オーディオ日記 第28章 オーディオへの想い (その6) 2011年 8月 2日


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オーディオへの情熱は冷めることなく、日々勤しんでいるのであるが、どうも近頃求める音の質が変化してきているように自分で感じている。特に音の純度、鮮度がとても気になり、「生きている音」の場合は、音楽の喜びが倍加される。これは、必ずしも高域が強調されたような音や、加工によってエッジを際立たせた音という意味ではない。楽器や声が本来持つ生き生きとした響きであり、時に耳に付くような音が出てくることもまた自然であると思う。翻って、自分のシステムの音は特にデジタル系を中心に、聴き易さ、耳に優しい音ばかり追い求めて来たのではないか、と自問する。再生帯域で気になる周波数があればそれを測定し、デジタルイコライザで抑え込み、音量を上げても気持ちよく音にまみれ、浸れる状況を理想としてきた。これはこれでひとつの方向とは思うが、音楽に対する「感動」がこのような音で本当に得られているのであろうか。音は良い音もそうはでない音も「ぴんぴん」と生きており、耳に飛び込み、一瞬で風のように我が身をすり抜けていく。その時に、自分の心に音楽を聴くことの感動が残らなければ、オーディオをやる甲斐がない。はるか昔の若かりし日に、マーラーの交響曲第四番(ショルティ指揮)を始めて聴いた時に味わった、震えるような感動である。あるいはフォーレのレクイエム(コルボ指揮)を聴いた時の。年を取ったことにより感じることが減ってくるのだという、世間の常識も無いとは云えないと思うのだけれど。

このような生きた音は、自分で思うには、総じてアナログレコードで聴けることが多いのは、はたまたどういう理由であろうか。我が家のPCオーディオの環境について、自分なりに悪戦苦闘をしてきた結果、ひとつの落ち着きを見せてきたので、ここはやはりアナログとの聴き較べを、という馬鹿なことをやってしまったのである。従来、アナログ再生についても、前述の「抑え込み」の考え方により、デジタルイコライザを経由させており、その結果として、デジタル系とアナログ系が相似的な音になっており、自分でもそれなりに納得、満足していた。過信もあったのかもしれない。Voyage MPDとの比較試聴を行うに際して、デジタルイコライザをオフにし、スピーカサイドの若干のレベル修正を行ってアナログレコードの再生を行った。それも、過去から聴き続けてきた、自分なりに録音も曲も演奏も良いと思う盤をピックアップして。結果は云うまでも無く、アナログの圧勝である。これは、音の良い、悪いという評価ではない。アナログへの懐古趣味でもない。音楽を聴いた時の感動を尺度とした評価である。

自分のトータルな再生音を評価するのは音楽ソースと再生システムの両輪が必須であり、どちらかで評価、判断ができるものではない。であるが故に、聴き慣れた音楽ソースでいろいろな再生システムを評価しようと試みるし、また音楽ソースについては、自分のシステムにぴたっと嵌るような再生音でないとその魅力が半減されてしまうように感じる。こんなことは何十年もやって来ているのではあるが、今回の結果について非常に重く受けとめ、これをベースにもう一度自分のシステムのあり方や再生方法を見直していかなければならないかもしれないと考えている。「良い音とは具体的に何か。何を尺度に音を評価するのか」、という点である。


PCオーディオについては、Voyage MPDに辿り着いたことにより、OSならびに再生ソフトウエア環境について一段落となっているが、気落ちしてもいられないので、次の計画を練っているところ。今後の具体的プランであるが、シングルボードコンピュータ(ALIX3D2)とUSB DDC(XMOS USB2.0 Referrence Design)の調達を行い、正に「Voyage MDP再生専用のブラックボックス」と呼ぶものを製作する予定としている。これはイメージ的には自家製ネットワークオーディオ機器に近いものになろうかと想定している。もちろん、Voyage MPD自体の立ち上がりやシャットダウンに関しては単体コンポーネントよりは時間がかかり、全く同様にはならないが、電源オン、オフの操作のみを行う想定でもあるので、現状の所要時間から考えてこの辺りは実用レベルの範囲と判断。XMOSについては、DigiKeyに注文したが、在庫が無く納期には多少時間がかかるようである。これは首を長くして待つしかない。到着後、現状の再生専用PCに接続、USB2.0 としてVoyage MPDから認識されることと音出しの確認をまず行い、その上でALIX3D2の注文をVoyage Storeに出そうと心積もりしている。なお、XMOSは筐体なしの裸での納品なので、ALIX3D2と同一筐体に最初から収めてしまうような筐体、レイアウトプランを考えるつもり。この方が設置等に際しても使い勝手が良くなるのでは、とつらつら考えており、市販のアルミ筐体についてタカチなど物色しているところ。少し悩んでいるのはALIX3D2に対する電源供給の方法であるが、電源アダプターを外付けにするのは結線上も煩雑、見栄えも悪いので、ALIX3D2、XMOS、電源とも内臓させて、外部からAC100Vでの供給となるようにしたいというのが希望であるが、電源アダプターについても各種情報によれば音の差もありそうなので、吟味が必要かと。いずれにせよ、XMOSの納期の問題もあり、多少時間がかかるので、前述の「初心に戻る」というようなアプローチを含めてじっくりと計画を煮詰めようと思う。


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