オーディオ日記 第41章 流離う旅路の終わり(その6)2017年11月6日


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世に云うところの超(?)ハイエンドスピーカを先日拝聴してきた。お目当ては Marten Coltrane3Magico M6 。いずれのスピーカーも音と造りの面どちらも素晴らしいと思うが、スピーカーだけで1千万、2千万という単位の金額は懐具合を勘案するような次元を遥かに超えてしまっており、どんなに音が良くても当方には垂涎のままであろう。このスピーカーと組み合わされた各機器を合計すれば、郊外にかなりの豪邸が建つという代物である。それでもオーディオに興味を持つ身としては一度は聴いておきたい。そして、そこで再生される音のエッセンスを少しでも自分のシステムに取り込みたいと(貧乏根性で?)密かに思うのだが、そうそう易々と行くようなレベルではないな~と痛感する。音の出口であるスピーカーシステムは再現される音に対して支配的である。逆に云えば他の機器に比せば個性が大きく残されている部分もあると云えるかもしれない。

我が家で出せていない音がどの辺りなのか、帰ってから改めて比較してみたが、空間の再現力、音の密度感やリアリティなど音楽再生における重要部分が(当然なのかもしれない?)が足りていない。一方で周波数バランスや質感などは案外健闘してるかも、、、等々。聴いた音の記憶が生々しい内はちょっと悶々とするが、また逆に段々と自宅の音に馴染んでくると、まぁまぁなのかな~と慰めてみたりもするのだが、、、

このところ専ら聴くばかり(半分寝ている?)であり、システム的には特段の進歩がない。パワーアンプのリニューアルもしなけりゃ、と思いつつも現状ちょっと放置状態。上流のPCオーディオ周り(VoyageMPDとJPLAY Dual/Triple PC構成)も用途に応じた構成が確定して、まっ、これでいいかという感じ。デジチャンとマルチチャネルマスターボリュームについてはリコモン環境を手にできて念願であった環境整備が終わった。スピーカー関連も測定と調整の繰り返しにより徐々にであるが4way構成での音が整いつつある、、、と、しばらくいじらずにいた構成であるが、こういう音を聴いてしまうと何かしたくなってしまう、というのは何の因果か。

ただ、あれこれ考えても大してやることがないので、パワーアンプの構成を見直してみた。現在の我が家のパワーアンプは5台構成なのだが、その内1台だけが仕様上の理由からアンバランス接続という変則的なもの。新しいマルチチャネルアッテネータは基本バランス仕様なのであるが、この1台はロートルアンプでありバランス接続に対応していない。4wayで5台としている理由は低域をブリッジ接続(BTL)で使っているためなのだが、これを4台構成に縮小し、バランス接続に統一してみた。ただしそのまま4台で低域、中低域、中高域、高域用とするのではあまり能がないので、低域、中低域を左チャネル用のパワーアンプ、右チャネル用のパワーアンプと振り分けて、低域、中低域だけであるが仮想的なモノラル構成とした。

Drive Section Diagram

現行のブリッジ接続による力感が多少は失われてしまうことはやむを得ないと思うが、左右に振り分けた効果が出るかどうか。ブリッジ接続では当然ながら、モノラル化によって電源供給能力が高まるので、それなりのメリットは出る。一方で、この仮想的なモノラル構成の場合は、ステレオ2chを低域用、中低域用として使用するので、電源強化は期待できない。だが、アンプを低域用、中低域用と分けてしまう場合に比せば、低域においては、各パワーアンプが左または右の片側分の駆動を分担するので、(コンデンサ容量的には決して増えないが)トランスの電源供給力は多少は余裕が出るのでは?と考えられる。

この過程で、低域、中低域用とアンプを分ける普通の構成とも比較してみたが、やはりこちらはブリッジ接続で聴いてきたこともあって充実感という豊かさというか、そういうものにやや不満が出る。今回の仮想的なモノラル構成でも完全にはその感は払拭できないが、左右を分けているというセパレーションの効果もあるのか、これはこれでまぁいいんじゃないか~という結論である。

本来的には、中高域、高域においても同様に左右に振り分けたシンメトリカル構成にすべきであろう。だが、そのためには同じパワーアンプが必要になるのだが、現状は機種が異なる。できれば、現在中高域用としているA-35というアンプに合わせるべく1台を更新したいのであるが、A-35は既に一世代前の機種なので中古品を探さねばならず、現時点では出物に巡り合えていない。焦らずにゆるりと探してみようと思う。

