オーディオ日記 第40章 はじめに音楽ありき(その12)2017年6月30日


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前回の周波数測定に関する記載に対して、アドバイスをいただいた。このような駄文でも書き連ねていることによって名人級、達人級の方々からいろいろとアドバイス、サジェスチョンをいただけることは本当にありがたい。当方の測定はまだまだ見よう見真似のレベルであって、実際のスピーカーシステムの厳密な調整を実施できる程には至っていないことを痛感する。前回の測定のテーマは「リスニングポイントにおける周波数レスポンスのチルトダウン(高域に向かってのなだらかな下降)」というテーマであったが、Omni Mic V2によってリスニングポイントでの測定を適切に行うためには、「Use Long Window」という設定にしなければならない、という点。マイクによって測定される音圧には直接音と反射音があるが、端的に云えば反射音をどこまで測定の範囲とするか、というもの。通常の測定ではミリセカンド単位でこの反射音の取り込み範囲を指定できるのであるが、デフォルトのウィンドウ状態では15ミリセカンドまでの調整範囲。これでは、実際のリスニングポイントにおける反射音(の音圧)の測定としては取り込み不足であって、結果として直接音の割合が高くなってしまう。従って、このような測定によって周波数レスポンスを直接音主体でフラットにしてしまうと、実際の人間の耳でリスニングポイントにおいて感じる音圧感とは一致しなくなる。(一般論的には高域過多に聞こえることに通じる)

そこで、前述の「Use Long Window設定」であるが、この設定を行うことによって250ミリセカンドまでの反射音を取り込んで、リスニングポイントにおける音圧状況を測定してくれるというもの。これによって、人間が体感している音圧に近づく。実際にこの設定をして、従来の調整状況のまま測定をすると、若干異なる結果となることが分かる。人間はリスニングポイントにおいて、直接音と反射音(のすべて)を聞いている訳なので、このような設定による測定が必要となるというもの。

おそらくであるが、この設定で測定した場合は周波数レスポンスのチルトダウンは不要を思われるので、この状態でフラットになるようにわずか微調整を実施した。なお、結果的には前回測定したなだらかな右肩下がりの設定が概ねUse Long Window設定によるフラットな状態とそれほどの乖離は無かった。(ちょっとほっとした)

前回の周波数レスポンス測定結果(なだらかな右肩下がりになっている):
Frequency Response

Use Long Window設定による周波数の測定(なだらかな右肩下がりになっていない):
Frequency Response

このことから、間接音を含めて測定した場合に概ねフラットとなっている設定であれば、直接音主体で見るとおだやかな右肩下がりになっている、ということが云えるのではないかと思う。従来は直接音主体の測定をしていたために、この右肩下がりの自然な状態となるように試聴を繰り返し塩梅の良い設定を多少四苦八苦しながら模索していた訳であるが、これは実は結構大変なので、この「Use Long Window」設定を用いて測定、調整する方が逆にベターなのではないだろうか。また、ある程度の右肩下がりが良いと云われてきたことについても、なる程そういうことだったのか、と改めて納得もする次第。

また、この機会に改めて、同一帯域で使用している左右のユニット間のタイムアライメントの測定を実施した。こちらも一般論的には左右のスピーカーまでの距離はリスニングポイントからレーザー距離計などを使って厳密に合わせることなどが推奨されると思うが、左右のユニット毎のインパルスレスポンス測定までは実施していなかった。タイムアライメント測定自体はユニット間の前後位置調整なので、今までの方法は左チャネルでの低域、中低域、中高域、高域のそれぞれのユニット間のタイムアライメントを取り、その設定を右チャネルへ移して右チャネルを測定し、それで計測上の違和感がなければ「良し」としていた。

