オーディオ日記 第44章 理想と現実の距離(その1)2019年1月4日


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課題を洗いなおす:

年が改まったが、この年齢になると「人生のゴールに近づいた」という想いの他にはそれほどの感慨が無くなってくるようでもある。オーディオにおいてもまだまだやるべきことが多いし、今に至っても目標とする理想の音になったという自己満足は無い。それでも、まぁこんなものか、ほどほどで良いか、という堕落したような感情で日常に流されても行く。年初の時間を利用して、久々に中島みゆきのコンサートビデオ(Blu-ray)を堪能したのだが、やはりこのお方は魔女か天女に違いない。映像も曲も歌も、肝心の録音もオーディオ的に素晴らしく、没頭してしまう。コンサートビデオとしては2007年、2012年、2015年の三本があるのだが、いずれも充実した内容で多彩な曲と声の魅力に引きずり込まれる。夜会もまた1月末からスタートするのだが、チケットは抽選で、例によって落選。相当に人気が高く、極めて入手困難なのは残念なところ。中島みゆきは昭和27年生まれで年齢としては当方と同じ。だが、活動や歌唱のパワフルさには衰えを微塵も感じさせず相変わらず魅力的である。当方もまだまだ枯れては遺憾な~と思う次第。

さて、このところちょっと気にしているのは低域の質感と量感の妥協点をどこに求めれれば良いかという点。だが、低域再生というのは果てしもなく難しいオーディオ課題でもある。現在の我が家のスピーカーエンクロージャはバスレフ形式でありここにおいて極端に低域が不足するという感はない。だが、質感という観点から云えば自分としてはなお改善の要を認むという状態。引き締まったクリーンな低域が欲しい、とも思うのだ。その上で必要にして充分な量感が確保されていなければ、オーケストラの再生は覚束ない。あれこれとトライしてみてもなかなかその質感と量感の合格点には至らないという想いが今に至るまでずっとある。

少し前になるが、ふと思いついて、バスレフダクトに測定用のマイクロフォンを突っ込んで低域の測定をしたことがある。そこで判ったことはバスレフポートから設計上の必要な低域以外にもエンクロージャ内部からの反射音が出てきていること。バスレフ自体は40Hzを中心にしっかりと低域が出てくるのであるが、一方で望ましくない帯域のレスポンスも存在する。バスレフポートを塞いで低域の測定を70㎝の距離で行うと50Hz~300Hzはまっ平であって特性はかなり良好。ただし、50Hz以下はだら下がりになってしまう。20Hzとは言わないまでも、低域の支えとしては30~40Hz辺りまでは平坦に出て欲しいと思うのだが、、、バスレフポートを本来のスタイルにすれば、ここでのレスポンスはそれほど落ち込まないのだが、反射音が出てきて、200Hzやら250Hzやらの周波数帯域を汚している原因にもなっている。元々紙コーンのウーファーなので、このコーン紙を通過してエンクロージャ内部の反射音は輻射されているはずなのだが、こちらの部分は測定してもそれほどの悪影響は計測できない。あれこれと考えてみて、やはりバスレフポートからの反射音はクリーンな中低域の再生という観点からは望ましくないし、比較試聴すれば聴感上もその差は検知できるレベルにある。当然ながら、バスレフポートを塞いだ方がすっきりとナチュラルな音になる。一方で30Hz~40Hzの量感は少し寂しくなってしまうので、この量感と質感のトレードオフをどう処するか難しい選択となった。バスレフポートの径、長さなどの工夫によって反射音について若干の改善できる部分もあると思い、少しづつ調整はしてみている。現状はどちらかと云えば「質感優先」となっており、ほぼバスレフポートを塞いでしまうスタイルでその分マルチアンプにおける低域のレベル設定を上げてバランスを取っている。完璧にはまだ遠いという意識もあるものの、これでオーケストラの再生が質的にはそこそことなってきたという感もあろうか。通常では量感にも顕著な不満はない。だが、これにどのように「マッシブな低域」という体感をプラスしていくか、本質的なそしてかなり難しい課題が残っているのだ。アイデア的にはイコライザやサブウーファという選択肢はすぐに思い付く。いろいろな機種のイコライザをかって試した経験からそれは決してイージーに改善できるものではないことは判っている。アナログ領域で行うか、デジタル領域で行うか、あるいはサブウーファーという物理的な補強なのか。もちろんそれ以外の選択肢もあることをご教授いただき、はてさてどのようにアプローチするか、悶々としつつ頭を悩ませている。

(閑話休題)

課題がありつつも、JPLAY FEMTO Dual PC環境で聴くオーケストラの響きにそこそこ陶然としながら、さて次なる一手は、とぼんやりながらあれこれ考えてしまう。デジチャンからアンプという中流部分は取り敢えずリニューアルが完了しているのでここは置いておくとしても、下流となるスピーカー周りではやらねばならぬことがある。上記に述べた低域の他、ホーンドライバーとセラミックミッドレンジユニットの対決もある。しかしながら、こちらはお目当てのユニットのメーカー生産を待つ必要があり今暫く到着を待たねばならない状況。早い段階でテストを開始したかったのであるがちょっと残念。

