オーディオ日記 第36章 歩き来た道の果て(その8) 2015年11月17日


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4wayの設定がほぼ完了(一応であるが)となったこともあってこのところ聴くことに専念している。また、DSD音源を聴く割合も増えてきた。DSDは平均して録音の良いものが多くまたムラも少ないので、安心して音楽に浸っていられる。音源自体も徐々に増えてきたこともあり改めてDSD周りの再生をいろいろと比較研究してみた。(出力側が纏まってくると、今度は入力側を何とかしたくなる? という行ったり来たりの一環だとは思うが、、、)

以前はDSD音源に対してはAudioGate、BugHeadなどの音楽再生アプリでPCM176.4KHz/24bitにダウンコンバートしたものをデジチャンに入力するというスタイルであったが、最近はUSB DDC/DACにて2.8MHzを11.2MHzへアップコンバートし、アナログ変換したものをデジチャンに入力するスタイルで落ち着いてきている。これは実のところ、常用しているVoyageMPDにおいてはDSD音源をPCM176.4KHz/24bitにダウンコンバートした音がイマイチの感が拭えずにいることの理由が大きい。11.2MHzへアップコンバートしたは音楽の雰囲気が少しふわっとしてくるが、PCMへダウンコンバートしたものは何かちょっと硬質感が残るのだ。

ただ、このPCMへのダウンコンバートはすべてがこのような傾向ではなく、AudioGateやBugHead、JRMCなどWindows環境の場合はこの硬質感はそれほど顕著ではない。つまるところ微妙にVoyageMPDがビハインドしているのだ。VoyageMPDにてPCMにダウンコンバートしたものはとても不思議なのだが、美味しく感じない。やや硬質な感じが加わってしまうせいか音楽が気持ち良くないのだ。いろいろと設定なども調べてトライして若干の改善はみたが納得の音には至っていない。さりとて、AudioGateなどWindows環境とタブレット端末での選曲、再生操作との相性は決して良くないのでこちらの環境でずっと聴くにはややストレスが溜まってしまうし、何より音源の種類によってOSの切り替えのためにPCを再起動しなければならない、というのは煩雑で実用的ではない。

VoyageMPDにおける(タブレット端末からの楽チンな)操作性をキープしたまま、もうちょっと改善できぬものかと思案してみれば、USB DDC/DACにてD/A変換した音(アナログ)をデジチャン入力するスタイルという原点がある。PCMへのダウンコンバートをせずDSD Nativeで聴く本来の方法に加えて、当方のUSB DDC/DACは2.8MHzDSD信号を11.2MHzまでアップコンバートできるので、このレートに上げD/A変換させて、デジチャンにアナログ入力した音をじっくりと聴いてみると、こちらの方が自然な感じで、音楽としてほっとするような表情に変わる。この両者の比較においてはUSB DDC/DACにてD/A変換し、デジチャンにアナログ入力した方が好ましいように感じている。これはVoyageMPDにおけるDSDtoPCMのダウンコンバート処理あるいはサンプルレート変換に根本的な音質の問題があるということなのだろうか?付け加えるならば、11.2MHzまでアップコンバートした方が2.8MHzの音源のままよりも音楽が若干ながらより自然になる。

アナログ再生においては、デジチャンにはPhono Equalizerからのアナログ信号入力を入力する方式と事前にA/D変換を行いPCM信号のデジタル入力を行う二通りの方法があるのだが、我が家におけるA/D変換経路は機器がBehringer DEQ2496という廉価なものしかないため、現状は前者のアナログ入力の方式に元から軍配が上がっているのだが、これで聴くアナログ再生には実はそれほど不満がないのだ。(いずれもっと音質にこだわったA/Dコンバータを試してみたいとは思っている)DSDとアナログの相似性についてインパルス応答などの観点からある種双方に通じるような「何か一致する部分」があるのかもしれない。ただ、技術的な観点から厳密に語ることは当方の知識では難しいのだが。

(注記)USB DDC/DACに関して:
我が家のUSB DDC/DACの場合、DDCからDACへの信号は筐体内におけるI2S接続であるので、DDCにてS/PDIF信号に一旦変換して外部にあるデジチャンに送る構成との比較においては、前者の方が信号処理におけるシンプルさのアドバンテージがあるのかもしれない。デジチャンでは内臓のA/Dコンバータによって一律に176.4KHz/24bitへしているので、ADCチップの性能にも依存すると思うが、質的ダウンは小さく、またDACからのボリュームを介在させていないアナログ信号をそのまま入力してA/D変換していることなどが多少なりとも関係するだろうか。