閑話休題

以前と比せば、多様な音源を普通に鳴らせる、という意味で我が家の音も所謂「普遍的な音」に近づいたように思う。従って、音楽を楽しむ、という観点からはそれほど大きな不満はない。だが、一方で、「オーディオ的快感をもたらす再生」という観点からは、かなり音源に依存しているな、と感じている。オーディオ的な満足度というのは案外曲者であるのかもしれない。本来の音源の持つパフォーマンス以上に音楽が奏でられることはないはず(?)だし、音源以上の音がシステム構成によって鳴る訳でもないのだが、「完璧に引き出せているのか」という自問には常にぶつかってしまうのだ。そして、そこに疑問があれば、もう少し、もう少し、という風にあれこれと改善を求めたくなる部分はある。

一方で、それらの改善が音楽の再現という行為において、何ほどの貢献があるのだろうか。良い音楽は変わらずに良い、というのは自分にとっては真理なのかもしれない。そして、自分にとってたいして好きでもない「高音質」の音楽(音源)を多少なりとも良く鳴らそうなどというのは、結局苦痛を伴うような作業でしかないように思えるのだ。

ただ、オーディオ的快感をもたらすような(録音の)音源は確かにある。それはまた、かなりの加工を感じさせるような部分があり、その加工が快感にも繋がっているようにも思う。適度で心地良いリバーブ、背景の気配や音場感、そして静寂との対比、いずれもが磨きぬかれた「加工」であると認識しつつも聴感を刺激されてしまう。もしかしたら、整形美人(?)という感じなのかもしれない。もちろん、その音楽自体は関与するそれぞれ分野のクリエーター達の感性を豊かに感じさせてくれなければならない、という条件付きであるのだが、、、

モーツアルトの音楽は、不思議なことに自分にとってはどう再生されていようと、その価値を失わないのだが、時に再生状態によって好きにも、嫌いにもなったりする音楽がある。それは正にオーディオ再生のパフォーマンスに依存している音楽なのだ。これを自分なりにどう解釈すれば良いのか、まだ解はない。音楽的には評価していなくても、オーディオ的な快感、価値がある、という音源が自分にとっては存在する、ということなのだろうか。この辺りの矛盾は自覚しているのだが、結局何のためのオーディオなのか自分なりにはまだ解決できずにいるのだ。

自分のシステムに関しても、求めてきた細い道の奥まったところまで辿り着いたような気がするのではあるが、これが我がオーディオの理想郷、桃源郷なのか、と自問すれば、やはり「完璧な満足」は存在しないことにも気付く。では、次に何を求めていけば良いのか、どうすれば答えを見つけられるのか、、、ここに至ってもまだまだ手探り状態である。

現在のシステム構成はSONYのユニットを彷徨い果てるまで使おう、という基本方針の上で構成を自分なりに進めてきた。もちろん、そのユニットとて、本来の2wayでは納得できないために、4wayへと展開させてきた。だが、この延長の先に求めるゴールが見えてくるのか? 世には多くの至高のスピーカーユニット達がある。もちろん、それらの全ての音を聴いた訳ではないが、聴いて理解する努力はしてきた。そして、やはりそこにはスピーカーユニットそのものに依存する個性の違い、音の違いが存在する。部屋や全体構成に依存するので、個々のユニットの素性を語ることはかなり難しくはあるのだが、それでも少しづつ理解はできてきたように思う。また、現状の我が家のユニット構成では出せない音もあるのだと気付かされてもいる。

されば、この先のビジョンは何か。やるべきことは何か。現状を手直しするとすれば何か。前提としてやっておかねばならないことは何か。様々な葛藤もありながら、扉の向こうにある道を探さねばならないのだ、と改めて思う。この部分をあのユニットに変えてみたら、という妄想での検討を現在繰り返している。3way構成でも良いのか、やはり4wayに拘るべきなのか、それによって、ユニットの選択肢が変わってくる。4wayの場合、どのように帯域を分担させるのかにもよるが、800Hzから4000Hzくらいをホーンドライバー以外の中高域ユニットに担当させようとするとこれに見合うユニットの選択肢は案外と限られるという現実がある。3wayであれば15~16.5cm程度の口径のユニットで200~2800Hz前後までを受け持たせることになると思うがこちらはぐっと選択肢が広がる。冒頭に書いたMarten Coltrane3とMagico M6という両雄のスピーカーはいずれも16.5cm級のミッドレンジとツィータユニットの組み合わせの構成である。低域をスタガードライブしているかどうかは不明だが、所謂4way構成という感じではない。

どんなユニットであれ現状出せていない音を出すための対応として適切なのかどうかは実際導入してみるまでは判らない。妄想段階がやはり一番楽しいのだろうか。


4way構成の設定備忘録(2017年11月6日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
DF-55の
出力設定
dB 0.0 0.0.0 +1.7 +1.7
Analog Att
OFF
マスターボリューム
アッテネーション
dB -6.0 0.0 -10.0 -3.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0.0 0.0 -12.0 -0.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 91.0 90.0 89.7 91.7
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

200
200

900
900

5000
5000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 24-24 24-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 23.0 55.5 0 53.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm VoyageMPD
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない


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