オーディオ日記 第34章 ブレークスルー(その5) 2014年3月28日


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Accutonのスピーカーユニットを4way構成におけるミッドロー領域担当として引き続き試している。200~800Hzでテストを開始、その後180~710Hzと少し下げてみたがいろいろなジャンルの楽曲を聴き比べた結果ではやはり少し低域部分に無理がありそうで、逆に250~900Hzと心持ち上の帯域に変更してみた。当初想定していた設定よりは若干高い領域となったが、ユニットの口径が13cmであることから低い方の受持ち帯域はあまり無理をさせない方が低域全体がスムーズとなり、量感についても好ましくなるように感じた。

この設定でも、やはり最初に受けた音のインプレッションは変わらない。全体に明るくて少し帯域を変えたことによって力強さも出てきて鮮度感が素晴らしいのだ。また音の広がりと緻密さがうまくマッチしており、音のヌケも申し分ない。滞った感じは一切しないのでとても気持ち良く感じる。なお、全体のバランスはやはりこのAccutonの音に染められるような感じもするが、比較で言えばやはり日本のユニットの所以であるのかSonyのユニットの方が総じて控えめでおとなしい。これはもう微妙な好みの世界であろうし、ならばこの世界を素直に楽しめば良いとも思う。また、このAccutonのユニットの音色にて全体の統一感をより出そうとすれば、ドライバーとリボンツィータとの高域のクロスオーバー周波数も敢えて変更した方がベターであった。従来は14KHzのクロスオーバー周波数でリボンツィータを使用していたのであるが、これを10KHzまで下げてみると、トータルな音のイメージがより明確になるのだ。非常に透明度が高くて清冽な印象だ。

ここまで来たのなら、むしろAccutonサウンドに染まってしまえ、とばかり受持ち帯域をさらに280~1000Hzに変えてみた。下側のクロスオーバー周波数をここまで上げるとSonyのウーファーの下支えが効果的で低域の量感、安定感が出てくるようだ。また、上側のクロスオーバー周波数を1000Hzにしたことによりボーカルなどの基音はほぼAccutonのユニットがカバーすることになる。それに起因するものなのか、音色の統一感が増す。このユニットの性格を最大限に活かすのであれば、この辺りの設定で決まりかもしれない。280~1000Hzというのは4wayスピーカーの代表例であるかのJBL4344のミッドロー領域に近い設定であるが、確かに納得のものがある。

一方でこのような傾向に因るものと思うが、ソースとの相性も確かにある。クラシック系ではまったり感で聴かせるよりもすっきり感の表現が得意のようだ。従って居眠りしながらモーツアルト、というのとは少し目指す方向が違ってくるかもしれない。しかし、同じモーツアルトであっても弦のディベルティメントのような浮き浮きとした明るさのある楽曲は素晴らしいし、ピアノ協奏曲などのアレグロ楽章はまさにこの音楽の愉悦そのものである。その分木管楽器の音色などやや暗めの音の表現は浅くなる。もちろん敢えて暗い響きを求めている訳ではないが、この音の表現には僅かに眩しさも伴う。

意外に思ったのは、この構成で70年代の日本のフォーク、ポップスがとても新鮮に聴けるのだ。鮮度感が向上することに関係があると思うのだが、さだまさし、井上陽水、小椋圭、南こうせつ、など改めて彼らの声の良さ、歌のうまさ、曲の良さを実感した次第。久々に家内と一緒にこの手の音楽を聴いたが、及第点をもらった。また女性ボーカルではチェリッシュの声が昔からとても好きなのだが、この声の表現がとても魅力的だった。う~ん、面白い。逆に云えば洋物女性ボーカルの艶っぽいスローバラードなどはちょっと色気が足りないかなぁ、という感じにはなる。Sonyのユニットの大きな特長のひとつはボーカルの再現力と思っているのだが、Accutonのユニットによって表現されるこのチャーミングで清楚な声はまた別の魅力である。

さて、これは総合的にはどう評価すべきなのか、少し苦慮している。常にこのAccutonを加えた4way構成で聴くとすれば、当方の求める「枯淡の境地」には至らない。ただ、もしかしたらそれは現状の3way構成であらかた実現できてしまっているものかもしれない。一方でこの4way構成の音も新鮮で楽しく、捨てがたい。先に試したFlat Panel Speakerは現状の3wayを発展させた先にある音と感じたが、Accutonユニットでの4way構成は、今までとは「異なる世界」を垣間見させてくれる音なのだ。そしてストライクゾーンの音源では魔力のような透明感と鮮度感で魅了してくるのだ。ならば、3wayと4wayを今実験しているようにジャンルや楽曲において使い分ける、ということも考えるべきこととなろう。本来的にはこのような使い分けを必要とするシステムは望みではない。しかし、人間とは欲深くかつ贅沢になるようにできているのかも知れない。少し肌触りの異なるこの二つの表現が何とも欲しくなってしまうのだ。しっとりしたい時、明るい気分で楽しみたい時、それほど自分の日々の明暗がはっきりしている訳ではないのだが、

なお、4way構成の試行においては、8chのマスターボリュームが用意できないため、6chと2chの音量調節を組み合わて音量レベルのバランスをとる暫定構成としている。音量バランスを取った後は6ch、2chの両方のボリュームを固定してしまうので。 このため、リスニング時に音量の加減操作を自由に行うためにはデジタルボリューム(PC上のソフトウエアボリューム)を使用せざるを得ないのだが、ここに少し課題がある。44.1KHz/16bitのままこのデジタルボリュームを使うと音質の劣化が大きく、やはりこれは避けなければならないと感じている。当方は聴き込む際はBug Headというソフトウエアで176.4KHz/24bitへアップサンプリングを行い、24bit前提での音量調整を行っており、これであればほぼ問題ない。しかし、BGM的に聴きたい時はiPodなどからのリモコン操作による使い勝手の良さからVoyageMPDを使用しているのだが、このVoyageMPDの稼働環境はALIX3D2という非力なCPUを持つシングルボードコンピュータであるため176.4KHz/24bitへアップサンプリングさせるだけのCPUパワーがない。従って、VoyageMPDでは44.1KHz/16bit音源はアップサンプリングさせることなくそのままとせざるを得ないのだが、Bug Headにより176.4KHz/24bitへアップサンプリングしたものと比較すればやはり音質の差が感じられてしまうのだ。デジタルボリューム(PC上のソフトウエアボリューム)を使わない場合は、現実的には6chボリュームを操作して3way構成の音しか音量調節できないのだ。この辺りは大変もどかしい。並行的であっても4way構成を聴くのであればやはり8chのマスターボリュームが必須なのだ。ユニット探しだけでなく、この点も何とかしなければならない。


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