オーディオ日記 第37章 夢の旅路は続く(その9) 2016年3月 2日


TOP Audio Topics DIARY PROFILE LINK 掲示板

デジタルファイル音源の再生に関してあれやこれやと試しつつ遊んでいるが、先のファンレスPCの製作は期待以上の音の良さが実感できてちょっと浮かれている。この勢いでNASにも手を付けてみようと思う。(今回は最後のところで準備にドジがあったことが判明し現時点では未完)

オーディオ用と銘打ったNASが登場して久しく、また昨今ではDELAやfidataなど本格的(かつ高価格な)NASが登場してきて、この分野もネットワークオーディオの音を左右する重要なコンポーネントのひとつとして最早認知されたものと思う。当方も実際にその音を聴いて思わず買ってしまおうかと思ったくらいなのである。一方で音が変化、改善される理由や根拠を自分なりに調べ納得してみたいとも考えた。デジタル音源再生に係わる電源系ノイズ対策をいろいろと実験してみた結果、デジタルであっても(デジタルであるが故に)効果が存外に大きく、これらを自分なりに試行錯誤・体験できたことは経験になったと思っている。良いと云われる製品を迷わず購入してしまうという手もあるのだが、ひとつひとつ紐解きながら進んでみたいのだ。

NASにおいても、オーディオ的にやるべきことをやれば、音は変化するのは必定、当然かと思う。当方の現状のNASはシンプルかつローコストなものであるが、対応の仕方によっては若干でも音質向上が期待出来る可能性があると思うので、自分なりのチャレンジを何はともあれやってみたい。

では、一体どのような対策と効果の因果関係があるのか。これについてはいろいろな事例を検索しまくり、DELAやfidataが採用している手法や構成なども研究してみた。音への影響がありそうなファクターを纏めてみると(使い勝手の部分は除外した)おおよそ以下1~4のような内容となる。電源系、筐体設計などはオーディオコンポーネントとしてみれば至極妥当な内容だと思う。一方でNASの音質改善というテーマで工夫し改造に取り組んでいるようなユーザー事例はほとんど見つけられず。このようなテーマに取り組んでいる人はあまりいないのかもしれないと感じた。従って、ほとんどがメーカーによる製品紹介の情報に頼らざるを得なかったのが残念な点である。
(注記)かないまるという方がRock Box NextというNASを中心に各種の比較試聴をした情報があり、これは改造ということではなく使いこなしの範疇だと思うが参考になった。

1.電源系
・電源供給の強化(供給ワット数の増強、コンデンサなど)
・基板への電源とHDD(もしくはSSD)への電源を別系統で行う。
・電源系ノイズ対策 (AC電源フィルター、ファインメットコアなどの採用)

2.筐体設計
・筐体の構造強化
・基板部とドライブ部の分離
・冷却ファンの排除

3.NASとしての機能の見直し
・サーバー機能の簡素化(余分なサーバープロセスを動かさない)
・LAN端子におけるLED点滅の廃止
・HUB機能の内蔵(途中に余分な機器を介さない)

4.HDD/SSDの振動対策
・フローティングマウント構造

もちろん、当方のような素人ですべての対策を実施できる訳もなく、むしろ実施可能なものは限られている。なお、現在NASに対して実施済みなのは、AC電源フィルター、基板部分に対するDC電源へのノイズフィルター、NASケースに重石を載せただけの防振、というレベルである。追加で可能な策としては、HDDに対するDC電源(SATA電源ライン)へのノイズフィルタ挿入と追加の防振対策程度であろうか。

ところでNAS自体の再生音への影響、改善度合いについてはどのように試聴し、評価すれば良いのだろうか。電源系ノイズ対策をあちこちに実施してきて、いよいよNASが最後のターゲットである。既にある程度改善効果も感じ取れているのであるが、さらに微妙なものになるだろうと予測している。世にはNAS同士の音を比較をした事例やディスクドライブのメーカー(含むHDD/SSD)比較なども行われている。が、実のところ本当に違いを感じ取れるか正直自分の駄耳では心もとない気もしている。

評価基準ということを考えると、それ以前に確認しておかねばならないことに思い当たる。NASというコンポーネントは、自身で音源を保持しないネットワークオーディオ機器においては必須のものである。一方で当方が追求しているPCオーディオ(あるいは一体型ミュージックサーバー)というコンセプトにおいては実はNASは必須ではない。NASの存在による「音源の共有と管理」の恩恵は計り知れないものがあるのだが、一方でそのための必要悪、という存在であるかもしれないのだ。ここをまず音の観点からの切り分けをしてみる必要があるだろうと考えた。つまり音源をNASに置くケースとSATA接続のHDDに置くケースで「差がある」のどうか、をファンレスPCの環境で確認する。PCオーディオの主流においては直接HDDにアクセスした方が(NASよりも)音が良い、という見方も多い。内臓のHDDドライブは外付けのUSB HDDに比しても圧倒的に速度が早いので、そこに大きなメリットがあることは頷けることであるし、NASの場合はNAS自身のCPU処理、HUBの介在、LANケーブルの存在と役者が増えることによるデメリットも全く無いとは云いきれない。この観点はNASを必須のものとして改善を図るべきなのか、NASそのものを排除すべきなのか、という重要なポイントとなるのでまず確認しておきいたいのだ。

