オーディオ日記 第35章 賢者の導き(その7) 2015年 3月19日


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4wayへの移行、そしてその音の纏めに関して、大きな考え違いを犯していた。4wayの設定を微調整していくに際し、3wayとの音を聴き比べながら調整結果を確認しつつ詰めを行っており、あまりそうとは自覚せずに3wayの音を標準原器としていたのだ。ベリリウムツィータやFPSの音についつい浮かれてしまい、目指すべき自分の理想の道を追おうとはしていなかった。

このプロセスで纏めた音は云わば聴き慣れた3wayの相似形でしかない。しかし、それを求めるために4wayへ移行したのではない。3wayの音に飽き足らなかったからこそ、4wayを目指したのではなかったか。心地よく音楽を聴いている時に、突然そう覚醒した。

4wayの音の纏めに試練を覚悟していた割には、すんなりと音がまとまってくれたこともあって、それで良しとしてしまっていたが、これではいけない。この最強とも思えるユニット達を手にして、今の音で満足するなら、「究極のマイベストサウンド」など永久に陽炎のままだ。

ならば、3wayの音、その延長でしかない今の4wayの音を一旦捨てよう、そう決心した。そこからが迷いと試練の始まりだった、、、、

何が自分にとって最良の音なのか、聴き慣れた楽曲を聴き慣れた通りに再現してくれればそれで良いのか。自問を繰り返しながら新たな音を探し始めた。元々4wayを目指した強い動機は、オーディオ的な観点から云えば、

・相応の音量でも音楽が飽和しない
・空間をしっかりと表現できる
・鮮度感及びS/Nの高い音
・補正不要でよりフラットな音

ということである。その上で、音楽が活き活きと、リアリティを持って響かねばならない。難しい命題であることは重々承知している。しかし、そこへ一歩でも近づかなければ4wayを目指した甲斐がない。幸いにも手元に揃ったユニット達は、音の透明度、質感など比類なく優秀である。これを如何にしてそれぞれのポテンシャルを発揮させ、帯域バランスを整えていくか、この命題を改めて自覚してから、毎日かなりの時間、音楽を聴いている。この調整において特性を測定したことでは結果はおそらく得られないと考えている。このため、どういう音ならば自分が満足できるのか、その一点で判断していくしかないのだ。

プロセスとしては、3wayでの音のバランスを一度忘れ、大胆に各帯域のレベルを動かして、出てくる音楽を取り替え、引っ換えしながら、徐々に納得できるポジションへ絞り込んでいく。やはり難しいのは中低域、中高域の相対的なレベル設定である。この二つで音楽の印象が当然ながら相当変化する。なかなかすべての音楽を満足させるようなレベル設定には至ることができない。高域も音楽の表情を多彩に変えるため、楽曲、音楽ジャンルによってなかなかこれだというポイントにはならない。

各ユニットの受け持ち帯域まで合わせて纏めようとすると収拾が付かないので、まずは以下の決め打ちである。

1.LOW    SONY SUP-L11     ~224Hz
2.MID-LOW  FPS          224Hz~900Hz
3.MID-HIGH SONY SUP-T11     900Hz~4KHz
4.HIGH   Scanspeak D2908    4KHz~


悪戦苦闘しながらもまずまずの及第点を与えられると思うところまで大分かかってたどり着いた。なお、微調整はデジタル音源ではなく、アナログ音源で追い込んだ。特に昔から良く聴いてきたボーカル系のアナログディスクで帯域バランスや質感を確認し違和感のある要素をつぶしていったことが多少は功を奏しているかもしれない。

それぞれのユニットの個性はかなり違うと思うのだが、特にどれかが出しゃばるようなこともなく控えめであり、うまく溶け込んでくれているような状態にやっとなってきたのだ。全体として混濁感や歪感がとても少ない上に、楽器や声がかたまってしまうようなことはなく、音の要素が空間に散りばめられていることが手に取るように判るようになってきた。やっとここまで来たのだ、と思う、、、

最近はあまり大きな音量では聴かないのだが、ついつい音量を上げたくなる。また、年とともにあまり聴かなくなってきた迫力系のオーケストラ演奏なども改めて聴き惚れてしまう。オーディオシステムの音が微妙に変化すると、聴く音楽も変わってくるという鉄則もまた真実だと痛感する。

ただし、録音状態についてはかなり明確、克明に提示される。音楽自体の良し悪しで本来は評価すべきなのであるが、どうしても録音そのものにも注目してしまわざるを得ない。録音状態のあまり良くないものを柔らかく包み込んで聴かせてくれるような要素は減少している。また、音の膨満感、ふくらみのようなものも現在辿り着いた設定では少な目なので、やや力感が不足するかと時に感じることもある。胴間声の魅力、というものはここではそれほど表現されないのだ。一方で透明感が高く、高域系の打楽器の音が凛と存在感を持って空間に示される。これは今までには無かった表現で気持ち良い。その意味では多少辛口の音と云えるのかもしれない。

おそらくこの状態ではまだファイナルな設定には至っていないのも知れないと思うが、それでも従来の延長という微温湯から抜け出す足掻きに繋がっているということをポジティブに捉え、心底納得できるものを求めて行こうと思う。


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