オーディオ日記 第40章 はじめに音楽ありき(その3)2017年4月3日


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オーディオにおける音の評価基準はいろいろとあって難しいのであるが、基本としては音源に含まれている音楽の「過不足のない提示」だと思っている。この観点に立てば、部屋や装置による若干の加点要素はあっても、音源の十全な再現性における不足に対してオーディオ自体は減点方式であって、如何にしてこれを最少にとどめるか、ということが主たるテーマだと考えている。所謂「再生音の質的劣化」をどのようにして排除していくか、ということであるが、これが当方のオーディオにおいて非常に重要な課題となるのだ。

また、オーディオにおける「美音」というのも似たような考え方であって、装置が音楽や楽器の音色の美音そのものを新たに作り出せる訳ではない。音源に含まれた音楽としての生命感や躍動感を損なわずに、その旋律や音色、はたまた響きやホールエコーまでを忠実に再現出来て、初めてそこに音楽としての「美音」が存在するものだと思う。言い代えれば、「良い音」がオーディオシステムによって新たに作り出されることはなく、再生成されるに過ぎないのだと考えている。

一方で、現実の演奏という観点からは、演奏空間による音の差というのは存外に大きく、音楽を心地良く聴けるかどうか、について大きく影響するファクターを持っている。これはおそらく人間の耳が響きや残響に対して、それを快く感じられるメカニズムがあるのではないか、とも推測している。また、人間の耳が極めて大きなダイナミックレンジを持っていることにも(オーディオとの比較において)忘れてはならない点だと思う。

これが、オーディオという世界と仕掛けの中で、音源、装置、再生環境(部屋)という観点から考えた場合、どのような図式を当てはめれば良いのだろうか。そもそも、音楽演奏自体が空間や響きを前提としているので、それらが録音において充分に捉えられていれば、音源に忠実な再生で良いようにも思える。ただし音源自体が、そもそも録音という行為には多少なりとも限界があって音楽全体が十全に捉まえられていない、と仮定すれば装置や再生環境によってその不足を補う、ということも在り得ると考えなくてはならない。

これは、「愚者の禅問答」なのかもしれない。だが思う。オーディオ装置の「役割」はどこにあるのか? 基本のスタンスとしては、冒頭のような「再生音の質的劣化」を最小限にとどめつつ、心地良い音楽の演奏空間を我が家のリスニングルームにおいて再現することだと思うのである。そもそもHi-FiとはHigh Fidelity (高忠実度)の意である。音源を劣化させることなく、再生することが基本のスタンスであることは間違いない。

では、この高忠実度、というのは我が家の装置に於いてどのようにすれば実現できるのであろうか。そして、それは客観的にメジャメント可能なのであろうか。だが、現状当方が辿り着いた結論としては、測定装置等によって把握、測定しきれるものでは無く、そこで再現された音楽を聴いてそれを判断するしか方法がない(コンピュータ等によって解析は可能なのかもしれないが)。良い音は良い。そうでない音はそれなり、、、だが、良い音というのは決して唯一無二ではなく、幾通りもあることもまた経験から判っている。とすると、ここに普遍性を持つ高忠実度という定義は成り立つのであろうか、、、

考えれば考えるほどに答えはでない。まさに愚者の禅問答たる所以である。

忠実度という言葉からすれば、本来変わらぬもの、普遍的であるべきなのだが、オーディオにおいてはそれは必ずしも唯一無二の普遍性を指し示さないのだ。そしてまた、音の再現における「個性」もオーディオの趣味の世界として許容され、尊重される。だが、個性というものはまた何らかの質的劣化によってもたらされるものである可能性も高いのだが。

一方で、オーディオにおける音に関して面妖な表現も時に目にする。オーディオ装置の主要パートである機器がそれぞれにこの高忠実度の「鍵を握っている」ことは事実だし、微妙且つ精緻な使いこなしによってその精度は上がっていくものだと思う。些細な対応であってもしっかりと良い方向に変化することもまた経験することである。

