オーディオ日記 第45章 エンドレス・オーディオ(その6)2019年4月20日


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切磋琢磨:セラミックドームへの挑戦(その10)

C51セラミックドームの音も大分纏まり落ち着いてきたように思う。この構成で聴ける音はどこかしら突き抜けている。それはひとつには高域感がもたらすものだと思うのだが、周波数レスポンスとして測定で捉えられるものでもないことも分かってきた。低歪みのユニットによって限りなく透明で爽やかな音場が展開され、高解像度で緻密である。ある意味でのハイエンド感の提示のようなものも感知できる。従って優秀録音の音源再生には素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれる。デジタル画像とフィルム画像の差というものの例えが適切がどうか判らないが、このセラミックドームユニットの音はまさにデジタル画像を思わせる音数の多さでもある。一方でSONY SUP-T11の音は多少の曖昧さは残しながらも陰影に情緒があり奥底にある真の姿を浮き出させるような表現と云えば適当だろうか。そこにフィルム画像的な味わいを感じることができる。

それ故再生音楽として普通のレベルの音楽を聴く時に、C51は充実感や芳醇さというものの表現には少し欠ける様な感じがしている。やはり僅かに「固い表現」がある。振動板は軽く硬いことが第一条件(一方で適度な内部損失も必要)であり、この辺りはセラミックという振動板がもたらすものとは限らないのだが、、、SUP-T11に「ある種の甘さ」を感じるのは、振動板がアルミであることに起因するのだろうか。特に自分の好きな女性ボーカルの「声そのものの再現」はどうしてもこれでなくてはと思わせられるのだ。ミッドハイの帯域を受け持つユニットによってこのような差を感じるというのは、やはり1KHz~3KHz辺りの音色の微妙な違いによって、音楽表現も変わってくるのだろうと思う。

一長一短あるんだよな~などとそのような世迷言をこのところ両ユニットを徹底的に比較試聴しながらつらつらと考えているのだが、対比ばかりに注目していてもそれでは何の進歩ももたらされない。それぞれのユニットの個性を活かしながら、「いいとこ取り」出来れば良いのだが、、、

そのアイデアをベースにSUP-T11側の設定を違う角度から見直してみようと考えた。当然ながらSUP-T11にもホーンドライバーとしての欠点がある。それは高域に向かって指向性がより狭まることでもあり、10cmダイヤフラムの口径に起因する高域表現の限界である。SUP-T11は800あるいは900Hzから9000Hz辺りまで近接距離(1m程度)での測定ではフラットな特性を持っており、本来2wayでも使えることにはなっている。だが、それはドライバーとしての高域限界をフェーズプラグ等で無理やりに伸ばしているものでもある。また、ドライバー+ホーンの個性として低い方の帯域では急速にレスポンスが低下していく。このようなことをあれこれ勘案して本当に美味しいところだけを使ってみることから始めようと。ミッドローのユニットはFPSなので、ミッドローとのクロスオーバーは(極端に云えば)3KHzであっても帯域レスポンス的には問題にはならない。だが、FPSは大きな面積を持つ平面振動板なので、帯域を上げるほどこちらも指向性がナローになってくる。その辺りを勘案するとやはり限界は1000Hz辺りか、、、、高い方はと考えると分割振動の範囲外として望ましいのは4KHz以下であろうと思う。ベリリゥムツィータは2KHzを越えた辺りからでも使えるユニットなので、こちらとのクロスオーバーは2KHz~4KHzの範囲内の組み合わせか。高域感をより取り込もうとすれば、ベリリゥウムツィータとのクロスオーバー周波数はなるべく低い設定の方が良いのかもしれない。

結局最終的には周波数レスポンス云々よりも、それぞれのユニットの持ついろいろな個性をどこまで、どの程度に発揮させるのかその組み合わせ、という難しい命題になる。逆に云えば、元々SUP-T11の持っている個性としての音の充実感、色艶、音楽の芳醇さ、というものを維持しながら、そこに(突き抜けたとまでは欲張らないが)充分な高域感と音の広がり、をもたらすことができれば良い、というある程度「明確な」目標を持って調整することが具体的な命題と云える訳だ。これは闇雲に「良い音(であるはずのもの)」を目指していた従来のアプローチに比せば随分とやり易い。二つのユニットによるそれぞれの「音の基準値」が既に存在しているのだ。判らなくなったら一旦そこへ戻れば良い。デジチャンは設定のメモリー機能があるのでこれは迷わずにできる。(このようなアプローチはマルチアンプシステムの醍醐味だと改めて実感もする)

また、幸いにも上流はJPLAY FEMTOとMUTEC MC3+USBさらに10MHzマスタークロックという頼もしい役者がPCオーディオ廻りで揃ったので、上流の音は「信じて」迷わずに調整、設定ができるようになってきている事は何とも心強い。ここを疑問に思ったりブレてしまうと結局堂々巡りになってしまうことも経験上多いのだ。

