オーディオ日記 第31章 夢の中へ(その8) 2012年10月13日


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何と峻烈で芳醇なマーラーなのであろうか。



久々にマーラーの交響曲第7番(ピエール・ブーレーズ指揮、クリーブランド管弦楽団)、第五楽章を聴いた。延々と続く管楽器の咆哮とティンパニーの連打による乱痴気騒ぎのような音楽に知らず知らず痺れていく。マーラーの心の闇の深遠を覗くようなこの第五楽章にここまで引き込まれることは今まであまり無いことであった。ともすればうるさくも感じられて音楽に浸りきることが難しい楽章なのかもしれない。しかし、今回リニューアルとなったシステムではこのようなことは微塵も無く、マーラーの心の内を探りながらも、わが身をこの音の伽藍の前に曝(さら)け出す事に躊躇(ためら)いがなかった。

マーラーには20代前半の若かりし頃より傾倒し、特に交響曲第4番については魂が奪われるほど魅了され続けてきた。流石に40代を越えた辺りからモーツアルトに宗主替えをすることとなったが、今でも大好きなことに変わりは無い。

久々に引っ張り出してみた第4番のアナログディスク(思い入れの深いのはショルティ指揮)


考えてみれば、静寂と爆発を繰り返すマーラーの交響曲に心底没頭できるようなオーディオシステムを求め続けてきたのかもしれない。そしてそれは多分長い間叶えられずにいた。しかしながら、今云えることは、デジチャンの設定がほぼ固まり、新しいエンクロージャ、ホーンも我が家のユニットに馴染んできたことにより、少しは近づけたのかもしれない、ということ。この新しい環境で音楽三昧の準備ができつつある、ということであれば、これほど嬉しい事はない。

システム的には現在のところ、音量調節は継続してCX-260で行っている(いずれは電子式6chボリュームへの変更をかけたいという希望は持ってはいるが)。

そして、肝心の音である。

デジチャンによるユニットのフォーカスコントロールと新しいエンクロージャー、ホーンによる「無垢材の響きの良さ」の相乗効果と思われるが、とにかく気持ちの良い音楽を聴かせてくれる。小音量でも音痩せせずに豊かな気分になれて心地良い。特にクラシック系の音楽をやや小音量で流していると、はっとするような音の表情が次々と煌き現れてはその都度感激する。いつの間にか心は満ちたり、そして感性はまどろみの中に沈んでいってしまう。多分これが目指した姿の実現ではあるのかもしれない。探せばまだまだ粗はあるかもしれない。ただ、率直に云って、これ以上オーディオに何を求めるか? という気持ちにもなりつつある。

が、ここに留まり安住してはいけないのであろう。老体を鞭打ってでもオーディオの細道を前に進まねばならない。

現状でも、デジチャンからスピーカー周りで更にやらねばならないこともかなりある。
1.更なる微調整と比較実験
(1)特にデジチャンのメモリ機能を活かした、2way、2way+スーパーツィータ、3way構成のそれぞれの音の特徴と活かし方。(2wayでも不足は全く感じないが、3wayにした時の空気感の良さも捨てがたい。ただし、これは音楽や録音に大きく依存しており、あまり3wayの効果のないものもある。高域の成分がどのくらい音楽に含まれているのかにも依るのかもしれない))

(2)高次のスロープ特性やディジタルディレイを駆使した音の追い込み
これはしっかりとした測定機器を用いず盲滅法、山勘では結論を出すことは難しいかもしれないが。

(3)デジイコの使用の有無への結論
再生される音楽の心地良さ故に、現状は使わずに済んでいる。が追い込むとなれば部屋の特性からは逃げられないので、いずれまた必要となろう。

2.音の入り口に向かってのブラッシュアップ
特にDSDに対してどのようなシステム構成で対応し、取り組んでいくか。まだ方針を決め切れていない。
(DF-55のHS-LINK入力端子にDSD信号を送り込めない仕様となっているのは、実は大変痛い。これが可能であれば、HS-LINK出力を持つSACDトランスポートを用意するだけで済むのであるが、何故これが出来ないのか大いに疑問であるところ)

3.アナログディスク再生の練り上げ
アナログディスクの再生は従来使用していたプリアンプ(C-290V)内臓のフォノイコライザを使用しており、プリアンプからのREC_OUTをDF-55のLINE入力としている。もちろんアナログディスクの再生において余分なA/D変換、D/A変換が入ってしまうのであるが、幸いにもこのデメリットを余り感じることなく、音楽に没頭できる。アナログディスク再生においては、念のために従来のアナログチャネルデバイダと同じ接続方式に戻して比較実験してみたが、 ほぼ差が無いと感じられた。(実は、C-290VとCX-260を2chのプリアンプとして単体比較すれば、このボリューム(音量調節器)におけるの音の差はかなり明確にある)

C-290Vのボリュームの音の良さが素晴らしいのであるが、音量を絞り込んでデジチャンにアナログ信号を渡すところでおそらくそのアドバンテージの多くを失ってしまっているかと思う。。
デジチャンの後段でCX-260にて一括音量調整を行う方式は、比較すれば音量調節器としてやはり音質的に劣ると思われる部分をアナログ信号の大きさにてカバーしているかもしれない。今更ながら、この音量調節機能の音への影響の大きさに改めて気付かされることとなった。

最終的な構成としては、デジタルを聴く時間が大半であることもあり、 新しいシステム構成 の中にアナログディスクを聴く環境を組み込んだままとしている。しかし、やはり音質の対して相当のインパクトを持つ「音量調節機能」に対してはさらに向上を目指したくなるのが人情というもの。(電子式ボリュームも2chのものを試した限りでしかないが、そのポテンシャルは高いと認識した。ただ、最終的にどのような機器を導入すべきかについて、まだ判断を迷っている。)


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