オーディオ日記 第30章 遍路(その4) 2012年4月8日


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TENOR TE-8802LをベースとしたUSB DDCが借用できたので、比較試聴を開始した。TE-8802LはUSB Audio Class2.0に対応したチップでAccuphase DC-901など広く採用されているので有名と思う。このUSB DDCはまだ製品としてはアナウンスされていない(近々発表されるとのこと)ものなので、写真では製品名などを少しぼかしてある。なお、Linux用(含むVoyageMPD)のファームウエアを搭載しているバージョンである。基本仕様としてはアナログAC電源を内蔵しており、USBバスパワーは使用していない。このため、電源線をカットしたUSBケーブルが標準で付属する。デジタル出力はRCA同軸(オプションでAES/EBUも可能とのこと)である。

左 JAVS X-DDC 右 借用したUSB DDC
TENOR TE-8802L

電源を入れてしばらく待つ必要があるので、じっくりと外観や作りをチェック。AC電源入力は3Pインレットタイプ。RCA同軸端子もしっかりとしたものがついている。Made in Japanであるので、流石に全体的に高級感が漂う出栄えである。前面の表示はLEDのみのシンプルなもので当方としてはJAVS X-DDCの液晶表示に比較すれば、こちらの方が落ち着いていて良いと思う。ただし、赤いLEDは少し当方の好みとははずれるか。(黒い筐体に赤いLEDは結構目立ってしまうので、青いLEDの方がベターかなと思ったりする)

さて、温まった頃を見計らってゆるりと試聴開始。電源線をカットしたUSBケーブルを接続し、VoyageMPDでのデバイス認識状態を確認するが全く問題なし。DC-901が認識されなかったこともあるので、ちょっとほっとする。一聴して感じるのは音の表情がとても素直で良いこと。解像度も高くそれぞれの楽器の音色に不満がない。何より弦の漂うような感じが秀逸でこれは非常に当方の好みである。JAVS X-DDCで何となく感じていた元気の好さとは少々異なり、とても落ち着いていると云うべきか。ただし、これをそのままXMOSとTE-8802Lの違いとすることは早計であろう。

しばらく聴き込んだ後、JAVS X-DDCをこちらも電源線をカットしたUSBケーブルとAC電源に換えて改めて試聴開始。う~む、これも良い。ちょっと優劣はつけ難いか。USBバスパワーで使用した時のJAVS X-DDCの音の表情とは明らかに違っている。印象はTE-8802LベースのUSB DDCと同様で弦の自然さ、音楽のしっとり感がある。ONKYO SE-200PCIをオプティカルケーブルで接続した時のような穏やかさもあり、その上でピアノ等は音の輝きを少しも曇らせることなく響いている。SE-200PCIとオプティカルケーブルではおとなし過ぎて多少の不満があった部分もきれいに解消されている。強いて云えば、JAVS X-DDCの方が空間的な余韻がより感じられる分、好ましいか。この辺りは差というよりは、むしろ聴く音楽とのマッチングの方が大きいかもしれない。いずれにしてもこのレベルであれば、QA550に十分追いついたと云って良いと思う。JAVS X-DDCには外部DC電源の入力用端子が標準装備されていることはやはり大きな利点であるし、これをしっかりと使わぬ手は無い。(電源線をカットしたUSBケーブルや外部電源の調達は別途必要であるが)

なお、この結果について、多少は予期していたものの、改めて考え込んでしまった。USB DDC自体や、あるいは使用しているチップ(XMOSあるいはTE-8802L)の是非というよりも、USBバスパワーの使用の有無の方が変化は大きい、と身をもって体感、改めて再確認したからである。オーディ用と称して、USBケーブルの電源線とデータ線を分離したようなケーブルもあるが、やはり方法論としては電源自体をPCから採らないようにすべきだと確信した。USB DDCとしてのインターフェースチップの差は無くは無いと思うが、ちゃんと感知できているとは云えない。既存の他のUSB DDCにもいろいろな製品仕様があると思うが、デジタル出力部分以前の電源回りの扱いが音の差になってくるのかもしれないと思う。もちろんこのような電源による差は先のQA550電源比べでも十分に実感していたことではあるのだが。

まだまだ最終とは云い切れないので、もう少しXMOS対TE-8802Lの比較試聴を続けてみようと考えている。その上で、我が家におけるVoyageMPD用のUSB DDCの最終構成を決定しよう。
QA550の音の良さと使い勝手の悪さという相反に悩み、VoyageMPDのリベンジを密かに狙ってきた当方にとっては、やっと少しほっと出来る結果が出て来たので、何にしても安堵している次第である。


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