オーディオ日記 第32章 夢の通り道(その7) 2013年3月4日


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いろいろな葛藤がありながらも、徐々に音の出口側のチューニングが纏まってきたように思う。転居から始まり、エンクロージャ、ホーンの交換、デジタルチャネルデバイダへの移行、など比較的大きな変更があったが、何とか形になってきたようだ。

さて、こうなると更に更に、と考えたくなるのが趣味の世界の業なのか、自分の悲しい性なのか。それはともかくとして、今度は最上流となる音の入り口まで遡ってのチャンレンジをしてみようと思った。CDプレーヤからPCオーディオに移行して久しいが、このままで良いのか、あるいは異なるアプローチが必要なのか、確かめてみようと思った次第である。SDカード等を使用したメモリーカードプレーヤについてはQA550等でそのアドバンテージは重々承知しているが、大量の楽曲を楽チンに、かつ利便性を損なわずに聴きたいので、ターゲットは結局ネットワークオーディオプレーヤとなる。この領域は最近では製品の選択肢も多くなり、数万のものから数百万という価格レンジに広がっている。つらつら考えてみて、やはり条件となる点は最高と思える音質、デジタルトランスポート形式(DACは不要なので)、iPOD等のリモコンソフトの操作性が良いこと、辺りだろうか。LINN DSはACCURATE、MAJIKを既に聞いている。KLIMAXは価格から考えても、またデジタル出力がないこともあって(幸いにも?)選択肢にはならない。あれこれ考えた結果のターゲットが SFORZATO DST-01 である。さてこれが、PCオーディオ(我が家の場合は、シングルボードコンピュータALIX3D2環境のVoyageMPDとWindowsXP環境のAudioGateの2系統である)とどう勝負してくれるか。DST-01はやはり高額の製品なので、えいやっと購入も出来ないので、まずは試聴機をお借りしてのテストとなる。試聴機が到着したところでとにかく驚いたのはその重さである。本体と電源部に筺体が分かれており、さらにその筺体自体がアルミブロックの削り出しである。重ければ良い、というものではないが、ひとつの筐体だけでLINN DSよりもずっと重い。さらに軽~いALIX3D2とは比較するのも可哀想なくらい立派な作りである。全体を見渡しても、正に「隙が無い」という感じがする。

DST-01のアップ:非常に存在感があって頼もしい(上が本体、下が電源部)
DST-01 TEST 01

テスト風景:デジタル出力をデジイコを経由してDF-55へ入力する
DST-01 TEST 02

セットアップは本体ならびにNASともすんなりと終了した。まずはWindows Media Playerで簡単に試聴開始、と思ったがここで問題が発生。どう頑張ってもDST-01をリモートメディア(出力先)として選択・指定がができない。テストに使おうと考えていたノートPCはWindowsVISTAのであったため、DLNAメディアサーバー機能が使用できないことが判った(結局VISTAのWindows Media Serverのバージョン11は使用不可。Windows7環境下のバージョン12から、ということらいしい)。そのためiPODにリモコンソフトである Media Link Player (有料版が必要)をダウンロードし、テスト(本来こちらが確認したかった使い方である)を行った。Media Link Playerの操作もVoyageMPD操作用リモコンソフトであるmPODと操作性に関して比較を想定している。なお、セットアップに関してVISTAで躓いた以外は特段の問題も無く、早速試聴開始である。

まずはざっとDST-01を聴く。次にVoyageMPD、AudioGateと同じ音源を比較しつつ聴きこむことにした。各機器の比較用音源については、少し古いものであるが、このところちょっと気に入っているCarol Kiddの「All My Tomorrows」

Cacrol Kidd All My Tomorrows

から「When I Dream」を44.1Kと96Kの2種類の音源で試聴することとした。44.1Kと96Kではそもそも元の音源のイメージが少し違い、44.1Kの方が若干の音圧感があり、骨太に感じる。96Kは比較すれば落ち着いた感じ(音圧も少し小さく感じる)で、まさに歌声がぽっと浮かぶかのようで心地良いもの。

DST-01による音の第一印象であるが、とてもすっきりした音がする。ざわついた感じはなくひっそりと、かつ場の空気感がとても良い。サンプルレートの違い(マスタリングの違いもあるかもしれない)をDST-01はより明確に提示する。この曲自体がしっとり系であることもあって、何も考えず音楽に浸っていたくなる。難しいことはもはや不要、という感じである。VoyageMPDなどPCオーディオの方が明るい音がする。これは音楽の陰影に対する表現力がやや弱い、ということかもしれない。(この差は推量であるが、電源やクロックの精度に依存しているのかとも思う)

