オーディオ日記 第30章 遍路(その10) 2012年5月23日


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最高の音を求めて、いろいろなスピーカーを聴いて回った。過去に何度か聴いており再度聴き直したものもある。欲しいと思わせるピーカーは B&W800DiamondELAC FS 609 CEPIEGA Coax90.2 の3機種である。いずも現代テクノロジーの粋を集めた工業製品であり、確かに至高の音を聴かせてくれる。同一場所で聴き比べた訳でないので、記憶に頼ることになるが3機種は当然ながらそれぞれ微妙に異なる。800Diamondは強靭でオールマイティと感じる。大きさもさることながら、底知れぬ再生能力を確かに持っている。当方が通常に聴く音量レベルは今やそれほど大きくはないので、ちょっと猫に小判かも知れぬが、大音量を出せる専用のリスニングルームがあれば文句無く欲しい。比較すれば他の2機種は少し爽やかな感じである。Coax90.2は音場の展開が素晴らしく450Hzからを受け持つ同軸リボンのユニットが滲みの全く無い音を聴かせ、ライブなどの臨場感の再現性は高い。その分多少腰高になる点もあるか。金属製のサランネットの留め方の部分に製品としての魅力度にはちょっと欠ける点があるのは惜しい。609 CEは作りも緻密で、突き抜けたように確かで贅沢な音を聴かせてくれる。デザインはトータルに見れば違和感は無いが、当方には少し先鋭的かもしれない。いずれにしても、それぞれが正に技術の塊といった観があり、音も機器としての魅力も充分で、使いこなしてみたい気にさせる。

試聴している時はそれぞれのスピーカーに惹かれ、その都度欲しくなってしまうのであるが、自宅に戻って同じ曲を聴き直すと、我が家のシステムの欠点も良く判るのであるが、何故かほっとしたりもする。ボーカルを豊かな「歌声」として楽しめる。我が家のシステムは高域を丸めすぎているというような設定では決して無いのであるが、これは「慣れ」の問題なのか?それともあまりにも鮮鋭・明晰な音の出方の場合には気持ちが覚醒してしまい、聴くことに集中はできるが、心地良い居眠りを誘うような雰囲気にはならないということなのだろうか。さりとて、先に挙げたスピーカー達が聴かせてくれるスピード感や音の切れ、音場の展開については、やはり我が家のシステムではやや不足していることが明らかでもあり、それらの要素は音楽を聴く上での大きな魅力に繋がっている。この先の長い時間、音楽に囲まれて暮らして行きたいので、現在のスピーカーの延長で考えるべきなのか、新たな最新鋭機器を導入するべきなのか、悩みは尽きない。ただ、新しい機器は購入することはできる。しかし、我が家のユニットは新たに手にすることはできない希少なものでもあり、惚れ込んだ弱みもある。迷い、悩んだ上で、現在のユニット達に新たな舞台を与え、然るべくチャレンジさせてみようとの結論に至った。ユニットやマルチアンプ等の基本構成は変えずに、エンクロージャーとホーンを変える、という案である。兼ねてより、エンクロージャーとホーンについては何らかのバージョンアップをしたいとも考えていたが、あれやこれや考えた末、最終的に固まったアイデアは以下のようなものである。

1.ホーンをウッドタイプに変更し、エンクロージャーに内蔵させる。
2.エンクロージャーは横幅を抑えたトールボーイ、スリムタイムとする。

これは、200リットル程度のキャビネット容量を確保しつつも、音場の再現性を考えたスタイルとすること、より優しくかつ生々しい音を目指すこと、などを目標とした結果である。さらには、スピーカーには音楽を奏でる「楽器」としての魅力も持たせたい。そのためには使用する木材にも欲を云えば拘りたい。ある意味ではこれらの非常に我儘な注文を叶えてもらうことは、このようなオーディオマーケットがとても少ないであろうことから、予算無制限ならともかくも、正直実現は難しいかもしれないと考えていた。いろいろな情報を模索していた中で、非常なる幸運により、この希望を叶えてくれる 工房 に出会うことができた。

あれこれと相談をさせていただきながら、見えてきたプラン概要は以下の通りである。
1.木製円形ホーンを内臓する
2.エンクロージャー材料には合板を一切使用しない
3.フロントバッフルは無垢のカリン材とする

New Speaker Image

ほぼ理想と考えた案の通り実現できそうに思うが、特筆すべき点は「無垢のカリン材」をフロントバッフルに全面的に使用する点かと思う。今やかなり手に入り難いという木材を、贅沢に使用することになるが、このスピーカーを楽器として見事に歌わせることができるであろうか。当然ながら塗装についても極薄くにとどめることになる(流行のピアノブラックとはどうにも縁が無さそうだ)。今後細部を詰めさせていただきながら、3ヶ月程度の工期で進めることになるので、その過程などは適宜紹介して行こうと思う。肝心の音がどうなるか、イメージだけで過大な期待を膨らませてしまっていることもあるので、多少自重しながらも。


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