(注記)WindowsやMac環境では多くの場合内臓ディスクを使うのでこのことはあまり問題にはならないのだが、VoyageMPDという当方が利用しているLinux OSではこの点が課題になってしまう。VoyageMPDでは機能を大幅に限定し、究極的なシンプル構成となっているため、直接配下となっているHDDに対して他のWindows PCからファイル共有の機能によって音源ファイルを送り込むことができない。このためNASを利用するか外付けUSBディスクを使う方法がスタンダードとなっているのだが、内臓ディスクの環境にしてしまうと音源の更新管理がかなり厄介となってしまうのだ。(今回のテストのような強引?なやり方は通常の運用ではあまり望ましくない)

利便性の検討などは後回しとして、とにもかくにも実験のステップとして以下のようにやってみようと考えた。

ステップ1.NAS経由とSATA接続HDDのそれぞれの環境でVoygeMPDの音を確認してみる。

HDDに対するアクセスとしてはSATA接続は高速かつシンプルな構成であるが、一方でPCに内臓した場合は振動、発熱、また高周波ノイズ源になる懸念がある。従って通常のデスクトップPCのような構成は(せっかくファンレスPCを作ったこともあり)避けたい。このポイントを解決しようと思えば、eSATAによる外付けのHDDにすれば良い、という案がまず浮上する。この場合はHDDの電源はPC本体とは別系統にできる。eSATAインターフェースを持っている外付けHDDケースがあれば実験は容易だ。もちろん、SATAケーブルをPCから引っ張り出して直接接続してしまうという野蛮な方法もある。この場合電源もPC側から供給する必要があるが、これは最も容易に実験が可能な構成なので、この方法でやってみることとした。

剥き出しのHDDを重石載せでPCに直付け(何とも野蛮!):

なお当方の音源管理の方法であるが、NASに入っている音源用HDDはデスクトップPC内臓の音源用HDDの全くのクローンとしており、万が一のバックアップも兼ねている。このマスターであるHDDをデスクトップPCから取り出し、VoyageMPD用のファンレスPCにSATAで接続する。HDD自体の接続はSATAケーブルを引っ張り出し(音質的には好ましくないが)写真のようにファンレスPCの上に置く。VoyageMPDは「NASHDD」という名称のマウントポイントにおかれた音源を見に行くような設定になっているので、コマンドによって、このSATA接続されたHDDをNASHDDとして手動でマウントしてしまえば良い訳だ。
(従って、mpdをストップ、NASをアンマウント、SATA HDDをマウント、mpdをリスタート、という一連のコマンドをSSH接続したノートPC経由で投入すれば簡単に音源の切り替えができる)

NASとSATA接続HDDをコマンドで切り替えながら比較試聴:

比較をなるべく厳密に行うため、音源はDSD(ファイルサイズが大きいので何らかの差が出易いかも?という理屈)とし、ボリューム固定、リスニングポイントに座った状態で上記のコマンドを打ち、NASとSATA HDDを切り替えながら比較する。音源はMozartのバイオリンコンチェルト(無料ダウンロードのもので結構あちこちで聴くポピュラーな音源)。面白いことにやはり差(ま、微妙と云えば微妙ではあるが)はある。SATA接続HDDの方が「おとなしい」のだ。その分、楽器の質感、演奏の気配がより感じられる。NASの方はやや押し出しが強く、元気な感じ。比すれば僅かに音楽の持つ漂うような気持ち良さが薄れるかも。この程度はもしかしたら好みの範疇かもしれないなとは思うが、この気配感はクラッシック音楽を聴く上では好ましいと当方は判断し、こちらの音を今後の比較のための「標準原器」としておく。NASでこのような音楽表現になれば「結果良くなった」と判断しよう(ちょっと独善的ではあるが)。

(注記)DLNAを使用して外部の音源ファイルにアクセスする方式のネットワークオーディオ機器においてはこのような直接接続の構成は取れない。また、NAS+プレーヤ機能を持つ機器の場合、実際にどのようにディスクドライブにアクセスしているのかは不明。DELAもfidataも内部を見る限りドライブ自体はSATA接続されている。ただし、プレーヤ部からNASに対してはDLNAベースでアクセスしているようにも推測される。これは、当然NASの機能だけが単体としても使用できるという条件があるので当然かもしれないが、実際のところは不明。

ステップ2.NASへの(追加の)対策

先に述べたように、当方のような素人でNASについて行える対策は限られてしまい、当面出来ることは以下の2点である。
(1)ディスクドライブへのSATA電源線にノイズフィルターを入れる。
(2)搭載されているHDDへ振動対策を行ってみる。

なお、HDDをNASのケースに内臓したままでは(2)の振動対策は実施できにくい内容である。従い、HDDをNASから取り出してしまい、SATA延長ケーブルで接続するスタイルにして、その上でHDDに対する振動対策を行うという方法になる。この時にSATA延長ケーブルの電源線にファインメットを噛ませるという加工で(1)のノイズフィルタ挿入を行う。

へまをしてしまったSATA延長ケーブル(泣):

さて、順調に(?)SATAケーブルへのノイズフィルタ加工が終わったところで、あれれっ! である。何とこの延長ケーブルは端子がオス、オスではないか。これではHDD側には挿せない。全くのうっかりミスである。しかも作業が終わるまで気が付かないとは、、、当然多少(かなり?)落ち込んではいるものの急ぎオス、メスのケーブルを発注したのだが実験継続は到着までお預けとなってしまった。

ところで、HDDについてはフローティングによる免震という方法ではなく、リジットにして振動そのものをマスで抑え込むという制振をやってみたいと思う。ケースの外に出してしまえば完璧ではないにしても何とかなるかもしれないと考えている。本当は大きな重量を持つ銅の塊みたいなものでHDDを挟み込んでみたいのだが、ちょっと入手方法が見当たらなくて思案中。当面は使用している真鍮の重しで実験してみようかと考えている。


next index back top