従来、デジチャンはデジタル入力で使用すべき、と拘ってきているのだが、アナログディスク再生の場合はこの点は如何ともしがたい。一方で、DSD再生においては敢えてPCM信号へ変換させてきたのだが、現状の環境と音から考えると、このスタイルは一旦やめてしまっても良いかもしれないと考えが変わってきた。繊細さやふわっとした感じがVoyageMPDによるPCMダウンコンバートでは失われてしまう感じがするので、それはやはり致命的なポイントとして考えねばなるまい。

一方で、DSD音源についてアナログ入力で聴こうとすると、実のところ別の課題も出てきてしまう。PCM音源とDSD音源を混在して聴くことが難しくなるのだ。デジチャンのアナログ・デジタル入力切替を音源(DSD、PCM)に合わせてその都度行わねばならなくなってしまう。音と操作性を両立させることがなかなか難しく、この点は何とももどかしくとても悩ましい状況になってしまうのだ。

USB DDC/DACはまたPCMtoDSD機能も持っているので、この機能を使用して「すべてアナログ入力」にしてしまうという選択肢も残ってはいる。以前にPCM(44.1KHz/16bit)をDSD変換し、さらに5.6MHzへアップコンバートした上でD/A変換し、デジチャンにアナログ入力するというテスト(KORG DS-DAC-10ベースにて)をいろいろ行ってみたのだが、その時点での評価はPCM信号のまま(サンプルレート変換もせずに)デジチャン入力させる方法が多少差を付けて優っていた経緯がある。このあたりを再挑戦してみようかと。

今般、4way構成用のマルチチャネルマスターボリュームが入手できたこともあってやっと4wayが現用にて定着できる状況になったのだが、このマスターボリュームはL-PAD型のパッシブタイプのものでシンプルな構成故かそこそこ鮮度感の良い音が聴けている。プリアンプ等で絞った音をデジチャンに入れるのではなく、デジチャンのDACの後段にて音量を調整するという構成のアドバンテージはA/Dコンバータをフルスィングさせるという意味で間違いなくあると思う。さらに現状はデジチャンで出力レベルの調整・減衰は行わず、すべてパワーアンプ周りでレベル調整を行っている点(デジタル絞りは不使用)もポイントだと考えている。

この落ち着いてきた構成で改めてCDからリッピングした音源に対してPCMtoDSDの音をじっくりと再評価してみた。基本的にPCMtoDSD変換に加えてすべて11.2MHzへアップコンバートする方式である。対象音源は思案の後にやはり普段聴くことの多い44.1KHz/16bitのモーツアルトを中心としたもので試す。11.2MHzへアップコンバートしている効果なのか案外雰囲気が良い。リスニングポジションを従来位置から1m程度後方にずらしたこととも関係あるかもしれないが、PCMのままとの差は以前ほどは感じ取れない。音の切れや透明感でもこれはちょっと、というような大きなマイナスファクターの感触はない。むしろ滑らかで音楽が優しくなるようにも感じる部分もある。うむむ、、、、うむむ、、、だ。

造詣のカチッとした感じはPCMのままが良いようにも聴こえるが、PCMtoDSDの音もリラックスできて決して侮れない。心理的には多少の期待値が先行していることもあり、いろいろな要素やその日の気分、ちょっと変えたことによる目先の新鮮さ、などなどいろいろな要因があるのでこの感触が確かなものかどうかは微妙なのであるが、あ~これはもういいや、という風には現時点ではならなかった。正直なところ、(予想に反して)案外良い、という感じなので、このスタイルでもう少し聴き続けてみようと思う。両者の音源を取り混ぜてランダム選曲にて聴く場合であればこの方式のメリットは大きい。DSD音源、PCM音源を混在させて聴ける、というアドバンテージはやはりありがたいものがある。

いずれにしても音量調節はアナログ入力であってもデジタルの場合でもデジチャンの後段でマスターボリュームによって行うということは基本方針なのだが、アナログディスの再生の場合はちょっと状況が変わる。Phono Equalizerからの出力をそのままデジチャンにアナログ入力した場合はDACからのアナログ入力と比較して信号レベルが随分と低いのだ。過去のいろいろな実験の結果からもA/Dコンバータをフルスィングさせるということが望ましいので、Phono Equalizerからの出力レベルは少し上げて使いたい。これを解決する方法はプリアンプで増幅(ボリュームを経由したアナログ信号を使う)すること。ボリュームを介在させることの是非は必ずあるのだが、実際には減衰ではなく増幅となるので、その影響はミニマイズできるだろうか。このあたりも今後の課題でもあるので、さらにこちらも比較実験など進めていきたいと思う。


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