オーディオ日記 第38章 つぎなるものは(その15)2016年8月26日


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Dante Audio Networkのテスト、試聴の続きである。

既存環境との比較はJPLAY Streamer + Danteの構成が塩梅良く 動いて くれているので、結局これで行うこととした。従い比較試聴する構成は以下の3通りとなる。

1.JPLAY Streamer + Dante Audio Network (Windows10 Pro)
2.JPLAY Streamer + 既存環境 (Windows Server 2012R2)
3.VoyageMPD + 既存環境

Dante Audio Network比較試聴用構成図:


楽曲ファイルはいずれのケースもNASに置く。2と3はIntona USBアイソレータ経由のUSB DDC出力、デジチャンという既存環境、いつものルートである。マスターボリューム以降のアンプ、スピーカーの構成は全く同一であり、4wayの設定もデジチャンとDante MPP,DSPを同じにしてある。また、選曲操作等は基本iPADから行うスタイルである。1と2はKinsky、3はmPODで行った。操作性に関しては何度も言及しているが、VoyageMPD系のリモコンアプリの俊敏さ、多機能さ、安定性は群を抜いており、比すればKinskyはえらくもっさりしており、時に不安定でもある。1,2のいずれの環境でもNASは使用しているがDLNAによる楽曲のアクセスは行っていない(SMBによるアクセス)ので、もう少しレスポンス速度は望みたいところである。

さて、比較試聴の開始である。いずれの音もとても納得感があるのだが、性格は違う。明らかなのはDante Audio Networkで再生した時に感じる音の「アキュレートさ」である。これはある意味で際立っている。比すれば既存環境は若干ながら「エモーショナル」である。JPLAYでは濃く力強く、VoyageMPDではしなやかで優しい。これはどれかひとつを選べと云われれば相当悩んでしまうかもしれないのだが、逆にエモーショナルに感じるということはそこに何らかの「味付け」を感じているということかもしれない。

ただ、Dante Audio Networkの持つ明晰さ、アキュレートさ(言い換えれば再現の正確性)はプロの世界では必須なものなのかもしれないと思う。その音の秘密を知りたくて、Omni Micで周波数レスポンスとタイムアライメントを測定してみた。(測定位置は約2.5mでリスニングポジションからは1mほど手前、補正は全く行っていない)

驚く結果である。特にタイムアライメント。Danteにおけるデジタルチャネルデバイダー機能(MPP,DSP)は位相回転の少ないFIRであることの恩恵だと思うが、インパルスレスポンスがビシッと一致している。ここまでビシッと揃ったインパルスレスポンスは4wayを指向してからこの方、実現できていない。Wavelet Spectrogramで見ても乱れは少ない。また、左右の周波数特性も(低域には部屋の影響が見られるが)破綻がなく、位相の動きも多少の回転は見られるがなだらかである。うむむ、、、参った。

左チャネル(周波数、位相、インパルスレスポンス):


右チャネル(周波数、位相、インパルスレスポンス):


Wavelet Spectrogram(タイムアライメント):


既存環境のデジチャン(DF-55)はチャネルデバイダー処理がIIRなので位相が多少回ることはやむを得ないのであるが、この計測結果からもDante Audio Networkの「アキュレートな音」の印象は間違っていないこととなる。一方で、後段のアンプやスピーカーのキャラクター、部屋の影響はもちろんあるので、これをもってDanteの性格や効能とばかりは云えないとは思うが。なお、現時点では、従来からの4wayの設定値をいじっていないのでこの先微調整を行いこれをブラッシュアップしたらどういうことになるのか、思わず興奮してしまう。特に位相特性についてはなだらかとはいえ回転が見られるので、この辺りもう少し追い込んでみたいと思う。だが、しかし逸ってはいけない。焦ってはいけない。

音の印象は時に変わる。時間帯や気候条件、体調にも依存する。何より、期待値が高ければそれだけプラシーボ効果が増大する。ここは設定をあせって弄らずにじっくりと聴き倒すことが肝要であろう。

JPLAYはPCオーディオの世界におけるある種のアマチュアリズムのトップノッチだと思うが、これにプロの世界の先端技術であるDante Audio Networkが加味された構成である。オーディオとして面白くない訳がない。このDante Audio Networkのテストの結果にて、当方のシステムがこの先どうなっていくのか不安と期待(?)が一杯でもある。


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