オーディオ日記 第45章 エンドレス・オーディオ(その5)2019年4月11日


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補正効果の検証:セラミックドームへの挑戦(その9)

Accuton C51セラミックドーム用の補正回路を ケンさん に製作いただいたので早速試してみる。まずは補正状況の確認ということで、クロスオーバー周波数を800Hzと4000Hz(いずれも-48dB/octのスロープ特性)にて測定した。音圧を示す横の目盛りは3dBスケールで、スムージングなし。1KHzに僅かな山が見られる(簡易的なバッフルを使用している影響かもしれない)がそれ以外は「相当にフラットである」と云えると思う。この測定結果からもかなり期待が高まる。もちろん補正回路の挿入による鮮度感の低下など音質へのインパクトもゼロではない。従って期待と共に不安もある、、、

C51のみの周波数レスポンス:(ユニットから100㎝の距離で計測)
Accuton C51 Frequency Response

補正回路自体は減衰量をいくつか選択できるようになっており、上記の測定結果は裸状態で測定された周波数レスポンスの盛り上がりを-3dB程落としたものを採用。なお、4way構成全体のそれぞれのクロスオーバー周波数は200Hz、800Hz、4000Hzとした。(その他の詳細設定は下記の備忘録参照)

さて、これで音はどうなるだろうか? 一聴して非常に素直な出音である。C51が持っている高域感が失われることもなく、鮮度感も何ら問題ない。補正回路無しの時は周波数レスポンスをフラット化するため多少変則的なデジチャン設定にせざるを得ず、C51の高域方向の設定は2500Hz、-12dB/octというもの。また、高域のベリリゥムツィータは4000Hz、-24dB/octの設定で二つのユニットの音をある程度溶け合わせることによってレスポンスをフラットな状態に近づけていた。補正回路を使用する今回の設定では二つのユニット共に4000Hz、-48dB/octという設定が問題無く可能となったこともあり、高域方向の音がよりスムーズでクリーンな感じがする。しっかりとした高域が出ているのに雑味がさらに少なく感じるのだ。

補正回路を挿入した状態での出音は普遍性が高まっていると思う。C51というユニットが素で持っている独特のチャーミングさというものは残念ながら影を潜めてしまうのだが、、、密度感、充実感そして高域感など重要かつ欲しいと思う音の要素のバランスが良く、音源に対する選り好みも少ないと感じる。謂わば普通の音になった、ということかもしれない。

この観点から思うのは、マルチアンプシステムにおいて、個々のユニット単位でまずはフラット化することの重要性である。かっていろいろなイコライザーを試したが、一般的なイコライザーではこのような対応は出来ず出音全体に対してのレスポンス補正となってしまう。複数のユニットで全帯域の音を構築して行くに際し、ユニットの単位で受け持ち帯域をフラットな周波数レスポンスとなるよう担保することが非常に重要な要素だと感じる。一般的なイコライザによる補正の方法は複数のユニットの音を合成した状態で全体のレスポンス山谷を修正しようとするもの。アプローチ方法の違いだとは思うが、dBX4800のようなプロ用デジタルチャネルデバイダーにおいては、個々のユニット、チャネル単位でイコライズが可能であり、それぞれをフラット化した上で全帯域として纏め上げることができる。やはりこの機能はデジチャンには必須だな~と思う。残念ながら当方の使用しているデジチャン(DF-65)にはその機能はない、、、

各チャネル毎にフラット化した場合、その帯域を受け持つユニットの個性の喪失はあるのだろうか? これは多少なりともやはりあるとは思う。ひとつには周波数レスポンス自体がユニットの個性でもあるから。ただし、これはベースの話であって、本来は上述したように、それぞれのユニットのレスポンスをコントロールすることが前提となれば、周波数レスポンスそれ自体は必ずしも個性にはなり得ない。その上で、ユニットの持つ音の再現力、反応速度や音の抜け、絶対的な品位というものが「個性」となるはず。しかし、複数のユニットから構成されているスピーカーにおいても、トータルに音楽として聴く事が前提なので、ひとつのユニットの個性を周波数レスポンス以外の観点から真っ当に吟味する事は結構難しくもある。だが、逆に云えばそれがマルチアンプシステムそのものの醍醐味なのかもしれない。

さて、この状態でいろいろな音源をあれこれと聴いている。当方の音楽再生の狙いは「モーツアルトを居眠りしながら聴く」というものであるが、その目的に対して到達点かも? と思わせられるような音楽がここに展開されている。至極普通の音の再現ではあるのだが、今までには実感することの能わなかったものでもある。だが、音それ自体を言葉を並べて表現することは極めて難しく感じている。当方の月並みな表現力と言葉で言い表せられるような気がしないのだ。決して究極の音でもないし、理想が実現したという音でもない。音が右の左の、というよりもここに欲しいと思っていた音楽がさりげなく奏でられている、とても単純なのだがそのように感じている。

再生の7~8割を占めるクラシック系全般、あるいはそれに類する音源はこのC51-6-286というセラミックドームユニットを使うことでほぼ良しとできると思う。それではこの構成や設定におけるこのユニットが完璧なのかと自問すれば必ずしもそうではない。なお女性ボーカルにおけるSUP-T11の表現力には抗えないものがあると感じるのだ。やはりここを見極めねばならない、、、


4way構成の設定備忘録(2019年4月11日更新)Accuton C51-6-286対応設定値

項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Accuton
C51-6-286
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 93 (+3) 93 (+3)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +2.4 +0.7 +4.3* +1.0
*補正回路での低下を考慮
マスターボリューム
アッテネーション
dB -3.0 -0.0 -3.0 -3.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0.0 0.0 -3.0 -3.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 96.4 90.7 91.3 88.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

200
200

800
800

4000
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 48-48 48-48 48-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -37.0 -0.0 +2.5 +0.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm JPLAY FEMTO
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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