モーツアルトの交響曲の造詣も不満なく提示され、ハイレゾ(192K)の音源ではDSDの再生かと思わせるような感触がある。これは結構好みかも。なお、96KHzまでの音源についてはデジタルイコライザを使用する新しいセッティングにて比較する。192Kの音源はデジイコを使用しない(当方のデジイコは192Kをサポートしていないので)時のセッティングを使用する。また、DST-01は2倍、4倍のアップサンプリング処理が可能であるが、比較のケースが増えてしまうので、まず素の音でということで今回はこれを使わずにオリジナルのサンプルレートでの試聴、比較である。

総括としては、これは是非とも手元に置きたいデジタルトランスポートだと思った。音は気に入ったし、製品としての魅力にも文句のつけようが無い。しかし敢えて云えば、PCオーディオが全くの完敗という訳ではなく、音質の差はその価格の差ほどではない。VoyageMPDの場合はシングルボードコンピュータ(ALIX3D2)とUSB DDC(JAVS X-DDC)合わせても3万円程度であるので、DST-01は一体その何倍ほどになってしまうのか。そう考えれば、その割にはPCオーディオは大いに健闘しているとも思う。これをどう考えるか、であろう。趣味の世界はプラスアルファの部分にかなりの費用が掛かってしまうが、それを必然と思うか、どうかだ。欲しいと思う製品であるが、さりとて、このところ散財が続いてしまっているので、すぐに「ほいっ」とこれを購入できる状況にはないことが何とも痛いのであるが。

(参考1)DST-01の機能に関する考察 ネットワークプレイヤーとしての機能はよく練られており、特段の不足は見当たらないが、その機能的特徴として、

(1)本製品はデジタルトランスポートという位置付けで、DACは非搭載、デジタル出力のみであるが、同軸RCA、XLR(AES/EBU)のシングルケーブル接続、ダブルケーブル接続の三通りが選択可能である。(試聴はXLRシングルケーブル接続で行った)

(2)高精度クロックの外部出力も可能である。(試聴ではこの機能は使用せず)

(2)アップサンプリング機能については、2倍、4倍という指定のみで、特定のサンプリングレートに固定する機能はない。当方のデジイコは現状96KHzまでの対応なので、実のところ96Kに固定が出来る方がありがたいのだ。(44.1Kは96Kへ、96Kはそのまま、192Kは96Kへダウンコンバートという機能である。VoyageMPDやAudioGateはともにこのサンプリングレート固定の設定をサポートしている)

(参考2)Media Link Playerの操作性に関する考察
DLNA DMCコントローラ(リモコンアプリ)としては良く出来ていると思う。全体的な操作性も良く、多少コツをつかめばすぐに全体機能を使いこなせるようになる。汎用的なアプリであるので、mPOD(VoyageMPD専用である)と比較すると以下のような気になる点がある。この辺りはmPODがVoyageMPDの専用コントローラとして設計されているので、それ故のアドバンテージがあるようにも思う。

(1)操作開始時点で出力デバイスとなるDST-01を毎回選択・指定する必要がある。(起動時にデフォルトで自動接続してくれる設定は無いようだ)

(2)NASの楽曲ファイルに対して、起動後すぐにアーチストやアルバムをファイルブラウズ操作で探そうとするとやや待たされる。一度読み込んでしまえばキャッシュされるようで、以後は普通のレスポンスで操作できるのだが。

(3)プレイリストを作成する場合、楽曲ファイルを一曲づつ選択する必要があり、ジャンル全体、アーチスト全体、アルバム全体などの指定ができない。(数百曲以上となるようなプレイリストを作るのはかなり大変そう。何らかの補助機能あるいはツールがないと当方には必須のモーツアルトの全曲ランダムプレイ用のプレイリスト作成は困難必須である。なお、ひとつのプレイリストに保持できる最大曲数は不明)

(4)再生中の曲のサンプルレート(44.1K~192K)が表示されない。(あまり気にする必要は無いかもしれないが、情報として欲しい)

(5)プレイリストに基づく再生中にアプリを停止、再起動すると、プレイリスト内の曲の再生自体は継続しているが、再生をコントロール(停止、スキップなど)する画面に戻れなくなる。同じプレイリストを選択すると、以前の再生状態はキャンセルされ、新たに再生し直すこととなる。どうも再生中はリモコンソフトを稼働させておくことが前提の仕様のようである。mPODではアプリ停止、切断や再接続など問題なく行える)


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