オーディオ日記 第41章 流離う旅路の終わり(その14)2018年3月5日


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マルチアンプシステムにおけるスピーカーの各種設定はその自由度が大きいだけに迷ってしまうことが多い。徐々に、徐々にストライクゾーンを狭くしていって自分の好みに仕立てていかねばならないのだが、途中でふらふらと思っているのとは別の道に迷い込んで抜け出せなくなってしまうこともある。そしてそれが誤った方向であったのか、正解なのか、すぐに答えを出せないこともある。相当たくさんの音楽を聴き、またいろいろなところで自分のシステムとは違う音も聴いて軌道修正をしなければならないのだが、厳密な判断基準を持てないが故に、それが設定に由来するものなのか、ソースの問題なのか、部屋を含めた総合的な我がシステムの課題なのか判然としないこともある。そんな風に行きつ戻りつを何回繰り返してきたことであろうか。

以前と比較すれば、自分なりの経験値も多少は増えて、あまりおかしな状態にはならないはずなのだが、より良い音を、より完璧な音を、と希求すればするほど、細かく弄りたくなってしまう。そして、その細かい設定の変更が積み重なってある時気が付くと、自分の望む方向では無くなってしまっていてどうにも我慢ができなくなることもある。

それは簡単に言ってしまえば、「望んでいるような音がしていない」ということなのだ。だが、欲しているのはどういう音なのだ? と自問すれば、それはイメージでしかなく、具体的に言葉にすることは難しい。ある音源だけを格別に鳴らそうと思えば、汎用性を欠き、普遍性を失う音になる。そこにもある種の葛藤があって、これだけは最高に鳴ってくれなければ合格にはならないんだ、という愛着のある音源に足を引っ張られてしまうこともしばしば。

そんな、こんな、ある程度の纏まりを感じさせてくれるようにはなってきてはいるのだが、これではまだまだだ、という自覚の中でもがいている。ここしばらくは高域、中高域の2台のアンプを変更したこともあって、その設定の解を求めるべく、試行錯誤。音楽としてリアリティのある高域感を保ちつつ、落ち着きと静けさの両立を目指したいのだが、やっと合格ラインぎりぎりというところか。ベリリウムツィータはもう充分こなれてきているので、あとは中高域ドライバーとの連携なのだが、双方がそれなりに優秀なユニットなので、ベストな設定が却って確定しにくい。

女性ボーカルにおいては、この高域、中高域のユニットに中低域のユニットとの繋がりもまた重要になる。声の低い方から高い方、そしてエコー感がすべて納得がいくように決まらねばならない。人間の声のほんの僅かなところまで描き分け、また声そのもののチャーミングさ、魅力を損なうようなものであってはならないし、定位はピタッとセンターに小さくまとまり微動だにせず、エコー成分は広大に広がる、ということが具現化されていなければならない。

難しくもある。だから、これが自分のシステム、現状のスピーカーユニット達で実現しうるのか、常に良い音を聴き対比させた上でブラッシュアップしていかねばならないと思うのだ。そして、自分なりの判断として、現状を超えるスピーカー(ユニット)に出会えたなら、そこは保守的になってはいけないと思う。もちろん、MAGICO M6はどんなに評価できても、買えはしないのだが、、、、

一方で、スピーカーだけですべてが決まるわけではないので、部屋(の状態や広さ)やその他の機器、音源を鑑み、財力をも勘案せねばならない。近々、MAGICO S3 MK2、FOCAL Scala Utopia Evo、B&W 800D3の3台をじっくりと聴き比べられるチャンスがあるので、まずは存分に聴いてみようと考えている。現状のマルチアンプシステムから既製品のスピーカーシステムに戻る、ということは構成的にも考えにくいのではあるが、、、

そこそこの満足など突き破るためにも、考えられることはやってみなければならない。最近の4wayの設定においては、各帯域ごとの左右バランスの徹底的なチェックと微調整を実施して声の定位感について少し効果を挙げたようにも思う。中低域のユニットでは左側を、中高域のユニットでは右側をそれぞれ1.0dB程度修正すると声の音程によって定位がふらつくことが解消された(気がする)。高域に関してもどうしたら抜けと広がりを保ちつつ、実在感やリアリティを維持できるのかいろいろな組み合わせを試してみた。極端に言えば、SONY SUP-T11はツィーターがなくでも十分に音楽の纏まりを聴かせてくれるのであるが、そこにベリリウムツィータの透明な高域感をやんわりと乗せたいのだ。これがうまく嵌れば極上のバイオリンが聴ける。清楚かつ甘美な女性ボーカルが聴ける。従来は-24dB/octのスロープ特性で高域、中高域を分割していたのだが、これは周波数特性的には非常に良いのだが、ユニット間の溶け合いを割り切りすぎてしまっているような気もして、あれこれトライしてみた。今のところ、やや広めに薄くオーバーラップさせるような使い方の方が望むような再生に近づく気がしている。これはもう少し検証がいるのだが。また、低域、中低域に関しても、声の肉声感とマッシブな低域の再現という相反するような部分も欲張ってみた。クロスオーバー周波数を低くすればマッシブな低域の質感は上がるように思うのだが、女性ボーカルの声の低い方、あるいは男性ボーカルにおいては、リッチさが物足らなくもなる。逆にクロスオーバー周波数を上げすぎれば低域のキレ、スピード感が失われていく。また、低域においては物理的な相対位置からくるタイムアライメント設定では調整が不足気味になることも相当実験した結果から把握できた。実測位置から割り出したタイムアライメントではやや遅れ気味となってしまうのだ。低域に関しては部屋との相関関係も大きいのでこれは我が家だけの問題かもしれないが、10㎝程度前に出すつもりのタイムアライメント設定がベターポジションでこれにより押し出し感、充実感が醸し出される。

苦労なのか、楽しみなのか、ちょっと良くわからなくなることもあるが、結果として音楽がより自然に聴けるようになればそれが正解なのかもしれない。


4way構成の設定備忘録(2018年3月5日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
DF-55の
出力設定
dB 0.0 0.0 +0.0 +3.5
Analog Att
OFF
マスターボリューム
アッテネーション
dB -6.0 0.00 -9.0 0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0.0 0.0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 91.0 90.0 89.0 84.5
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

315
315

800
800

5000
5000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-12 12-12 12-6 6-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 15.0 35.0 0 37.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Norm Norm VoyageMPD
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない


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