音場感への期待:セラミックドームへの挑戦(その2)
さて、MUTEC MC-3+USB周りの実験やら設定が落ち着いてきたところで、かねてより取り組みたかったセラミックドームユニット
Accuton C51-6-286 CELL
の構成にいよいよチャレンジである。中高域に使用しているホーンドライバーSONY SUP-T11とのガチンコ対決となるのだが、こちらはずっと昔から惚れ込んでいるユニットであり、このユニットと「添い遂げる」覚悟でオーディオ環境を整えてきたという経緯がある。またこのユニットに投入されている物量は「半端ない」ものなので、内心の気持ちとしてはそう簡単には凌駕されてしまうことはないんじゃないか、という少々複雑な思いもあるのは確か。だが、現代の素晴らしいスピーカーシステムにも多く使用されているAccutonのユニットであり、セラミックユニット(あるいはダイヤモンド)を使用して独自のカスタム構成としてスピーカーシステムを纏められているオーディオ仲間も多い。そしてその音にはいつも感銘を受けてきたのだ。
ホーンシステムというものは当方がオーディオに染まり始めた頃にはALTEC、JBL、エレクトロボイス(後発としてTADそして更にその後にSONY)などを始めとした垂涎のスピーカーが数多くあり、手の届かない超高価なユニットとしてYL、ゴトー、エールがあった。その時代の流れとして自分自身がこれらに多大な影響を受けてきたことは間違いない。その中でもホーンドライバーとしてはほぼ末期とも云えるタイミングにて開発されたSONY SUP-T11というドライバーは高能率であるにもかかわらず端正でどちらかと云えばおとなしい感じがするユニットでもある。決して咆哮するようなことは無く、音味が僅かなのだが薄くてJAZZなどのかぶりつきの迫力や迫真のリアリティを求める向きには少し物足りないユニットかもしれない。その分クラシック系の音楽には向いているところもあって20年近く愛用してきたもの。800Hz~9KHzでは驚異的なほどのフラットなレスポンスを示し解像度や質感も申し分なく、これらに支えらた音楽表現は第一級のものだと思っている。
C51-6-286を使うに際してはまずは基本的な設定からスタートとなるので、ユニットをウォームアップさせてから周波数測定を実施。公称は800Hz~6KHzであるが、メーカーの提示している通りの周波数レスポンスで1.3~1.4KHzあたりに少し谷があり、3.5Hzにちょっとした山、2KHzを越えたあたりで相対的なレスポンスがMAXとなる。1KHz以下のレスポンスは多少ダラ下がりになる。予定としては800Hz~4KHzを受け持たせる想定であるが、900あるいは1KHz位からの方がベターかもしれないと思う。まずはエージングも進めなければならないので、予定より少し上げての900Hz~4KHzで行ってみることとした。OMNI MIC V2を使って測定をしながら他のユニットとのレスポンスバランスとタイムアライメントを合わせる。すんなりとほどほどの状態の設定にできるのは本当に測定ツールのお陰である。(新しいユニットなので磁気回路が元気なのかレスポンスが高めである)
ただ設置環境という観点からは全くの「裸単騎」状態でミッドローユニットであるFPSのエンクロージャの上にちょこんと置いてあるだけと何とも心許ない。ユニットの構造として背面が空いていないのでポン置きでもいいかな?とは思うがやはりそこは考えてあげないと、、、また本来であれば高域用のベリリウムツィータとはインラインとなるように設置すべきなのであるが、この裸状態なので高域ユニットを上に重ねるような設置スタイルには現状できない。まぁこの辺りは仮設でもいいから早急に何か対応しないといけないな。
仮設状態なのがちょっと、、、:
