オーディオ日記 第29章 音の泡沫(うたかた)(その11) 2012年2月12日


TOP Audio Topics DIARY PROFILE LINK

milonさん雪まるださん に転居後まだまだ未完の状態である我が家の音を聴いていただいた。学芸会で我が子の演技を見守る心境で何ともドキドキしながらであった。入り口の再生環境はCDトランスポート(DP-90)からデジタルイコライザを通してEM-DAC4399Octという構成である。ひとしきりCDにてクラシック。ボーカルからジャズに変えて、さらにアナログへスイッチ。

お二人のリスニング風景
HOUMONZU

さて、一通り聴き終わったところで、ここからが今回の本番である。デジタル出力をお二人が持参されたQA550(いずれも音質向上の為の改造を行っているもので乾電池駆動)へ繋ぎ変えてSDメモリカードからのWAVファイル再生を聴く。この辺りから頻繁に切り替えての比較試聴モードに突入。同じQA550でもmilonさんと雪まるださんのものは改造内容等が違っているとのことで高い次元であるが確かに微妙に印象が異なる。なお、QA550の接続はイコライザを経由せずEM-DAC4399Octへ直接接続した。当方のイコライザにはCOAX入力が無いためこの構成となったが、結果としてイコライザを通さなかったことが比較試聴の上でより違いがはっきりするという効果をもたらした。CDトランスポートからイコライザを経由した音とQA550の差は明確である。帯域バランスがどうこうと云う前に音の素直さ、自然さが明確である。これは良い。イコライザをはずしたCDトランスポート直出力とも比較してみたがそれでもかなりの違いがある。楽器の編成の大きさや楽曲にも拠るかもしれないが、QA550では、敢えてイコライザによる補正の必要性などほとんど感じずに音楽に浸れる。まさにSimple Is Bestの実践であろう。それにしてもこのQA550(見かけはシンプルどころか多少チープとも云える外観だが)のデジタルトランスポートとしての実力にはちょっと恐れ入った次第。

2台のQA550とバッテリー
QA550

次にCAPRICE(こちらもmilonさんが持参された)にDACを交換。音の入り口がそっくり入れ替わったことになる。これも良いなぁ。EM-DAC4399Octと比較すると音の厚みが出るように感じられ、女性ボーカル(Linda RonstadtのWhen You Wish Upon A Star)は好ましさ(艶かしさという方が適切か)が増す。これはやはりES9018というチップの本領発揮ということなのであろうか。

テンポラリ接続状態ののCAPRICE
CAPLICE

わざわざQA550とCAPRICEを持参いただいてのこれらの比較試聴であったが、機器の細部までもおろそかにしないお二人のチャレンジ精神と鋭敏な耳は素晴らしく、当方もまだまだ修行が足らないなと痛感してしまった。自分だけでは時に蛸壺的なアプローチになってしまうことも多いので、このような刺激をいただけるのは大変ありがたい。あれやこれやであっという間に時間が経ち、楽しいオーディオ談義のひと時を過ごすことができた。改めてお二入に感謝申し上げたい。

なお、これらの比較試聴では、イコライザをバイパスしてもアンプからスピーカーまでは全く設定をいじることなくQA550の素性の良さに何とか追随できているようであった。この辺りはマルチアンプの構成や各レベル設定、ならびに今回実施したメカニカルグラウンディングの効果もあって、まあ贔屓目に見れば合格点と云えるかもしれない。次のステップとしてはルームチューニングの追い込みであろうか。しかしCDトランスポートの部分は早急に何とかしたくなってしまった。QA550はその操作性やSDメモリカードの管理など、PCオーディオとiPod Touchによるリモコン操作に慣れてしまっている(堕落した?)自分にとっては利便性という観点からはこれを主軸機器にすることはすぐには踏ん切りがつきそうにもない(特に当方は楽曲をFLACで統一管理しているため、WAV専用のQA550はハードルが高い)が、CDトランスポートとしての「リファレンス(標準原器)」的な意味合いで是非とも持っていたい機器である。

NASに放り込んだ楽曲をランダムプレイさせるような利便性とこの音の両方が備わっている機器があれば幸せなのであるが、世の中にはいつもこのようなジレンマがあるものなのかもしれない。音の練り上げの過程であれこれと迷うことも多いので、標準原器としての存在があれば非常に頼りになると思うし、特にシビアに音に対峙したい場合にはその存在価値は大きい。


next index back