オーディオ日記 第35章 賢者の導き(その 1) 2015年 1月13日


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デジタル再生において今ひとつの不満を持ち続け、その改善をいろいろと試行してきたが、抜本的な解決には至らなかった。当然ながら本当の原因が良くわからず対症療法的であったためだとも思う。今般自宅でのオフ会において、その辺りを盟友より明確に指摘していただき、またそれらを改善に向けて試行するための機器までお借りすることができた。まだまだトンネルを抜けたとは云えないが、新たな光明も見えてきたのでその辺りをまとめておきたい。

爾来我が家の音に対する自分なりの不満点は、高域に向かっての抜けがいまひとつであること。それがデジタル音源の再生においてより強く感じられてしまい、それにあわせるかたちで(その不満点を抑えるような)スピーカーセッティングをしてきた。ただし、マルチアンプでいくらクロスオーバー周波数やスロープ特性を工夫したところで、上流に問題があればその抜本的な解決はおぼつかない。

デジタル再生の環境は主としてPC(ならびにシングルボードコンピュータ)とUSB DDCである。今回ご指摘を受けた点は「ジッターが多い」ということ。これは我が家におけるUSB DDCと再生ソフトウエアの組み合わせによるデジタルトランスポート部分の問題である。これを切り分けるために、持ち込んでいただいたUSB DDC(+ルビジウムクロック)とまずは交換してみる。このUSB DDCと組み合わせるため、再生ソフトも変更した。ちょっと環境設定、確認には手間取ったが、さて音出ししてみると「一聴瞭然」である。いままでもやもやっとしていた点がすっと解消される。

デジタル音源の再生において、デジタルトランスポート部分で音が変わる、というのは今日最早誰も疑う人はいないと思うが、はっきりと違う。そして良くなっている。もちろん、これは単にUSB DDCだけではなく、ルビジウムクロックの貢献も大と思うが、それにしても変わる。ルビジウムからのクロック供給をしない構成でもしっかりと改善されている。

我が家のデジタルトランスポート環境は再生ソフトウエアで2倍あるいは4倍のアップサンプリングを行い、JAVS X-DDCを経由するというのが現状の構成である。JAVS X-DDCには専用の外部電源をあてがい、電源線をカットした極力短いUSBケーブルを使用している。にも拘らずである。あれこれと組み合わせ比較して、最終的には再生ソフトウエアでアップサンプリングさせているところに一番のボトルネックがあることもわかった。持ち込んでいただUSB DDCをしばらくお借りできることとなったので、いろいろと実験を継続してみようと思う。

実験中のUSB DDC


高域の抜けはこの部分を変更することによりかなり良くなると思うが、それでも理想に比すればまだまだと感じる点もある。そして、もうひとつの要因はスピーカーセッティングにおけるホーンドライバーの受け持ち帯域が高過ぎるのでは、ということ。上記のデジタルトランスポート部分の課題から、特に弦の再生など何とか高域の違和感を抑えようとしたセッティングになっているため、あまりシャープにしないように試行錯誤してきた末のセッティングなのだ。しかしこれにより、却って高域全体の抜けの悪い感じをひきずってしまうことになっていた。

高域のリボンツィータのクロスオーバー周波数を下方に持ってくると、何となく静けさが失われるような違和感が増すために、あまりクロスオーバーを下げることができず、現状は9KHzとしていた。これは、従来当方はこのリボンツィータの音の性格ではないか、と考えてきた。性能的には5KHzのクロスオーバー(-12dB/Oct)であっても充分使えるユニットなのだが、、、

この点も含めて、さらに高域の抜けの良い再生を目指すために、ツィータユニットをお借りして比較実験してみた。お借りしたツィータユニットはScanspeakのR2904/70009という非常に優秀かつ音の良さにも定評のあるリングラディエータタイプのユニットである。これをリボンツィータ(PT-R9)ととっかえひっかえして比較視聴するのだ。このユニットは2.5KHz~3KHz辺りから使用できるユニットで能率も結構高いのでホーンドライバーと組み合わせるのもそれほど問題にはならなかった。ちょっとあれこれやってみて落ち着いたのは4KHz、-24dB/Octのクロスオーバー周波数。楽器の基音部分まではホーンドライバーで、倍音はScanspeakに任せるというスタイルである。このユニットはソフトドームツィータなので、ホーンドライバーとの間でわずかに音色的な課題はあると思うが、クラシック系のソースの再生は高域の突き抜け感を持ちながらも、やはり弦などは落ち着いていてとても素晴らしい。ホーンドライバーもこの辺りまでの帯域であれば結構穏やかな音である。やはり4インチダイヤフラムなので、いくら高域特性が良いといっても無理をさせないほうがベターなのだろうか。

Scanspek R2904/70009 半球のような極小エンクロージャに収まっている


それでは、ということで、リボンツィータに戻し、高域のクロスオーバーをいろいろといじってみた。先のデジタルトランスポート部分に関する課題はかなり改善が見られているので、リボンツィータのクロスオーバー周波数を5KHz、5.6KHz、6.3KHz、7.1KHzといろいろ変えて試してみた。従来感じていた高域の不満がUSB DDCの交換により減少していることもあってか、この辺りの比較的低い周波数であっても特段の違和感が生じない。これは幸いである。まだ完全には落ち着いていないが、こちらは5.6KHz、-24dB/Octで様子を見ることとした。染み透るような静けさが出てきて、こちらも存外頑張っているように思う。現在、4KHzのクロスオーバー周波数でScanspeakのツィータを、5.6KHzのクロスオーバー周波数でリボンツィータを鳴らせるようにして、適宜切り替えながら音楽を楽しみつつ比較試聴を行っている。高域なのであまり影響は無いように思えても、やはりユニットに個性があることははっきりとわかる。

ツィータ比較視聴風景


今回の一連のご指摘ならびに対応策は、まさに夜の闇に迷う民にとって、真にありがたい賢者の導きであった。深く謝する次第である。

なお、USB DDCに関して、同じブランドの基盤をベースとして新たに製作していただくこととなった。S/PDIFのデジタル出力とPCMtoDSD変換を行った後のアナログ出力の2系統の出力が使えるタイプとなる想定である。自作のできない自分としてはお手数をお掛けしてしまうのは心苦しいのだが、良い音を手にしたいという誘惑には勝てない。


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