オーディオ日記 第45章 エンドレス・オーディオ(その7)2019年4月25日


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時に拾う神あり:

Accuton C51というセラミックドームユニットの出音にインスパイアされて、SONY SUP-T11でもう一匹の泥鰌を狙ったことは案外と正解だったような気がしている。C51セラミックドームはその極めて低歪みの特性も貢献しているのだろうと思うがとにかく高域の爽やかさ、清涼感が素晴らしい音を聴かせてくれるのだが、このような音をSUP-T11の構成で出せれば文句のつけようが無い、、と密かに狙ってみたもの。

SUP-T11は投入されている物量が半端無いということもあって落ち着きがあり自然かつ高品位な音を聴かせてくれるのだが、やはりホーンドライバーとしての素性が時に顔を出すことがあり、それが若干ながら音楽の圧迫感として感じられることがある。110dBという能率の為せる技かもしれないのだが、通常の再生音量は元々それほど大きくないので十分にその能率を活かせていないこともあるのか、この辺りが従来から多少の不満点であった。

周波数レスポンスとしてはかなり広帯域に対応できるユニットだとは思うのだが、10㎝径のダイアフラムなのである程度以上の周波数はすっぱりとベリリゥムツィータにお任せして高域方向は欲張らない、という考え方で設定してみたら解像度や品位を保ったまま納得できる方向にいけるんじゃ?とあれこれ策を考えてみた。

SONY SUP-T11 vs Accuton C51-6-286:どこまで迫れるのか
Sony SUP-T11 Accuton C51-6-286

なお、この設定を確認していく為の音源については、基本をDSD音源として所謂駄録音の音源は一切排除した。本来はどんな録音状態の音源でもそれなりに鳴らすということを心掛けているのだが、時に録音に納得できないのか、設定に課題があるのかの切り分けに混乱し葛藤した心理状態になることが多いので今回はこのアプローチをやめてみた。そこそこ以上の音源を徹底的に「気持ち良く再生」出来ているのかどうか、という観点で聴いていく。試聴においては楽器数の少ない音源ではなく、基本オーケストラ等音数の多いものを優先して再生させる。器楽曲のように限れらた数の楽器による音楽の場合、どちらかと云えば再現される音色や鮮度感に注目してしまいがち。そこで、オーケストラ中心に全体の再生バランスに留意しつつ、特に金管楽器の咆哮や弦の強奏時に気持ち良さが損なわれないことを最重要課題として聴いていく。

SUP-T11というホーンドライバーの過渡特性の良さを活かしつつ、素直に伸びていく高域感を享受するためにはどうも従来のクロスオーバー周波数(4KHz辺り)よりも低いところを分界点として設定を纏めた方が良さそうに思え、2.5KHzをスタート地点としてみたが、それだけではうまくはいかない。リスニングポイントでの単体ユニットの測定を参考にしながらどう纏め上げるべきかしばらく呻吟する。周波数レスポンスとしては1KHz~1.5KHz辺りをしっかりとさせ、2KHz以上をやや抑え気味にすると良い感じになる。このため、中高域のレベル設定自体は多少高めにしてあげると塩梅が良い。ここにツィータの音を乗せていくのだが、質感と周波数レスポンスをぴったりと合わせるのは案外と難しい。

弦の強奏時にも爽やかに、そして歪み感なく突き抜けたように鳴らねばならない。高域は充分な音圧を保たせることが必須で決して丸くなってはならない。(これを駄録音の音源でやったら判断がつかなくなる)

だが、SUP-T11ではセラミックドームのようなある種の清涼感を醸し出す事はやはり難しい。一方で高い解像度、反応の良さ、過渡特性の良さなどからより自然な感じの音が出せることが評価ポイントかもしれない。もちろんこの辺りはベリリゥムツィータとの連携があってのこと、だと思うが。

Scanspeak D2908/714000:忘れちゃいけない存在感


オーケストラ以外では纏まり状況に応じて女性ボーカルを確認のため再生する。もちろんお気に入りの飛び切りのものばかり。女性ボーカルの再生がスポイルされてしまうのではSUP-T11に拘ることの意味が無くなる。時に隠し玉として悦ちゃんのボーカルを登場させる。このチャーミングなハイトーンボイスが痺れるような納得の再生でなければ他は良くても不合格なのだ!

従来やってきた自分流の常識には囚われず心地良さを追求していくと意外にも音源のカバー率が上がっていく感じ。おそらくではあるが、MUTEC MC-3+USBのリクロック(+10MHzマスタークロック)効果無しにはこの設定の追求は困難であったかも、と改めて思う。上流側の正確で滑らかな高域表現の担保無しにはこの心地良さの実現と判断は無理だったかもしれない。

4wayとして同じユニット構成であっても、この意図した設定の音は従来と違う表情を見せ始めてくれる。測定を確認しつつ周波数レスポンスも都度チェックしているのだが、測定では決して現れない表情の変化がある。これは不思議な気もするのだが、、、、単に思い過ごしということはないだろうと思う。

オーディオは難しい。結局は出てくる音、再生される音楽の表情が全てなのではあるが、捨てる神ばかりではなく、時に拾ってくれる神様もいるんだな、と。


4way構成の設定備忘録(2019年4月25日更新)SONY SUP-T11暫定設定値

項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +2.4 +0.7 -9.5* +4.8
*DF-65 Att ON
マスターボリューム
アッテネーション
dB -3.0 -0.0 -0.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0.0 0.0 -6.0 -6.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 96.4 90.7 94.5 91.8
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

200
200

1000
1000

2500
3550

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 48-48 48-12 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -37.0 -0.0 -58.5 +0.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Rev JPLAY FEMTO
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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