オーディオ日記 第34章 ブレークスルー(その16) 2014年12月10日


TOP Audio Topics DIARY PROFILE LINK 掲示板

デジタル音源再生について、我が家でのアナログ再生と肩を並べるべく、足掻いている。デジタル音源をリアルタイムPCMtoDSD変換させて、そのアナログ出力をデジチャンに送り込む試行を行っているが結果は思わしくない。当初はUSB DACのエージング不足も考えられたので、ある程度稼働時間は稼いできたが、この傾向は期待に反してそれほど改善してはくれないのだ。

それがどこに起因しているのかやはり整理しておく必要があると思った。デジチャンで再度A/D変換、D/A変換を行うことがやはりネックなのか、DS-DAC-10自体のDACとしての能力の問題なのか、PCMtoDSD変換ということにそもそも期待し過ぎなのか、その辺りを少し切り分けてみなければ、この先の進路が見えてこないと考えた。

そこで、DS-DAC-10のアナログ出力の後段をプリアンプ、パワーアンプ、サブスピーカー(ELAC BS403)という普通に考えられる基本の組み合わせにしてみた。つまりこれはDACとしての単体の性能をまず確認しておこうというもの。この構成でDS-DAC-10からのアナログ出力の音とPCM出力をデジチャンへデジタル入力する構成(デジチャンでは全帯域出力とし、単なるDACとして機能させる)をシンプルに聴き比べれば、ある程度DAC部分の能力が把握できるではなかろうと考えた。さすれば、どこにボトルネックがあるのか、おおよそ掴めるだろうし、その上で、PCMtoDSD変換のパフォーマンスが確認できれば良いのだが。

比較を厳密にする意味では、送り出しはAudioGateに統一した(BugHead、JAVS X-DDCは使用せず)

ケース1.AudioGatenにて176.4KHz/24bitへアップサンプリングし、DS-DAC-10でD/A変換した音。
(このケースではPCMtoDSD変換を行わず、PCM出力)
ケース2.上記のPCM出力をデジチャンへ入れて、デジチャンでD/A変換した音。
ケース3.AudioGateにてPCMtoDSD変換(2.8MHz)を行い、これをDS-DAC-10にてD/A変換した音。
ケース4.DS-DAC-10からのアナログ出力(PCMtoDSD変換したもの)でデジチャンを経由した音。
(このケースではデジチャンでのA/D変換とD/A変換が余分に行われる)

さて、この比較試聴は一聴瞭然、疑問も懸念も無しでケース2が一番気持ち良く聴ける。ケース1、3、4はダンゴ状態である。つまるところ、DS-DAC-10のDAC機能ではPCMであろうとPCMtoDSDであろうと、それをさらにデジチャンでA/D変換、D/A変換しようとしまいとほとんど関係ない、という驚愕の(あるいは何となく予想された?)結果となった。さらに云えば、ケース1、3、4では音楽を楽しく聴く気分にはなりにくい。

もちろん、USBケーブルの吟味や外部電源などの対応は施していないので、多少割り引いて考えねばならない点もあろうかと思うが、元々のポテンシャルが期待には届かないDAC性能なのだろう。PCオーディオの世界では所謂オーディオ的な価値観とは違う「価格破壊」を相当経験してきたし、本機の評判も結構良かったのである種淡い期待があったのかもしれない。しかし、デジタル信号を「良い音」のアナログ信号に変換するためにはやはりしっかりと物量を投入し、相応のコストが必要な世界なのだろうか。一方で、DSDのアナログ変換はシンプルなフィルターだけのはずなので、そうではないと思うのだが、、、

従い、現時点ではPCMtoDSDのポテンシャルそのものを評価、判断することはとても残念なのであるができなかった。

なお、追加の比較試聴として、DSD音源(2.8MHz)に関しても、

1.DS-DAC-10でのアナログ出力。
2.AudioGateにて176.4HKz/24bitにダウンコンバートし、DS-DAC-10経由PCM信号をデジチャンに入力。
という比較をしてみたが、これもやはり後者の音が良い。これはつまるところ、フォーマット云々ではなくアナログ変換そのものの問題なのだと思う。

多少あがいてみたのだが、結局のところ今回は何の前進にもならなかったようだ。やはりPCMtoDSDという仕組みの力量発揮のためには、PCM信号の状態のままデジチャンで帯域分割などの演算処理を行い、PCM信号のまま各チャネル毎に出力し、これをその後段でチャネル毎にPCMtoDSD変換、さらにD/A変換するという(究極の?)構成が望ましいのかもしれないと思う。もちろん現在はそのような製品は存在せず、基板を集めて自作するしかないので自分にとっては夢物語だが。しかし、そこにおいても「良い音」がDAC(あるいはDSD用のフィルター)で出せなければ、最終的な音楽再生には何のプラスにもならない。

従い、PCMtoDSDの実験を継続するのであれば、本当に音の良いDSD対応のDACを探すことから仕切り直さねばならないと思う。なお、PC上でのPCMtoDSDの演算処理自体はJRiver(あるいはfobbar2000)なども可能なのだが、これらのソフトウエアの場合は、DS-DAC-10のような同一メーカー同士のみの組み合わせという制約もなくDSD再生ができる。

為念VoyameMPDなどLinux系でもDS-DAC-10を評価しようと思ったが、いずれもデバイスとして認識されない。これは標準的なUSB Audio Class 2.0をサポートしていないということであるので、もうひとつ残念な点が加わってしまった。(AudioGateとDS-DAC-10のDSD出力設定等の簡便さは充分評価できるのだが)

DSD周りについてさらにチャレンジを続けるのであれば、相応のDSD対応DACをしっかりと吟味、準備した上でなければだめだ、とほろ苦く痛感した次第なのだが、ならば中途半端はことをせず(費用にもこだわらなければ)、 Accuphase DC-37 を試してみるか?との想いに至る。JRiverとDC-37の組み合わせであれば、PC側でPCMtoDSD変換を行う。ただし、気楽に購入できる価格ではないので、これにはちょっと勇気がいるのだが。その他には PS Audio DSDAC も候補となり、こちらの場合は内臓のFPGAでDSD変換を行ってくれるので、なかなか良さげなのだが現時点ではまだ情報が少ない。

意気消沈ばかりしていても仕方ないので、昨日は改めてアナログ三昧を決め込み、さらに勢いで同一音源のアナログ、デジタル音源の比較もまたまた行った。やはり声が一番判り易いので、昔から良く聴いてきた音源とした。

何なのだろうか、、、、やはり違う。アナログの音楽には「魂を揺さぶる」ような何かがある。気持ちが音楽に入り込み、すっと感動できるのだ。我が家のアナログ再生の装置は相当の年期を経たものであるし、そもそもがせいぜい中級機というレベルであるにも係わらず、だ。デジタル音源の再生においては自分なり工夫、研究を重ねてきたつもりであるが、それでもまだまだであることを改めて痛感してしまう。CDからリッピングしたデジタル音源に対して、アナログを「標準原器」として比較してしまうことがそもそも間違いなのだろうか。

同一音源で比較したLP3枚(昔から良く聴いてきたもの):

中島みゆき、寒水魚から歌姫、臨月から夜曲:


中村雅俊、メモリアルからふれあい:


next index back top