オーディオ日記 第35章 賢者の導き(その10) 2015年 5月30日


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不調だった高域用アンプも復帰して来たので、改めて4way構成の設定をWavelet Spectrogramにて確認しつつ弄ってみた。

今まではは各ユニットの個性を見極めるためスロープ特性を-48dB/octとしていたのだが、音の溶け合いや押し出しも欲しいので、この再調整に際しては-12dB/octに統一して出音を探ってみた。これに伴い、クロスオーバー周波数も多少変更することとなった。落ち着いたところは

低域   ~355Hz
中低域  355~1250Hz
中高域  1250~3550Hz
高域   3550Hz~

というクロスオーバー周波数のセッティングである。少し音が薄く感じていただところも大分充実した感じで、結果としてそこそこ纏まったように自分では思うのだが、これで合格ということになかなかならない。

いろいろな方々の素晴らしい音を聴かせていただいた経験・記憶と比すればそれにはとても及ばないとも感じる。当方が求めている音の方向性にはそこそこマッチしていてあまり聴き疲れはせず、総じて大人しい音なのだが、「抜けば玉散る氷の刃」というような時にはっとするような切れ味が足りないのだ。それが自然な音に近いとは必ずしも云えないとも思ってはいるのだが、ある種のオーディオ的な快感もどうしても欲しくなるという我儘を抑えきれない。

この切れ味の鋭さ、というのはセッティングを弄ったところでそう簡単には手に入らないものなのだが、ジャズや女性ボーカルではやはり今以上のものが欲しい。逆にクラシック系の音楽においては時に鮮鋭過ぎることにもなり、現状の「緩さ」の方が良いのかもしれないのだが、その辺りのバランスをどう取るのか、次の課題だと痛切に感じている。

タイムアライメントと高域レスポンスの完璧な調整によって、この二律背反的な要素を多少なりとも実現することはできないだろうか。また、今までは4wayの構成と新しいUSB DACの音をまとめるために、このUSB DACのPCMtoDSDの機能を使わずにPCMのままD/A変換させてきたのだが、PCMtoDSD機能を本格活用しこの課題に関して方向性を見出せないか新たなチャレンジを始めてみた。

我が家のUSB DACでは総じてPCMのままD/A変換させた音はかっちりとしていて緩みは少ない。一方、PCMtoDSDへアップコンバート(レートは11.2MHz)し、D/A変換した音は肌触りというか表情が心持ち柔らかくなるように感じている。そこで改めて、PCMtoDSDの音を基準としてクラシック系の設定の微調整(主に中高域、高域のレベル調整)を行ってみた。弦や木管楽器系の音楽がいい感じとなったところで、今度はジャズや女性ボーカルを聴く。さらに、PCMtoDSDからPCMのままD/A変換する音に切り替える。う~む、微妙ではあるが、ジャズ、女性ボーカルではPCMのままの方が音の実在感があるようにも感じる。それほど大きな変化という訳ではないので、上記で述べてきたような切れ味が向上したのかどうかまでは定かではない。しかし、音の方向性や輪郭が少し変わることはやはり間違いない。ジャンルによって切り替えて聴く、という選択肢もありそうだ。

ただ、PCMtoDSDという分野に関しては、このような傾向を手元のUSB DACだけで判断してしまうのは危険かもしれない、とも思う。一度聴かせていただいたことのあるChord社のHugoは同社独自のPCMtoDSDのアルゴリズムを持っているのだが、出てくる音は明晰・鮮明であった。HugoはすべてPCMtoDSD変換してしまうので切り替えて比較することはできず、一般論としてPCMtoDSDの方が表情が柔らかくなる、とは云えないと思う。この辺りはさらにいろいろな機種を聴いてみる必要があるだろう。Chord社の2QuteというHugoと同じアルゴリズムを持つ据え置き型のUSB DACにも非常に興味があるので、是非聴いてみたいと思う。しかし何故かこの機種、インターネットを検索してもユーザー事例や感想を見つけることができない。Hugoと比してあまり出回っていないのだろうか。また、SONYのHAP-Z1ES(相変わらず良く売れているらしい)は一度試聴しただけなので、もう少しじっくりと聴いてみるべきであろう。こちらはPCMtoDSDの機能オン/オフを選択できるようだし。

現在はデジチャンへのPCMインプット方式を変更し、アナログインプット方式にしている都合上、このPCMtoDSDの可能性を試す良い機会でもあるのでとにかくいろいろと研究してみようと思う。また、手持ちのDSD Native音源があまり多くないということもあるので、DSD NativeとPCMtoDSDの比較のためにも徐々に音源を増やていきたい。PCオーディオではSACD層・CD層の比較とはまた異なる点もあるので、それなりの経験値が必要であろう。現状はDSD Nativeの音源とPCMtoDSDで同じ音源を聴き比べることは、まだダウンサンプリングした実験的なものでしか出来ていないのだが、DSD Native音源の持つ自然さや空気感には明確に優位性があると感じている。だからと云って、44.1KHz/16bit音源がPCMtoDSD変換(これはリアルタイム変換、ファイル変換のどちらであっても)によってDSD Native音源と同様の音になることはない。その点あらぬ幻想を抱かぬことも肝要かもしれない。

少し違う話ではあるが、過去のアナログの名盤をDSD化したものが是非とも欲しいと思うが、実のところこの類はマーケットにあまり多くは存在していない。販売側の諸事情はいろいろとあると思うのだが、SACD以上に選択肢は限定されている。世はハイレゾを謳っているのだが、DSD Nativeともなるとまだまだ一般的とは云えないし、音質に関してそこまでを望む顧客はやはり少ないのだろうか。この点、どんどん拡大されていくことを望みたい。

本題に戻る。いったいどうすれば今以上の切れ味の音を我がシステムで出せるか? 実のところ、手のつけられそうなところはそこそこ対応してきた。ユニットも更新した。タイムアライメントもまあまあ何とか揃ったと思う。上流のPC周りの電源やUSB DACも整備した。従って、普通の音は出る。しかし、普通すぎて、思わずのけぞってしまうような音はここでは聴けない。音源そのものにも多少は依存することはあると思うのだが、何とももどかしさ感が残っている。この先、どうすればこれを払拭できるのか。思えば、全身が総毛立つような音は、このところ聴けていない。それが聴きたいのだ。そんなこんなで、この先の展望について、しばし悩む今日この頃である。


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