音楽は心の安らぎであり、明日への活力の源でもある。オーディオに目覚め志を持って以来、幾星霜もの年月が流れ過ぎた。この月日の中で数々の音楽との出会いがあり、その度に心踊らされ、魂の震えるような感動も味わってきた。
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時に思う。音楽の神ミューズは我システムに降り給うたのか。寄せては返す波の如く、高まりと落胆の合間に一筋の光が見えることもある。わが掌を差し出し続けても、求め得ぬものもあるかもしれない。されど、追わねば夢は叶わない。そして喜びに至る門は狭くとも、扉は叩かなければ開かない。長い葛藤の中で、今がまだ最終目的地とも思わないが、ひとつの安息の地に辿り着けたものと錯覚することもある。わが人生の旅の終わりは近く、約束の地は遠い。ここに安住できるものならば、と願うこともまた人の心の弱さなのかもしれない。 |
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転居後のチューニングもいよいよ大詰めとなってきた。大胆な試行錯誤も交えながら、新たな環境へのマッチングを探り、マルチアンプシステムの根幹とも云えるクロスオーバー周波数を500Hz(スロープ特性は-18dB/Oct)と設定した。従来は650Hzで安定していたが、これを一度は800Hzに替え、さらに500Hzを試し、最終的に500Hzに落ち着くこととなった。ホーンの特性とドライバーであるSUP-T11とのマッチングからはこれがおそらく下限のクロスオーバー周波数であると思うが、SUP-T11のトランジェント(過渡特性)の良さを生かしつつ、音楽全体の透明感や自然なエコーを求めると、新たな環境では低域ユニットであるSUP-L11の上の方の帯域を使用しない方がベターという結論となった。従来環境では音楽のピラミッドバランスを明確にするにはSUP-L11をもう少し高いところまで使用する方が結果は良好であったが、おそらくは部屋の中での位置取りの差(リスニングポジションの後方のエアーボリュームの拡大)が一番影響しているものと思う。この点は残響特性を測定すればある程度把握可能とは思うが、当方所有の機器では周波数特性しか測定できないので、周波数特性だけではこの辺りの解析は難しく、結果的には多少曖昧な「聴感」に現状では頼らざるを得ない。また、別の観点となるが、絶対的な音量が少し控え目になったことも影響しているのかもしれない。合わせて、周波数測定にて把握できた点でもあるが、背面を含めてのコンクリートの壁による最低域(30~40Hz辺り)の反射によって、木造の住宅ではでは不足しがちであった音の充実感を補っていることが、クロスオーバー周波数を下げてもバランスを崩さない要因のひとつとなっていると思われる。ロジカルな部分と感性の部分を織り込みながら設定を練り上げて行くには、相当量の音楽をいろいろなジャンルを交えて聴き、総合的に判断することが必要となるので、まだまだ行きつ、戻りつがあるかもしれない。
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