オーディオ日記 第35章 賢者の導き(その11) 2015年 6月13日


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4wayに関してとにかく現状で行けるところまで行こうと、微調整に微調整を重ねた。自然さ柔らかさと切れの良さという二律背反とも思えるような要求を完全に満たしているかどうかは微妙なのであるが、概ね納得できる音になってきたように思う。ベリリウムツィータのエージングもほぼ完了したかと思われ、浸透力のある素晴らしい高域の表現をしてくれている。当方の好きなモーツアルトの弦楽四重奏など弦の味わいが柔らかくもきりっとしておりなかなか心地良い。現状のシステム構成ではこれがファイナルな音ではないか、とも思う。4way設定での途中経過に比すれば音楽にちゃんと集中できるようになった気もするのだ。ただ、結果としてこの4wayのセッティングは当初目論んでいたものとはやはり随分と異なる。これで本当にファイナルとなるのか未だ自分でも判らないが、この状態でとことん聴き込んで行こうと思う。一応どんなジャンルの音楽でも対応できていると思うし、ハイレゾ音源の雰囲気の良さも充分に堪能できるので、これから先のブラッシュアップについては改めて別の角度からアプローチしてみようか、という考えも浮かんでくる。

現在の4way構成のクロスオーバー周波数(スロープ特性は一律に-12dB/oct):
低域   ~355Hz
中低域  355~1000Hz
中高域  1000~3550Hz
高域   3550Hz~

また、禁断の(?)3wayとの比較も行いつつ、3way構成にも若干の手を加えた。なお、3wayに関しては二つのパターンで対応している。ひとつは従来通りウーファー+ホーン+ツィータという構成、もうひとつはウーファー+FPS+ツィータ(ホーンは使用しない)という構成である。前者はジャズやピアノ系で今ひとつの「押し」が欲しい時に。後者はホーンドライバー用のA級アンプを使用しない構成なのでこれからの季節向き(?)に発熱対策として。音も相応にすっきり感があってBGM的に聴く時など重宝している。

さて、別の角度とは、今まで後回しにしてきたルームチューニングである。本来むしろこちらが先なのかもしれないのだが、転居後はシステム構成変更が中心になってしまって疎かにしてきた経緯がある。これに改めて取り組んでみたいと考えているのだが、根本的な部屋の形状や天井高という課題からは逃れられない。その中で、何をポイントにして対応していくのか、ある程度絞り込んだ上で進める必要があると考えている。

はっきりしている課題の一番は定在波による80Hzを中心とした低域の量感不足である。もうひとつは天井高が低いことによるせいなのか不明であるが若干ながら音の飽和感が感じられること。前者はイコライザなども含めてシステム側での対応を試みたがいずれも納得の対応とはならなかった。やはりイコライザではピークを潰すことには効果があっても、ディップを補うのは相当難しいとの結論に至っている。また低域に関してはリスニングポジションの部屋の中での相対的な位置もかなり影響するようで、従来定位置としてきたポイントから多少大胆に動かしながら、より影響の少ないポイントを模索している。もちろん、リスニングポイントはその他の諸条件(部屋の形状、スピーカからの距離、その他の家具との関係)との兼ね合いから全くフリーという訳にはいかないので、多少の妥協は残らざるを得ない。現状は従来の位置より80cm程度後ろにしてみているが、スピーカからの距離は遠くなるにも係わらず聴感上の低域は比較的良い塩梅に思える。今までのポジションが部屋のセンター位置に近いこともあって、低域の定在波の影響が若干大きい場所であったかもしれないと反省している。

また後者は設定の追い込みによって随分と改善されたとは思うが、部屋の影響からは逃れられないと思う。この辺りをルームチューニングによって多少でも、良く出来ないだろうか。もちろん住居環境が集合住宅なので、大音量は出せない前提・制約の中で方策を模索しなければならない。石井式の専用リスニングルームは実体験を通じて相当良いと感じるし、できれば欲しいとも思うが、現状では無いものねだりになってしまうので前提をそこに置くことはできない。

遮音を含めた大掛かりな工事、という手もあるのだがこれも家族の了解を得難いだろうな~と少し躊躇している。となるとやはり「整音」を中心とした各種パネル類などが候補になるのであろうか。この辺り当方はあまり詳しくないのだが以下のようなものが思い付く。このうち自宅にて試したことのあるのはヤマハの音調パネルのみでその効果の認識や使い方に関しての経験値は乏しい。

QRD
サーロジック
AGS
ヤマハ

音響空間に対する勉強は初歩から始めねばならないと思っているが、まずは究極的とも思えるリスニングルームの経験も必要と思い、比較的近所にあるのだが今まで訪問したことはなかった AGSのラボ を訪れてみた。部屋の広さ、天井の高さ、ぐるっと取り囲んでいるAGS群、ズラッと並んでいるハイエンドオーディオ機器、と我が家の環境とは較べるべくもないのだが、、、部屋に入ってすぐに感じるのは「空気感」の違いである。これはいくつか訪問経験のある録音スタジオとは少し違っているように感じた。当方の経験のある録音スタジオでは音の静寂さにまず気付かされるが、その静寂さは何か不自然な感じも伴うのだ。しかし、ここではそのような違和感はあまりない。静けさと快適さが同居しているような空間なのだ。従って会話の際のお互いの声のやりとりも明瞭でスムーズに感じる。

パターンに沿ってAGS効果説明および比較試聴を終えた後、当方の持参したテストソースをじっくりと聴かせていただいた。「濃密な表現」とでも云えばいいのだろうか。自然な静寂のなかから浮かび上がってくる音楽が濃い。絶対的な空間の大きさ、天井の高さの貢献も大きいと思うが、音の伸びに関してAGSの拡散効果もしっかりと感じられた。ボーカル(Eva CassidyのFields of Gold)は格別に素晴らしく、感極まる。またEnyaのOiche Chiuinでは待機していた方も「ぞくぞくっと来ました」と。これらののボーカルは試聴スピーカーに使用されている大口径の ソフトドームミッドレンジユニット の恩恵も相当あると思うが、やはりこういう音を自宅でも出さなければ、と改めて痛感する。そこそこの調整ができた、などと自己満足していては駄目なのだと思い知らされる。

とは云え、このような音響空間の構築は相当にハードルが高い。小手先のルームチューニングで実現し得るはずもない。再度専用のリスニングルームを作る、ということは敢えて一軒家からの断捨離を行って来た経緯もあるので再度煩悩に我が身を置くことにもなりかねない、、、、

一方でルームチューニングにきちんと取り組まねばならないということも強く認識できた。しかしながら、何をどこまでやるかいうことは全く見えておらず手探り状態にある。オーディオを訪ね歩く道の行き着く先はやはり姿を現してはくれないのだ。


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