オーディオ日記 第29章 音の泡沫(うたかた)(その14) 2012年3月 4日


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QA550とVoyageMPDの第一ラウンドは前回記載した通り、PCオーディオに精を出してきた自分としては少し悔しいけれどQA550(+バッテリー駆動)に軍配が上がった。言い訳をするならば、比較試聴用にVoyageMPD0.8.0をUSB HDDにインストールし、そこからUSB起動させていたこと。さらに楽曲ファイルも同じUSB HDD上にntfsのパーティションを切って置いていたことなど、USB コントローラの負荷などを考えると万全とは云えない環境でもあった。このため、VoyageMPDの逆襲を図るべく、再生専用PCのSSDへの導入(XP、Ubuntuとのトリプルマルチブート環境ではあるが)を行い、比較試聴用の楽曲ファイルは常用の環境であるNASに置いた。合わせて、VoyageMPDのBuffer Sizeを大きく(2048から6144と3倍、Buffer Before Play は100%で変わらず)した。また、デジタルイコライザは(なるべく除外しようとはしているのであるが)部屋のアコースティックのコントロールには依然として不可欠なので、これを使用して改めてQA550とVoyageMPDの比較試聴を行った。

先入観などによる判断違いを避けるために、同じ楽曲のアナログソース、CDソースを使用し、アナログ再生とCDトランスポート経由再生を取り混ぜながらのリスニングとした。かなりの比較試聴を行った相対比較であるが、好みの順から云えば以下の順位となるであろうか。
1. アナログ再生 (GT-2000+YOP1、FR-64、AT-ML170)
2. QA550 (DC9Vバッテリー駆動、クロックなどは未改造)
3. VoyageMPD (VoyageMPD0.8.0 SSDからの起動、NASベース)
4. CDトランスポート(DP-90)

敢えて順位を付けたが、率直に言えば1位~3位は微妙であり、音楽ジャンルにも微妙に依存しているようにも思う。ボーカルは声の温度感の観点からどうしてもアナログが良いと感じてしまう。クラシック系の編成の大きいものなどは、全体のパースペクティブをうまく表現してくれるところもあり、曲にもよるがQA550が実のところ少しリードする時もある。弦は概ねQA550が良く、透明感が高いせいか、ざらつきが全く出ないところは特筆すべき点である。ピアノにおいては、VoyageMPD、QA550の差はあまり感じられずVoyageMDPも健闘していると思うが、アナログは(トラッキングの心配や再生ノイズなども含めて)どうしても少し遅れをとるようだ。全体として、CDトランスポートは残念ながら我が家においてはちょっと討ち死にである。ただし、我が家のDP-90は既に相当の年月を経てきたものなので、これですべてのCDトランスポートの評価にはならないと思う。クロック交換などを実施すれば、現用機でも向上はするものと推測するが、むしろ最新の機器で改めて勝負をさせてみたくなった。今まではCDトランスポートはまあ、こんなものと疎かにして来ているので、この辺りは次のチャレンジとしようと思う。

使い勝手という観点からは、これはVoyageMPDに限らずであろうが、PCオーディオ、ネットワークオーディオの圧勝であることは動かない。QA550もCDのリッピング、SDメモリカードへのコピーという作業が一段落してしまえば、アナログディスクやCDと同じ感覚となってしまうかもしれないが、やはりもう少し再生時の自由度(ランダム、プログラム再生程度)があることが不可欠と思う。これはおそらく次の世代の製品(24bit/96KHz対応も含めて)では何らかの対応が行われるのではないかと推察はできるが、今の段階ではとても快適とは云えるレベルにはない。
1. VoyageMPD(iPodからのリモコン操作も含めて、すべて快適の極み)
2. CDトランスポート(ランダム、プログラム再生機能あり)
3. アナログ再生(レコードをかける、という儀式のレベル)
4. QA550(フォルダーや曲を探すだけでも大変)

現実問題としては、すべての楽曲をSDメモリカードに収容するのは、コスト的にも作業量的にもかなりなものになるので、やはりそれなりの使い分けが必要となろうか。当方の方針としては今のところ以下の通りである。
1. VoyageMPD用にCDはすべてFLAC(Uncompressed)化する。(従来通り)
(アナログも徐々にではあるが、傷等があるものからFLAC化している)
2. QA550用には、FLACからWAVファイルを作成する。
(よく聴くものはまとめて作成しておく、その他は面倒であるが、都度コピー)

原理的にもメモリーからの再生にアドバンテージがあることはデジタル再生においてはもはや疑う余地は無いが、このQA550のような機器が次にどのように展開・発展していくか、が今後の大きな注目ポイントであろう。PCオーディオにおいてもcPLAYのように楽曲をすべてメモリ展開してから再生するソフトウエアの音質的な優位性は今までもあった。同様にCDを一度メモリ等に取り込んでから(タイムラグは発生してしまうが)再生する機器も過去にあった。もちろんメモリに置いておけばそれでこと足りる、ということではないと思うが、訂正の効きにくいPCMデータの読み取りや伝送方法を行っていては真の高品質は得られ難いのではなかろうか。

今後は、ネットオーディオ・PCオーディオの本来の操作性を損なわずにこのようなメモリ再生の機能とのコンビネーションを持つ機器・製品の登場も期待できるのではないかと推測する。もちろん、QA550のこの極めつけのシンプルさが、その音質に貢献していることは確かであるが、これを損なわずに、利便性の機能を合わせ備えたものがいずれ出てくることを期待する。いや、必ず出てきて欲しいと思う。(ただし、200万とか300万というのは勘弁して欲しいが)QA550はその価格と音質のバランスが、CD時代からネットオーディオが全盛となっていく時代の狭間に咲いたあだ花ではなかろうかとも思う。このSDメモリを使用する方法の延長線上に製品としての大きな開花があるとは考えにくく、考えられる発展型としては、例えば、NASから楽曲ファイルをプレイリストに従って先読みし、内臓メモリに蓄えておき、再生自体はこの内臓メモリから行うなどの機能を持つ製品であろうか。

QA550は16bit/44.1KHzのPCMデータ再生の標準原器として位置付け、全体の環境の底上げ・切磋琢磨に注力し、音に迷ったらここ戻る、という使い方が今のところであるが、当方にはやはり合っていそうである。


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