オーディオ日記 第42章 枯淡の境地を目指し(その3)2018年4月22日


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デジタルチャンデバにおける-96dB/octのスロープ特性についてこの半月ばかり聴き込んできたが、今後このスロープ特性を本採用することとした。アナログチャンデバ以来、-12dB/octあるいは-24dB/octを永らく使用してきた当方としては謂わば宗旨替えである。デバイディングネットワークでは実現することが難しい急峻なスロープ特性でもあり、高次のスロープはデジチャンの独壇場とも考えられるので、そのメリットを生かした使い方でさらに追い込んでみたい考えている。

このような急峻なスロープ特性を使う場合、各ユニットそれぞれの干渉が小さいこともあって、4wayにおける周波数バランスのコントロールは却って低次のスロープ特性よりも容易なようにも思える。その分個々のユニットの個性が明らかになり、場合によってはその個性がぶつかり合ってしまって音色的な違和感が生じることもある。だが、全体としてはかなり純度や透明感が高くなり、オーディオとしての再現性には優れていると判断した。

もちろん現時点ではファイナルな設定、これで決まり、というところまでは至っていないのであるが、ほぼほぼ納得という状況までもってこれた。ただ、ちょっと微妙なのはOmni Mic V2による中高域、高域のインパルスレスポンスの測定においてどのように判断すれば良いのか、今ひとつ分からないことも起きている。

高域ユニット単体での測定において、ローカットを-96dB/oct(8KHz)とした場合のインパルスレスポンスと-6dB/octのそれを比較してみると、一目瞭然なのであるが、-96dB/octでは測定結果の表示上、インパルスレスポンスかなり乱れたものとなってしまっている。それに比して、-6dB/octでは非常にきれいなインパルスレスポンスである。率直に云って、これがどういうことなのか、測定上の問題なのか、IIRというデジチャン処理の問題なのか、あるいはその両方が混然とした問題なのか判然としない。単体ユニットの測定でこの状態であるから、中高域、高域を重ねた場合、インパルスレスポンスを見ながらタイムアライメントの評価を行うことはほとんど不能になってしまっているのだ。

この観点は引き続きいろいろと研究、実験してみたいと考えているのだが、このようなインパルスレスポンスの測定結果であっても、タイムアライメントを調整し、周波数レスポンスを整えていくと、音楽再生において相当な好結果となると(自分としては)感じている。

クロスオーバー周波数はフルの4wayにする場合、355Hz、1KHz、8KHzでほぼ決まり。引き締まってシャープな感じは多少あるのだが、音源、ジャンルにあまり依存せずに音楽を提示できているように思う。どちらかと云えば多少メリハリがあるような感じかもしれない。

一方、3way+スーパーツィータタイプも捨てがたく、この場合は355Hz、1KHz(上はスルー)で、高域ユニットは11.6KHz(-6dB/oct)でアンビエンスツィータ的にアドオンする。こちらはクラシック系の音源とはとても相性が良く、ホールエコー感が心地良い。なお、高域をアドオンしている関係上この設定では、低域、中低域は1.5dB程度レベルアップしている。

いずれの設定においてもベリリウムツィータはかなり高い周波数を受け持たせる結果になっている。4KHzあたりからいろいろと試してみたのであるが、低いクロスオーバー周波数とすると中高域に使用しているホーンドライバー(SUP-T11)との音色的な違和感が僅かであるが感じられる。そこが払拭されるのが7KHzくらいから。元々のベリリウムツィータの導入意図としては、SUP-T11をあまり高いところまで使わないようにしたい、というものであったが、この構成では比較的高いところまで使ってしまうこととなった。ただ、SUP-T11の1KHz~8KHzの軸上(1m)のレスポンスは全く不満のないものであるので、音色的なポイントを優先した。指向性に関しては当然若干ながら狭まるものと思うが、これには目をつぶることとした。なお、将来的にはSUP-T11と音色的に違和感が無く、かつ10KHz~20KHzがフラットなリボンツィータなどを試行してみるのも面白いかもしれない。

-12dB/octあるいは-24dB/octをベースにした音ではどこかかしこに不満が顔を出してきて、ミッドハイユニットを交換しようか、ともずっと考えてきた。だが、この-96dB/octでそこそこ煮詰めた現状の音ではそのような欲求不満がほとんど生じないのだ。これは不思議なことである。心の迷いか気のせいかもしれない、、、とまだまだ手綱は緩められないのであるが、多様な音源の持つ「音楽の本質」を少しは感じられるようになったのだとすればこんな嬉しいことはない。

(参考)軸上1mの測定結果 (山谷を明確にするため24dBスムージング、5dBスケール。)
下記1から3は-96dB/oct、8KHzクロスオーバーのミッドハイとハイの合成時と個別に計測したもの。考察としては周波数レスポンスとしてはかなり良い状態であるが、インパルスレスポンスは乱れている

1.-96dB/oct、8KHz CrossOver(Mid High + High)


2.-96dB/oct、8KHz CrossOver(Mid Highのみ)


3.-96dB/oct、8KHz CrossOver(Highのみ)


下記4から6は-6dB/octのスーパーツィータ方式のミッドハイとハイの合成時及び個別に計測したもの。考察としては、14KH辺りにあるミッドハイ単体での谷が合成時にも残る。なお、-6dB/octにおけるハイ単体のインパルスレスポンスは非常に綺麗で-96dB/oct時とはかなり差がある

4.-6dB/oct Super Tweeter方式(Mid High + High)


5.-6dB/oct Super Tweeter方式(Mid Highのみ)


6.-6dB/oct Super Tweeter方式(Highのみ)


(注記)集合住宅におけるリビングルームをリスニング環境としているため低域にそこそこの暗騒音が認められる点が辛いところ。


-96dB/oct4way構成の設定備忘録(2018年4月22日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
DF-55の
出力設定
dB 0.0 0.0 +0.7 +3.0
Analog Att
OFF
マスターボリューム
アッテネーション
dB -6.0 0.00 -10.0 -3.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0.0 0.0 -12.0 -6.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 91.0 90.0 88.7 87.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

355
355

1000
1000

8000
8000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-96 96-96 96-96 96-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 15.0 35.0 0 38.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm VoyageMPD
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない


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