていくことはそう簡単ではない。だが、基本はやはり良い音をたくさん聴くこと、そしてそれを自分のシステムの音としてフィードバックしていくことなんだろうと思う。

もちろんすべての機器を二重にすることはできないのだが、我が家ではデジタルトランスポートの役割を果たす部分(PCオーディオ)の構成と、4wayのスピーカー構成において二つの系統を競わせている。時にその差は大きくも感じるが、思ったほどではないという認識になることもある。一方の利点、アドバンテージと思う部分をもう一方に取り込む努力、あるいは一方の欠点を対比によって確認しその弱点を補うように務めること。そういう循環も切磋琢磨としては重要なのではないだろうか。

音楽を聴くツールとしては、本来はひとつの仕組みで満足できれば十分なのかもしれない。そのようなシステムに本当は安住したいのだとも思う。だが、より良いものを目指そうとする時、比較と取捨選択は必ず付き物となる。絶対的な良さを判断できる能力、価値観があればこのようなことは不要なのかもしれないが、そこは凡人の悲しさ、僅かでも良い部分を見出そうとする努力が不可欠なのだ。

現状デジタルトランスポートではJPLAY FEMTO Dual PC構成とラズパイベースのSymphonic-MPD(V0.9.2)が相当拮抗してきており、構成のコンパクトさ、操作性、安定性の観点からはSymphonic-MPDが優位となりつつある。特にiOS系のタブレット、スマートフォンからの操作性に関しては新たにyaMPCというアプリを得て、最早他が追随できる余地はないほどとなっている。4wayのマルチアンプシステムにおいては紆余曲折を重ねてきたのだが、スピーカーユニットの構成として、SONY SUP-T11というドライバーを使う構成と、FPS(フラットパネルスピーカー)をそれぞれミッド・ロー(中低域)の帯域に使用する構成の二通りとなっている。

そして、この二つのスピーカー構成をより熟成させるべく、ここにおいても双方の比較試聴をしながら切磋琢磨を行わせている日々である。ある意味ではそれぞれが煮詰まってきたのか出音の差が当初よりは幾分縮まったようにも感じている。特に厳密にユニットの差異を把握するためにも、その他の帯域のユニットの設定(低域、中高域、高域)を初めのうちは同一としてきたのだが、ここへきて、それぞれの持ち味に合わせて若干異なる設定へとシフトさせている。つまるところそれぞれのユニットの「一番美味しいところ」は微妙に異なる帯域にあるのかもしれないと思うようになってきたのだ。

FPSの構成においても、このユニットが我が家にきてからもう大分経つのだがやっと「歌い始めた」という感がある。このユニットは極めてフラットで自然な表現をしてくれるのだが、一方でそれが端正過ぎて無個性にも感じられてしまっていた。逆にSONY SUP-T11というユニットはホーンドライバーという生来の個性を薄めつつあってより普遍的な音に近づいてきた、とも思える。ではこの二つのユニットが均一化に向かい無個性となっていくのか?ということについては少し違うような気もしている。おそらくは(当然でもあるが)決して同じ音にはならない。だが、それぞれの持ち味を活かしつつより普遍性の高い音、どんな音源でもしっかりと鳴らしてくれる、そういう方向へ少しづつ近づいているのではないだろうか。

多分一方だけを鳴らし続けていたらこのような方向へは進化しなかったものと思う。それを没個性化と呼ぶか、普遍化(あるいは進化)と呼ぶのか難しいところではある。だが、ここにも切磋琢磨し続けることの道理があるような気がしてならない。オーディオに対する熱意も波があり鎮静化と高まりの繰り返しなのかもしれないが、寝ぼけた意識に活を入れるのはやはり「素晴らしい音」に触れることなのだと改めて思う。


4way構成の設定備忘録(2019年10月6日更新)設定値

項目 帯域 備考
Low Mid Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
Sony
SUP-T11
Accuton
C51-286
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+4) 110 (+17) 93 (+0) 93 (+0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.2 -9.7* +1.7 +4.0
*DF-65 Att ON
マスターボリューム
アッテネーション
dB -3.0 -3.0 -6.0 -3.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB -6.0 -12.0 -6.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.2 85.3 82.7 82.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

500
500

1250
1250

2800
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-24 24-18 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -7.0 -37.0 +40.0 +40.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm MPD
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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