さて音の方であるが、馴染ませることが最優先なので小音量で器楽曲や小編成のクラシック音楽から流し始める。インプレッションとしては、あ~音が明るく軽い、である。爽やかであるのだが密度感は多少低い。もちろんエージングがこれからの状態なので出だしから納得という訳にはいかないのだろうが、それでも音味の薄いSONY SUP-T11に比しても儚げでちょっと頼りないような実在感である。だがその分音はふわっと広がりある種の心地良さと際立つような透明感というものを合わせ持っている。高域方向にストレスなく音がスッと伸びていくような感じもする。この辺りは多分にユニットの指向性の違いによって受ける印象が違ってくるんだろうな、とも思う。また音楽としては中高域のユニットの変更だけでこのような感触の違いが表現されていることも感慨深い。このような表現の方向性が今回のこのユニットの導入意図でもあるのでまずまず狙い通りの音が出てくれている、ということだと思う。
質感や音の抜けという観点では当然ながらもっとエージングが進んでこないときっちりとした評価はできないのだが、始めからかなりポテンシャルの高さを感じさせてくれる。だが、SONY SUP-T11とAccuton C51-6-286ではある意味当然だとは思うのだが、明らかに響きの方向性、性格が違う。これはおそらくは両ユニットが持って生まれたもので、この先もこの肌触りの違いが薄まることは無いようにも思える。それは振動板の材質や口径の違い、磁気回路や基本構造の違いから来るものかもしれないし、そもそもの設計ポリシーの違いなのかもしれない。強いて言えば、SONY SUP-T11は当方が現状聴いているようなレベルではなく、もっと高い音圧でドライブした時にこそ本領が発揮されるものだとも思う。だが、スピーカーユニットである以上出てくる音それ自体が「全て」である。出音あるいは音楽の表現という観点で自らの存在価値を証明しなければならない訳だ。
ずっと聴き馴染んできたこともあるので今この時点ではSONY SUP-T11の良さを改めて実感している状態でもあるが、両者の対決?はまだ始まったばかり。まだまだ優劣をつける段階にはない。これが一週間、一ヶ月、一年でどう変化していくか、そこそこの調整状態となってからの実力比較でなければなるまいと思う。とにかく今はひたすらに音楽を流し馴染ませていくという段階にある。また試聴を進めるに際しては、なるべく簡単に両ユニットを切り替えて聴けるような配線なり設定なりも必要なのでその辺りも徐々に煮詰めて行きたいと考えている。いずれにしても両者相譲らずとも云えるようなユニットでもあるのでこれをどう並行的に使いこなしていくか、使いこなしていけるのか、こちらの力量も問われることは間違いないであろう。
4way構成の設定備忘録(2019年3月2日更新)Accuton C51-6-286対応設定値
項目 |
帯域 |
備考 |
Low |
Mid-Low |
Mid-High |
High |
使用スピーカー ユニット |
- |
Sony SUP-L11 |
FPS 2030M3P1R |
Accuton C51-6-286 |
Scan Speak D2908 |
- |
スピーカーの 能率(相対差) |
dB |
97 (+7) |
90 (0) |
93 (+3) |
93 (+3) |
|
DF-65の 出力設定 |
dB |
+2.4 |
+1.2 |
+2.5 |
+4.2 |
|
マスターボリューム アッテネーション |
dB |
-4.0 |
-0.0 |
-3.0 |
-3.0 |
|
パワーアンプでの GAIN調整 |
dB |
0.0 |
0.0 |
-6.0 |
-6.0 |
|
スピーカーの 想定出力レベル |
dB |
95.2 |
91.2 |
86.5 |
88.2 |
|
クロスオーバー 周波数 |
Hz |
pass ~ 250 |
250 ~ 900 |
900 ~ 4000 |
4000 ~ pass |
Low Pass ~ High Pass |
スロープ特性 設定 |
dB/oct |
flat-24 |
24-48 |
48-48 |
48-flat |
Low Pass High Pass |
DF-55 DELAY 設定 |
cm |
-10.0 |
-0.0 |
+2.5 |
+5.5 |
相対位置と 測定ベース |
極性 |
- |
Norm |
Norm |
Norm |
Norm |
JPLAY FEMTO 環境下 |
DF-55 DELAY COMP (Delay自動補正) |
- |
ON |
自動補正する |
DF-55デジタル出力 (Full Level保護) |
- |
OFF |
保護しない |
|