オーディオ日記 第31章 夢の中へ(その11) 2012年11月16日


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録音なのか、何なのか。

デジタルの音がアナログに比して今ひとつであることや、デジタルでも16bit/44.1KHzの容量の不足が云われて久しい。確かにそう頷かざるを得ないCDも多い。保有しているCDの全体を見渡して、手放しで「良い録音」と云いきれるものの割合は10%にも満たない。

一方で、16bit/44.1KHzの限界を全く感じない素晴らしい録音のものが確かに存在している。楽曲や演奏の良否については言及しないとしても、ホールや録音スタジオ、使用する機材、それらの使いこなし、音のまとめ方、仕上げ方などなど録音エンジニアやマスタリングエンジニアのセンスが遺憾無く発揮されているな、と納得させられるものがある。この辺りは、最近のシステム変更で多少の成果が出てきたのか、良いものは「より良く」感じられるようになり嬉しいことである。

ただ、逆に音の鮮度に対してよりシビアにもなり、聴いていてその不自然さが随分と気になった曲もあったので、「まあ録音なのか、仕方ないなぁ」、と思いつつ諦めてもいたが、ふと気になって、AudacityでCDの録音レベルを確認してみた。以下の曲は日本の音楽界の著名な方のアルバム(それぞれ異なるCD)である。

一部もやもやっとしたもの:


全体がかなりおかしいもの:


デジタルクリッピングを避け巧妙にリミッターを効かせているようにも思われるが、明らかに音圧を稼ぐためにピークを潰してしまっている。これが不自然さの大きな要因となっているものと感じる。ピークを潰し続けている部分は(五月蝿く)音は鳴っているのだが最早音楽ではなくなっている。これは録音自体の問題ではなくCDマスタリングの問題ではないのだろうか。最初の曲はダイナッミクレンジを考慮しているものと思うが、もう少しピークにコンプレッションを効かせれば良いのだし、2番目の曲は単にレベルをもう少し下げれば問題ないと思うのだが(あくまでも素人の戯言として)。

こちらは最近リファレンスとしているもの:


比較対象用に、このところ試聴ソースとして使用している曲についても同様の確認をしてみたが、やはり異なる。この画像で見てもピークのヘッドルームに余裕のあるのびのびした感じが判る。それでいて、ダイナミックレンジが小さい訳でもないし、必要にして十分な音圧も感じられるのである。

もちろん、このような比較はある一面を捉えただけのものであり、録音の優劣(特に周波数レンジ)やフォーマットにまで踏み込んでいるものではない。ただ、ものすごくもったいないような気がしている。一聴した感じでは「録音が悪い」と決め付けてしまえる程のものではないのに、結果的にデジタルの不自然さを却って強調してしまう音圧優先のようなマスタリングになってしまっているように思えて仕方ない。あるいは、格段に進化したDAWツールを使いこなし切れていないのか、モニタリング環境が不十分なのか。(身も蓋も無く云えば、耳が悪いのか、センスが無いのか、、、)
重ねて云えば、これはそれぞれ著名な方のCD(売上げ枚数もまあそこそこと思われる)である。業界はビジネスとして成り立っているのであり、多くの関係者が関与している訳であるので、素人が思うほど一筋縄では行かぬとは思うが、「良い録音」との評判によってCDが売れる事実もあるので、聴衆のことをもっと考えれば結果が付いてくるのに、とあれこれ自問してみてはいる。

フォーマットの問題、デジタル・アナログの問題もあるのだとは思うが、その是非に拘るよりも素直に、前向きに音楽は楽しみたい。さらに云えば良い音で聴きたい。ただ、自分のシステムを必死になって向上させても、音源の良否はやはり再生音に対して支配的でもある。音源選びも楽しい、されどすべての音楽を良い音で聴きたいという(叶わぬ?)欲求も無くならず、である。


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