なお、周波数特性に関して、ユニットの素性を知るための近接距離での測定とリスニングポイントにおける実効のレスポンスの差異についても留意しておかねばならない。部屋の影響は当然排除できない訳だが、おそらくそれだけではないと思われるレスポンス状態の違いを往々にして経験している。一般的には距離が遠くなることによる高域レスポンスの低下は当然なのだが、ホーンドライバーの場合は必ずしもその定理、経験則が当てはまらないことがあり、特に2KHz~3KHz辺りの レスポンスはコーン型やドーム型のユニットに比して体感としてはエネルギーが維持されていて(特にセンター)、想定よりも低下しにくいようにも感じられる。逆に1.5KHzより下の帯域は思ったほどは出てこない。セラミックドームにチャレンジした動機のひとつがSUP-T11の再生で充分納得できていないこの辺りにも遠因があるのだ。したがって、このような経験則をもある程度勘案した上で纏め上げていくことが必要と考えている。

現時点ではまだトライアンドエラーの状態で少し片鱗は見えて来たが「これで行ける」という状態からすればまだまだ。そもそもこのアプローチが正解なのかどうかも定かではない。だが、C51セラミックドームのユニットとしての良さは重々承知した上で、このユニットが「絶対的優位」として自分のシステムの主役にはならないかもしれないと薄々感じ始めていることもあって、このアプローチはもう少し続けたいと思っている。相当多くの音楽を聴いた上で総合的な評価をしなければならないので結論までは多少の時間が掛かるかもしれないが。

思えば、新しいユニットへのチャレンジがあって、現状の音に対する気付きもあり、またそのフォローアップに関して、比較的明確な目標意識で臨むことが出来るようになった訳だ。だから一概に回り道や道草とも云えないだろう。やはりSONY SUP-T11を基本の構成として自分の理想の音を作って行きたい気持ちが残っているんだろうな、と今は己の心情をなるべく客観的に見るようにしている。

(閑話休題)さてもオーディオの迷路

もうここまで来たらひと段落でもいいんじゃないか、と思うことしばし。機器の組み合わせであったり、設定であったり、ということは際限なく続く茨(?)の道でもある。だが、音源の本来持っているパフォーマンスを引き出せているかどうかの尺度は自分の感性(と自己満足?)の中にしか存在しない。もちろん、音源の再生パフォーマンスは物理的な環境(=部屋)にも依存するので、機器や設定だけでは語れないのだが、、、

だが、至高の機器や部屋を手に入れたとしても「全ての音源」に満足できる事は決してない、ということは容易に予測される。駄音源とまでは云わなくてもオーディオ的には納得し難い音源は決して少なくない。飛び切りの録音と思うものはそれに反してがっかりするほど少ない。一握りの優秀録音を例え脳天痺れながら聴くことが出来るとしても、それが望んでいるオーディオの姿のだろうか。つまるところ、出口の無い迷路で出口を求めて彷徨っているようなものに思えるし、無いものねだりをしている子どもにも見えてくる。

だが、オーディオはある段階まで行かなければ音楽の本来の姿を見せてはくれない、聴かせてはくれないとも思う。どんな装置であれ、それが再生装置である以上音は鳴る、音楽は流れ出る。音源としての音楽それ自体には制約と限界があるとしても、どのような装置で再生されるのか、それは最大公約数としてしか作り手には分からない部分もあるだろう。

エンスージアストたるオーディオの達人らによって再生されるある種の音楽は作り手の意図したものを越えているかもしれないし、実際そのような音も存在する。異様なほどのリアリティや透明感、、、だが、それは本来の姿、あるべき姿だろうか? 実体を越えるもの? 創造の産物? そして超優秀録音の音源からはコンピュータ加工でしか成しえない音も聴こえてくる。

現実の演奏において、演奏の内容はともかく、その音や音響効果に多少の不満を持ってしまうことは案外と多い。生演奏には出来不出来も結構ある。結果として生演奏がオーディオ再生に優る、ということが決して全てではない、とも思う。時にオーディオ再生の音は生演奏では到達できない領域を感じさせてくれることもある。

では、どのようなところまで到達すれば良しとできるのだろうか、 不満足の中に微かな満足を見出せるのだろうか。あるいは自分で納得できるのだろうか? おそらくは自分の中に「美化された」再生イメージがあって、何とかそれに到達したいともがいているだけではないだろうか。美化されてしまった理想というものは決して現実にはなり得ない。これはオーディオの迷路であり、自分自身の遍路の旅なんじゃないだろうか。そして帰り道、戻り道が何処にあるのかさえもう分からなくなってしまっている。そのことは自分でも薄々感づいている。もしかしたら、これは惰性かもしれないと。単なる惰性で無理やり前に進もうとしているだけで、実際は大して、あるいはほとんど進歩してないのかもしれない。

いくら消費をしても欲望が果てることのないのと同様に、永遠の自己満足を求めて彷徨うことの馬鹿さ加減には自分でも呆れてしまうところがある、、、だが、今ここで聴けるモーツアルトのこの清楚で豊饒な響きはかって聴いていたものと同じではないとも確信できる。大いなる無駄遣いと手間暇と試行する時間などと天秤に掛けることはここでは意味がない。使った労力が如何程であろうとこの調べに身を任せて微睡むことが出来るのならば、それも良しとせざるを得ない。


4way構成の設定備忘録(2019年4月20日更新)SONY SUP-T11暫定設定値

項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +2.4 +0.7 -9.0* +4.0
*DF-65 Att ON
マスターボリューム
アッテネーション
dB -3.0 -0.0 -0.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0.0 0.0 -6.0 -6.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 96.4 90.7 95.0 91.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

200
200

1000
1000

2500
3550

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 48-48 48-12 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -37.0 -0.0 -58.5 +0.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Rev JPLAY FEMTO
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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