オーディオ日記 第29章 音の泡沫(うたかた)(その2) 2011年11月22日


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オーディオステムに求める自分の理想とは一体何であろうか。


Murrillo

流れる水の如く淀みなくさらさらと音楽が流れていく。モーツアルトにはこのさらりとした感触がとても似合う。そして流れのところどころに輝く音の泡沫が現れる。それはただただ優しい旋律で満たされており、音楽はエーテルの如くあちこちに漂う。耳をそばだてることも集中する必要もなく、何に抗うことも無く心の中へこの音楽が浸み込んでくる。雑念に満ちた汚れた心が洗われていつしか静寂に包まれて、意識はかすれ、魂が天上の世界に誘われるかのように眠りへと落ち込んでいく。沈み込む低音も透明感のある高域もいらないし、体が感じるほどの音圧が欲しくなることもない。一切の作為を排したごく自然な響きと旋律が、まるで自分の人生のBGMのように流れて行くだけ。 求めて続けてきた音楽やオーディオのこの理想は実現し得るのか。それとも我が肉体が求めているのは理想と対極にあると云えるような体を揺さぶる生々しい音の伽藍か。生きている証としての血沸き肉が躍るような音楽の熱さか。


人生に正解が無いが如く、ここにもひとつに集約された解はないであろう。真実は多様な衣を身に纏い、その時々でわが心が信じることも、目指していることも、また虚ろっていく。

理想と現実の狭間にあっても、実際の人生は葛藤と欲望が入り混じり、決してひとところに留まっている訳にはいかない。しかしながら、転居前後の雑事に追われ、新たなチャレンジについてもまったく止まってしまっていることがちょっと歯がゆい。旧宅の整理や掃除もひと段落したし、新しい家の中も大分落ち着いて来たので、この先少しずつではあるが新たな環境で再開して行こうと思っている。

なお、最初に実施したのが、部屋に合わせた懸案のチューニング、イコライザ設定等の微調整である。実施した内容は、以下の通り。
1.スピーカーの前後左右の位置を計測し、左右が厳密に均等な位置となるよう設置し直し。
2.リスニングポイントの位置決め。
(僅かであるが従来よりスピーカーに近接となった)
3.これに合わせてスピーカーの内振り角度の調整。
4.左右スピーカーの周波数毎の音圧の計測とイコライザによるレベル合わせ

チューニングとしては途中でありまだまだ完了とはいかいないが、一応納得できる状態にはなってきた。基本の考え方は、低域の芯を出し、高域はなだらかに、というベースの部分に三つ山特性を加えてリアリティを出す、ということでこの点についての変更はない。なお、部屋の影響と思うが、左右の周波数毎のレベル差が相当小さくなっており、このための補正がほぼ必要なくなった。これは定位感の向上に繋がるので、ちょっとうれしい事項である。現在の音の状況としては、空間のエアーボリュームが大きくなった(15畳から22畳)せいか、音の密度が少し薄らいでいる。また後方の壁面から大分離れているため、リスニングポイントにおける高域の反射量が変わったものと思われ、透明度は高まったが、漂い包まれるような気分が少し減っている。

いろいろなファクターも絡むので、従来と同じような音に設定し直すのが良いのか、あるいは新しき革袋に合わせる新たなチューニングとすべきか、悩みどころ。おそらく、まったく同一にはならないだろうし、部屋の特性に合わせてのベストチューニングを目指すべきであろう。少し悩ましいのは、「爆音」を出してのチューニングが出来ないこと。(やれない訳ではないが、転居早々苦情ももらいたくないし)ただし、ある程度の音量を出さないと低域の問題点(共振など)が確認し難いこともあり、密かにチャンスを伺っている。


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