元々リスニングポイントからの左右にスピーカーまでの距離は座る位置その他によって厳密ではないので、この辺りはラフでもいいかな、と考えていた次第。だが、改めてよくよく考えてみればこれはあまりうまくない。本来、元の音源に含まれるひとつの音が左右のスピーカーから同時に聞こえて来る時、それは全く同じタイミングで耳に届いていなければならないはずである。人間の耳は僅かな遅延によって位置や距離を感知している仕組みから考えてもこれは必然だと思う。故に、距離を測って、それがほぼ同距離程度であればOKというのでは、もしかしたら正しく無いのでは、と思い直した次第である。

そこで、まず高域ユニットのみから、モノラルのShort Sign Sweep信号を左右同時に出して正確なリスニングポイント位置でインパルスレスポンスを測定してみた。物理的な距離は正直そこそこいい加減なので、若干は、、、と予想はしていたが、やはりインパルスレスポンスが左右でズレを生じている。その差は高域ユニットで3cm。Omni Mic V2はこの点、冷徹に結果を示す。同様に中高域ユニット(2.5cmの差)、中低域ユニット(3cm)と微妙にタイムアライメントのズレが異なるのだがやはり差が生じている。

(注記)この距離の差自体は数字として示されるものではなく、インパルスレスポンスの波形のずれとして表示される。このため、このインパルスレスポンスの波形をずれをデジチャンのタイムアライメントで調整し、一致した状態になった時点での距離(cm)をここでは記載している。なお、低域ユニットは高域に向かってのレスポンス低下が激しいため、インパルスレスポンスによる波形の確認から左右のずれを把握することは困難であった。

このあたりの物理的な位置とインパルスレスポンスをどのように捕らえればよいのかまだ若干消化不良のところはある。改めて厳密な距離も確認せねばなるまい。だが、物理的な距離が多少いい加減ということもあるので、ここではOmni Mic V2の結果を信用して、個々の帯域における左右のユニットのタイムアライメントを厳密に再調整した。最終的な調整は全ユニットからモノラルのShort Sign Sweep信号を左右同時に出してタイムアライメント(インパルスレスポンスの波形)にズレの無いことの確認を実施した。

さて、このような微調整を実施した後の結果としての音はいかがなものであろうか。前段の反射音まで含めた周波数レスポンス調整の効果もしっかりと感じられて、音楽のバランス全体に違和感はない。測定上はかなりフラットな結果になっているのであるが、高域の強調感もほぼない。また、後段の各ユニットの左右のタイムアライメントに関しては、今までの音には僅かな滲みがあったようにも改めて思わせられる。特にチン、リン、キン、コンと鳴るような高域系打楽器などの感触が確かとなり、また位置関係はより明確になったようにも感じられる。必ずしもピントが合った、というような表現とは違うような気もするのだが、音楽の全体感の提示の自然さ、楽器の響きのクリアネスが増したように思えて実のところかなり好感触。ただ、この左右の数cmの違いというのは頭を僅か動かしただけでも変わるはず、、、これが意義のあることなのかはもう少し検証してみたいと思う。

単純に「測定」ということだけであっても奥が深く、まだまだ知識が足りていないことを改めて痛感する。やはりきちんとした理論を知り、その裏づけの基に測定し、評価し、フィードバックして行かねばならないと思う。音楽を聴くことは感性が中心かもしれないが、音楽再生技術という観点からはやはりオーディオ的な理論と知識が不可欠であり、それを正しく知っていれば、Omni Mic V2のような廉価で使い勝手の良い測定ツールもまた生きてこようというもの。まして今の時代、パソコンを使用した測定ツールは当たり前なので、それをしっかりと使いこなさねばならない。いや、、、勉強になりました。感謝。


4way構成の設定備忘録(2017年6月30日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
パワーアンプでの
入力絞り
dB -6.0 0.0 -12.0 -12.0
設定値
SP側での
アッテネーション
dB 0.0 0.0 -12.0 0.0
(L-PAD抵抗)
DF-55の
出力設定
dB 1.2 0.0 +2.0 +5.5
Analog Att
OFF
スピーカーの
出力(想定)
dB 92.2 90.0 88.0 86.5
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

180
180

800
800

2240
2800

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-12 12-12 12-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 23.0 55.5 0 54.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Norm Norm VoyageMPD
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない


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