だがしかし、激変に次ぐ激変、、、となるような僥倖は簡単には起こらないのだ。主要パートを占める良い装置たちによって、ある程度以上の高忠実度が実現できているのであれば、そこからは1点、2点、、、せいぜい3~4点という僅かな積み重ねによって満点に近づけていくステップとなろう。時には対応したアクションがマイナス方向に働いてしまうこともあり、期待とは裏腹になかなか満点には近づいては行ってくれないものだ。そしてまた、その僅かに積み上がっていく加点部分においても、それが高忠実度に照らして、論理的な理由付けを含めて「良くなった」と正確に是非判断するのもまた容易なことではない。何か変更を実施すればいずれかの変化(キャラクターの変化と質的な変化)はあるものと思うし、その変化はまた比較試聴によって存外簡単に把握できてしまう。人間のこの能力には感嘆すべきものがあるが、だが目先の変化にだけに囚われていれば、それが本当に加点ファクターとなるような質的向上なのかどうか冷静に判断することは適わない。音のキャラクターに対する個人の好みというものもモチロン存在する。そして音の良否の判断には好みが優先されることの方が実際は多い。

別の観点になるが、ちょっとした問題から全部の音ががらがらと崩れてしまい、全く聴くに堪えなくなることもある。それもほんの僅かな原因で。となると仔細な対応それ自体が微妙な音への影響の範疇ではなく、音楽の精気を失わせることもあり得る重大なファクターを担っているということにも通じる。積み上げは僅かづつであってもそれが崩れる時はまた一瞬でもあるのだ。まさに不思議の世界である。そして、ここにも愚者の葛藤が生まれる要素がある。

翻って自分自身も絶対的な音の良否の判断能力は充分には持ち得ていないと感じている。だから、その僅かな加点部分を正確に捉えて積み上げていくことがなかなか難しく、減点となってしまうばかりの対応も多くて堂々巡りのオーディオ人生でもある。高忠実度という無味乾燥(的な?)なばかりのオーディオを求めている訳でもないのだが、もしこれらの機器(や使いこなし)によって音源ありのままの豊穣な音楽がもたらされるならばそれは至福の極みなのかもしれない。だが、訪ね行く道は近いように思えても遠い、というのが今日この頃の実感である。

(閑話休題)

モーツアルトにはいつから、どのようにして魅せられていったのかはっきりした経緯が自分でもわからない。ピアノを中心としたクラシック音楽への目覚めがいつしかピアノ協奏曲へ発展しモーツアルトに繋がったようにも思う。だが、ピアノ協奏曲はモーツアルトの魅力のほんの僅かな部分でしかないようにも思う。一方でピアノ協奏曲からオーケストラの響きに対する興味が沸いていったことは間違いなく、それはやがてマーラーに行き着くことになる。初めてマーラーの交響曲第4番を聴いた時の陶酔は今も鮮明に覚えている。これは天上へといざなう音楽そのものだと。第4番については、今でもこよなく愛する曲のひとつである。そして第1番の若々しく瑞々しい感性も大好きである。

マーラー交響曲第4番のアナログディスク達(再掲載):
Gustav Mahler Symphony No4

マーラーの交響曲に関しては1番から5番までと、6番以降では何か精神的な違いを感じてしまうことが多い。特に6番、7番では混沌と喧騒の中でマーラーの精神が炸裂している。4番、1番、3番で感じる伸びやかさや爽やかさとは少し違う次元のように感じてしまうのだ。だが、大地の歌の最終楽章と次の9番になって、この喧騒と混沌が枯淡と静謐の中へと突き進んでいくことになる。マーラーの作曲家としての生き様と精神の変遷が、1番から9番(未完成の第10番はあるが)までの時の流れの中で、翻弄され移ろっていくことが如実に理解し得る音楽だと思う。

おそらく音楽における枯淡というものが少し理解出来始めた時にモーツアルトの弦楽四重奏を聴き始めたのではないだろうか。特段の震撼や劇的な出会いはここにはなかったのだ。そして、この弦楽四重奏の世界でモーツアルトの心の奥底に隠れている「何か」に徐々に触れていったような気もする。だが、それが何なのかは今もまだ判らない。表面的には美しく、優しく、穏やかで、時に華やかで激しく、、、、この音楽から感じられることは、人生は美しくあり喜びに溢れている。そして脆く儚い、という真実か。


4way構成の設定備忘録(2017年4月3日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
パワーアンプでの
入力絞り
dB -7.0 0.0 -20.0 -7.0
設定値
SP側での
アッテネーション
dB 0.0 0.0 0.0 0.0
(L-PAD抵抗)
DF-55の
出力設定
dB 0.0 0.0 0.0 +4.0
Analog Att
OFF
スピーカーの
出力(想定)
dB 90.0 90.0 90.0 90.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

560
560

1000
1000

8000
8000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-48 48-48 48-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 27.0 55.5 0 36.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Rev Rev JPLAY
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない


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