オーディオ日記 第36章 歩き来た道の果て(その2) 2015年 9月25日


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女性ボーカルの最高の再生を目指して夢を見続けている。人間は当然ながら人の声に対する識別能力は非常に高く、納得のボーカル再生ができればオーディオは完結するかも、とも思う。それが容易ではないことを百も承知しているが、それでも夢見ざるを得ないのだ。どうやったらそれを実現できるのか?まだその道筋が見えているとは云えない。オーディオ的な要求と自然さのバランスがとても難しいと感じている。

声の帯域をどのように受け持たせるか、また受け持つユニットの選択がひとつの解となり得るかもしれないとも考え、3wayから4wayへのチャレンジを行ってきた。我が家の3wayは15インチウーファーとホーンドライバーが基本であるため500~800Hz辺りがクロスオーバー周波数となる。人間の声(特に女性ボーカル)の中心となるところにクロスオーバーポイントを持って来ざるを得ないのだが、そこにひとつの課題がありはしないかと思う。そのため、声の帯域を中心に受け持たせる目的で中低域用のユニットとしてFPSを導入し試行錯誤を続けてきた。現在のところ4wayはマスターボリュームの問題もあって一旦お休みしているのであるが、適切なミッドレンジユニットでこの帯域をカバーできれば3wayもありかな、と考えてきた。

以前より声の再生についてATCのミッドレンジユニットを評価してきたのだが、このところ ケンさん 宅で聴かせていただくことも多く、また、 grigriさん 宅でもこのユニットでお気に入りのボーカルを随分と聴かせていただいたこともあって、改めて自宅でじっくりと聴いてみたいと考えていた。何とも幸いなことにgrigriさんよりしばらくユニット( ATC SM75-150 )をお借りできることとなったので狂喜乱舞して3way構成にて試し始めている。

このユニットのスペック的には380Hz~3800Hz辺りが受け持ち帯域だと思うが、我が家ではデジチャンのクロスオーバー周波数の設定上の制約もあって400Hz~3550Hzでまず聴いてみることとした。この帯域であれば女性ボーカルの基音の大部分と一次倍音をすべてカバーしているので、先の課題の解決策にはなりうると考えている。タイムアライメントと周波数レスポンス、位相合わせ等はOmni Micで随分とトライして来た経緯もあるのですんなりと纏まった。この辺りの設定の柔軟さはデジチャンの独壇場だと思うし、使い慣れた測定ツールがあってこそだと思う。単体での測定では1KHz~1.5KHz辺りに若干の山がある(これがこのミッドレンジユニットの音の個性にもなっていると思うが)が、概ね受け持ち帯域内では平坦である。

お借りしたATC SM75-150:


ざくっと調整したところで、逸る心を抑えつつお気に入りのいつもの女性ボーカルを聴き始める。声の温度感や充実感はやはり特筆ものだと思う。浸透力のある音、やや暗い音色との巷での評価もあるが、確かに当たっている点もありそう。情感が濃く密度感のある声がストーレートに飛んでくるのだが、それがとても気持ち良い。解像度やS/Nも申し分無く、こまやかな表現にも長けている。まさに女性ボーカルに包まれるという感じだろうか。次々とお気に入りの歌手、歌を選択してはプレイバックする。いいね~、気持ちいいね~と一人悦に入る。

ATC SM75-150による3way構成:


しからばFPSによる3wayとの比較ではどうか、と聴き比べる。FPSは現在は280Hz ~3550Hzで調整した3wayになっているので、ほぼ同じ帯域と云ってよいであろう。FPSは周波数特性が極めてフラットであり、出音にもそれが明確に感じられる。声には芯があって非常に自然なのだ。ある意味どんなジャンルの音楽に対しても万能とも云えるのだが、逆に強い個性は持っていないのでその点が物足りなく感じるのかもしれないな、と思う。

FPSによる3way構成:


さてここで、ホーンドライバーを使用した3wayとも聴き較べてみた。こちらは変則的な設定であるがミッドの受け持ち帯域は800Hz~4000Hz辺りでこれまでとは大分違う。出音も違う感じがする。ウーファーとホーンにまたがって声が再生されることもあって、音像がやはり大きい。その分声そのものはふわっとしていてこれはこれで気持ち良さもあるし、何よりもしみわたるような中高域の透明感はドライバーの特質と思えて秀逸である。しかしボーカルそのものの胸への刺さり具合は浅いと云わざるを得ない。もっと魂を鷲づかみにするような深い感動が欲しくなるのだ。

SONY SUP-T11による3way構成:


まだまだざっとした調整と限定された音源でしか比較が来ていないのでファイナルな纏めとはならないのだが、微調整しつつしばらくは多様な音楽を聴き比べてみようと思う。いろいろな方向性、可能性が頭の中をぐるぐる回ってしまっているような混沌とした心情であるが、素直にこの女性ボーカルに浸ることができるのであればそれでいいのでは、とも思えてくる。


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