一方の上流であるが、PCオーディオとしては現状のJPLAY FEMTO Dual PCでまずまず状態ではありながら脱PCオーディオという密かな企みも持ち続けている。だが、すぐにでも飛びつきたいという魅力満載のネットワークオーディオ機器にはまだ出会えていない。比較試聴してみたいな、という機器は若干はあるのだが、決定打となるような要素が見い出せないせいかもしれない。

(2019年1月9日追記)
改めて情報を検索してみたところ、昨年の後半あたりに Lumin U1 Mini が登場していた。ネットワークトランスポート(DACレス)のカテゴリであるため当方にとってはスィートスポットとなる製品である。 U1 ではちょっと高すぎるし D2 はDACが不要だし、というもどかしさを払拭してくれるようなLuminの新モデルだ。筐体や電源(内蔵タイプ)はD2と同様で、トランスポートとしての機能はU1と同等。現状日本の代理店ではまだ取り扱いを開始していないようであるが、これであればすぐにでも欲しいと思う。(追記終わり)

従い我が家のPCオーディオについてさらなる打ち手を、とボケ始めたような頭をめぐらせて考えてみると、そこには厳然として「USBインターフェース」の課題が残っていることに気が付かされる。これを打破する方法はI2S接続環境、あるいはDante Audio Network(最近出始めたSFORZATO Direttaもこの類)のようなLANインターフェース環境か。I2S接続に関しては自作派であればお手の物であろうと思われるのだが、浅学にして当方にはそのような技量もなく市販製品で簡単に使えるものがなければ指を咥えているしかない。LANインターフェースに関しては既にDante Audio Networkを自宅で試しているのだが、PCシステム環境全体を大きく変更しなければならないことなどと絡んで踏ん切りがつけられていない。などなど、できないこと、やらないことの言い訳も多い気がするのだが、、、

もちろんUSBの課題を乗り越えるべくやれることはやってきたつもりなのだが、改めて「リクロック」という観点に注目していろいろと調べている。現在のUSB周りの対応はIntona USB IsolatorによるガルバニックアイソレーションとUSB信号のリパケッタイズ、そしてUSBケーブルの電源線、信号線に対するノイズ対策がメインである。新たに注目している部分は、USB信号からPCM信号に変換する際、ここに高精度のクロックを介在させて信号を打ち直す(リクロック)するというものなのだが、その効果はいかほどのものか。

この観点から調べてみるといくつかの製品がある。JAVS X6-DDC-FEMTO、Singxer SU-6、GUSTARD U16、MUTEC MC3+USBなどである。 それぞれが高精度のクロックの搭載が売りである。音の方はもちろん聴いてみなければ良し悪しは判断できないし、既存PC環境との親和性も気になるところ。この手のデジタルオーディオインターフェースに関しては過去にはドライバーの問題や使い勝手などの面でいろいろと悩まされた部分でもあるので、試聴機で試した上で結論を出したいところ。

この中でも MUTEC MC3+USB という機種はやや武骨なプロ用機器然としていて、聴いてみたくなる要素が何となくではあるが大。Intonaと同じくドイツ製という点もやや安心材料か。同機の特徴の一つなのだがDSD信号はPCM信号に変換されて出力される。デジチャン(DF-65)にPCM信号をインプットしている当方としてはこれはありがたい機能。現状の環境ではMinim Server(+SoX)にてこのDSDtoPCM変換を行わせている。JPLAY FEMTO Serverを使用する場合は、このDSDtoPCM変換ができないという課題があるのだ。一方で高精度のDSDtoPCM変換を行わせるための処理負荷は本来結構なものなので、MUTEC MC3+USBに搭載されているFPGAの処理能力でどこまで変換精度をカバーできているのか、という懸念も残ってはいる。

MUTEC MC3+USBの試聴機の貸し出しを依頼し、今後のテスト方法や環境を考えてみる。同機については本家JPLAY Forum中にも取り上げられているので、接続性についてはまず問題なかろうと思っている。

・JPLAY FEMTO環境においてKernel Streamingで使えるか。
・その際のDAC Link値はどの程度まで設定可能か。
・Intona USB Isolatorとの併用は可能か、双方の利点が出せるか。あるいはIntonaは不要となるか。
・送り出し側のサンプルレートが変わった場合の挙動(特にロックするまでの時間、頭切れ、ノイズ発生など)
・単純リクロック時の音、サンプルレート変換させた時の音、DSDtoPCM変換させた時の音

また、このMUTEC MC3+USBはUSB入力の他、通常のS/PDIFにおいてもこのリクロックの機能が働くので、オールドCDトランスポート(Accuphase DP-90)のデジタル出力に介在させた場合にどのように音が変化してくれるかも興味津々である。


4way構成の設定備忘録(2018年12月8日更新)

項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
DF-55の
出力設定
dB 0.0 +0.7 +1.2 +6.0
Analog Att
OFF
マスターボリューム
アッテネーション
dB -4.5 0.00 -10.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0.0 0.0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 92.5 90.7 89.2 87.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

250
250

710
710

3550
3550

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-48 48-48 48-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -11.0 +26.5 -38.0 +27.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm VoyageMPD
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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