オーディオ日記 第41章 流離う旅路の終わり(その9)2018年1月1日


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MAGICO M6の音を聴いて以降、何となくMAGICOのことが気になって仕方がない。特にDiamond Coated Beryllium Tweeterには強く興味をそそられているし、また同社最廉価(?)となりそうな A3 の登場など待ち遠しく、とにかく聴いてみたいと思わせられる題材が多い。

MAGICOの音が本当に自然なのかどうか、まだまだ良く判らない。一般的な評価として「何も足さない、何も引かない」という何だか昔のウィスキーのキャッチコピーのようなものもあるのだが、それも宜なるかな、と頷ける音がすることは確かだし、こういう音を自分のシステムでも出せるようにしたいとも思う。

もちろんそれは、「美音を奏でる」スピーカーという範疇ではないと思うのだが、単に音源をクセなく忠実に再生して見せるということとは少し違うように感じている。多くのスピーカーを聴いた限りでは、「それがオーディオによって再生されている」ことを少なからず意識させられてしまうからなのだ。逆に云えば「本物の自然音」としての楽器の音や声を感じることができにくい。それ自体は、音源にも多くの要因があって、録音というものの限界もあろうし、編集プロセスによって付け加えられる幾多の人工的なお化粧にも依存していると思う。だが、それらのことを勘案してもスピーカーとしての余分な付帯音の少なさや反応速度の速さというものが、自然な音、音楽の再生にとっては望ましいんじゃないか、と改めて考えさせられる。付帯音の少なさ、という観点はMAGICOの筐体から受けるイメージが大半なのだが、実際に計測によってどの程度証明されているのは判っていない。だが、極めて理詰めに筐体の振動を抑制しようとしていることは理解できる。世の中的には、このリジッドに箱を固めるというアプローチで、筐体の振動を排除し付帯音を減少させるという手法と、スピーカーユニットをフローティングさせて筐体に振動を伝えないという方法があるのだが、どちらが正解なのかも一概には云えないようにも思っている。だた、MAGICOの採用している古くからある前者の方法にもアドバンテージがあることは確かであろう。

他方、スピーカーの振動板の素材や形状を考えると、振動板はとにかく軽く、強く、内部損失が高い(余分な音を出さない)ことが重要なことは既に常識論の範囲だと思うが、これらの要素がまた相反する特性でもあり、その矛盾の中で最適化を図っていくことなんだろうと思う。究極的には振動板そのものを持たないイオンスピーカーのようなものが理想論なのかもしれないが、その具現化は決して易しくない。絹、紙、ポリプロピレン、その他の複合材(炭素繊維など)、ダイヤモンド、ベリリウム、ボロン、アルミニューム、マグネシウムなど優れた素材が考えられてきたと思うのだが、形状、サイズと強度、重さのバランスで適切に使用できる周波数には制限を受けてしまう。また、これらを正確にピストンモーションさせるためにはなるべく強力な磁力が必要だが、アルニコ、フェライト、ネオ(ミ)ジウムなどその経済性と能力を鑑みた選択が採られてもいる。

素材だけで音が決まる訳ではなく、その形状にも当然ながら依存する。形状はまた指向性とも密接に絡む部分があって、コーン型は非常に合理的ではあるが、指向性という課題と素材の軽さ、硬さ(変形に対する強靭さ)との兼ね合いで分割振動の発生という問題も抱える。自然音を考えれば無指向性がリーズナブルではあるのだが、スピーカーユニットでこれを実現することもそうそう簡単ではなく、ジャーマンフィジクスのDDDユニット、MBLの提灯型スピーカーユニットなど種類は限られるのだが、密度感高く、実在的な音を「無指向性」というイメージに反して聴かせてくれる気がする。リボンに代表される平面型は前後への双指向性を持つものと前への単一指向性の二種類があるが、単一指向性のものは概して高域に向かって指向性が狭まる。

指向性というものそれが音楽再生にとってどのようにインパクトを与えているのか案外と判り難いし、指向性が鋭いイコール音が悪い、というようにも感じない。質感という観点では余分な反射音を生じさせないこともあるいはまたメリットになるのかもしれない。

現代的なスピーカーシステムにおいては、ユニット素材の進化、増幅系の進化があって、ホーン型というものはかって小出力のアンプでより大きな音圧を必要とした時代の遺産だと思われつつある。曰くホーン臭い、クセのある音がする、歪が多い。また、やたら音圧が高くて(家庭用としては)使いにくく、アンプの残留ノイズが気になり、音像型であって、音場型ではない、等々。いずれも一理ある。一方でより自然音を感じさせるようなリニアなダイナミックレンジ、瞬発力は高能率でもあるホーン型の得意とするところでもある。

当方もホーン型を永らく愛用してきてはいるが、これを使いこなすことは確かにハードルが高いことは重々承知している。しかしホーンでは出しにくい音もあることも事実だが、ホーンでなければ出せない音もあるのだが、、、世の所謂ハイエンドスピーカーではJBLなどホーンが採用されているシステムは希少になりつつあることは間違いない。もちろん、このところ当方が注目しているMAGICOにおいて、ホーンを採用したスピーカーシステムなどは無い、と思い込んでいた。いや、これは浅学を恥じねばならない。

Magico Ultimate というのは最高額ではないのか(?)と思っていたM6の3倍もするという受注生産品らしい。実際にどの程度出荷されたのかは判らない。音を聴く術もない。だが、そこで使用されているドライバーには既視感がある。 レビュー記事 を紐解くと、今更ながらであるがなんと当方にとっては驚愕の事実。使用されているスピーカーユニットはすべて日本製ではないか。ホーンドライバーはエール音響、15インチのユニットはTAD。これをどのように理解すれば良いのか。MAGICOが単に遊びで作ったとは当然思えないし、やはり究極の音を目指したのだと、、、

自分自身ではSONYのユニットを抱いて彷徨い果てるまでこれで行こうと決めてきた経緯もある。だが一方でホーン以外のユニットにも垂涎のものがあり、「そこそこ」となってきた現状を鑑みて何となく浮気もしたくもなる。あるいはこれ以上を目指すのであれば、、、と迷うこともある。そんな日々にこのことが大きな一石を投じ、我がオーディオにも波風をたてることにもなろうか。


4way構成の設定備忘録(2018年1月1日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
DF-55の
出力設定
dB 0.0 +2.0.0 +0.4 +1.2
Analog Att
OFF
マスターボリューム
アッテネーション
dB -5.0 0.0 -10.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0.0 0.0 -12.0 -6.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 92.0 92.0 88.4 88.2
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

250
250

800
800

3150
3150

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-12 12-12 12-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 25.0 37.0 0 37.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Norm Norm VoyageMPD
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない


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