オーディオ日記 第27章 この先にあるものは (その8) 2011年6月13日


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JPLAY Fidelizer というソフトウエアを試してみた。PCオーディオの世界はまだまだ発展途上であると改めて思う。JPLAYは楽曲ファイルのメモリーへの展開などPCを音楽再生に特化させる方向がcMP+cPLAYと似ているとも云えるし、Fidelizerは自ら試行錯誤しながら、OS環境をチューニングしてきたことを纏めて簡便に(自らチューニングした以上の効果で)対応してくれる。それぞれに改善効果はあると思うし、遊びの選択肢は広いに越したことはない。PCオーディオにおける再生環境や再生ポリシーは正に様々なので、本当に自分にあった対応となっているのか、それを実証して行くことは、楽しい遊びである。一方で、その効果を適切に吟味することはまだまだ難しいと思う。PCオーディオにおける物理的な構成変更ではなく、OSやソフトウエア環境のチューニング過程において、音楽再生の「改善効果」を明確に比較・認知、表現すること自体が至難であるし、そもそも多様な改善手法と効果があること自体がPCオーディオ、PC環境の成熟には至っていないとも考えられる。ただ現実的には、やはりそれなりに「効果」は感じられるし、自分の使い方や感性に合ったものは採用して行こうと思う。逆に云えば、PCオーディオもオカルト的なことも含めて随分と「オーディオらしく」なったということかもしれない。

今回試したソフトウエアの内、Fidelizerはかなり評価できるが、OSの一部プロセスを止めたり、処理の優先順位を変更していることは判るが実はそれ以外の詳細は当方のWindows OSの知識では全く不明だし、あまり納得できるような説明もない。このタイプのソフトウエアはいったいどのようにして開発したのであろうか。OSのロジックその他について把握解析し、こうすれば、ああなり、従って音が良くなるはずだ、という理詰めで開発されたものであろうか。それとも、ある程度しっかりしたオーディオシステムで、比較試聴しながら、音を煮詰めていく、という作業の結果生まれたものであろうか。どうも前者のような気がしてならない(それが悪いということではないが)。ただし、何はともあれ実感として効果が認められる。また、非常に有難いのは再生ソフトウエアそのものを変更することではないため、楽曲ファイルの管理やプレイリストなど今まで構築してきた環境の変更は一切なく、当然ながら使い慣れている操作性へのインパクト無しに利用でき、改善効果が得られること。再生ソフトウエアの開始前にFidelizerを実行すれば自動的にPC環境を「最適化」してくれるので、その後に自分の好みに合った再生ソフトウエア起動すれば良く、その簡便さは大変ありがたい。最新バージョン(V1.6)ではXPもサポートしているが、基本はVISTA、Windows7用ということらしい。取っ掛かりの試用では、VISTA+WASAPI+Winampの環境でPCルームでのオーディオ構成にて行った。Fidelizerの設定は3段階のチューニングが可能な中で、一番プロセスを刈り込むことになるExtremistというもの。音楽再生に特化・最適化したチューニングと云う通り、再生中にその他の処理を行おうとすると、当然とも云えるが、明らかにPCの反応が悪い。なお、再生音であるが、音楽の隈取が良い方向にくっきりとする感じで、評価としてはかなりの好感。当方のVISTA環境ではプロセスの刈り込みなどがきちんと出来ていないので、やはりこの種の対応は現在のPCオーディオでは必須であると改めて感じた次第。その後メインシステムでも、試してみた。こちらは再生専用PCがWindowsXPなのであまり期待はしていなかったがVISTA環境同様に良い方向に変化してくれた。メインシステムでの印象は音が穏やか、自然な方向にまとまる。このため、継続して使用し様子を見て行きたいと考えている。

Fidelizerの設定内容(設定画面はこれだけ)


ただしこのFidelizer、問題が無い訳ではない。プログラムを起動させ、まず最適化設定のオプションを選択するのであるが、この環境設定完了後にブラウザーが起動され、当該ソフトウエアのHPに誘導されてしまう。これは作成者自身の自己顕示なのかもしれないが、このようなソフトウエアの振る舞いはセキュリティ的にも心配の要素があり、この手の意味の無い動作を組み込むことはかなり遺憾と思う。また、PCのシャットダウン時に当方の環境ではFidelizer自身がきちんと終了せず、警告画面が出ることがある。これらの点は実験的要素としては許容せざるを得ないが、恒常的な環境にて使用して行こうとするには抵抗があり、優秀なソフトウエアであると思うが故に改善を期待したいと思う。

JPLAYはcMPにも通じる思想の一徹さがあり、それはそれで良いと思う。PCオーディオに於いて、「音」を追求するのか、「操作性を含めた再生環境の快適さ」を享受したいと思うのか、それは使い手側の問題であろう。しかしながら、当方は二兎を追いたい。ここに少なからずジレンマが生じてしまう。アナログ再生を考えれば、PCオーディオにおける手間など大したことではないとも思えるが、楽チンな方向性に慣れれば元へは戻れないのは人間の性か。なお、JPLAYの正式版は有料(99ユーロ)であり、試用を超えての本格的対応を行うには高価過ぎてちょっと手が出ない。


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