オーディオ日記 第18章 彷徨(その8) 2002年10月28日


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PT-R9とDN-8Pが到着した。両方ともまあまあの美品であった。少し残念なのはPT-R9の片方の振動版保護ネットに若干の凹みがあること。これは強力な磁石を持っているため、ちょっとしたことでも磁石に引き付けられてしまうので、ありがちなことではあるが。幸いにも凹み自体も余り大きいものでは無く、それ程は目立たないし、振動版には全くの影響は無いので、まあ良いかと。なお、前回のPT-R9よりも新しいもののようである。はっきりとは判らないが箱などの様子からの推測。DN-8Pは全くの美品。箱に入ってきた状態は新品のようであった。さて、念願のPT-R9によるダブルスタックは如何に。当然見栄えは同じ物なので非常に良くなっている。まずはPT-R9のみ付け替えて、ネットワークはそのままとし、駆動アンプはヤマハとした。これは、P-360のブリッジ接続にてSUP-L11を駆動する前提のためである。ツィータだけの音を聴いても判断はし難いのであるが、まあ、こんなものかと。次にお待ちかねのDN-8Pをまずは16KHzで繋いでみた。おや?異常に静かである。はて?出力レベルが下がってしまったのか?正確には理由はわからないが、DN-8Pを通した音はやけに静かである。ヤマハアンプの出力は全開、トランスアッテネッターのレベルは-6dBである。もちろんP-102との入力感度の差はあるのであろうが、ネットワークの違いとも云えそうである。当初は16KHz辺りで行こうと考えていたのであるが、このような「静かな」状態なので、本格的な試聴の前にクロスオーバーは12KHzに下げるよう変更した。SUP-L11の駆動は当然ブリッジ接続。 SUP-T11はP102にて今までとほぼ同じ設定。(レベルはトータル-16dB、クロスオーバー周波数、スロープ特性とも同じ)

さて、いよいよ愛聴版の試聴開始である。結論は「良い!」の一言であった。低域の辺りはやはりブリッジ接続の効果か、過不足無く豊潤で安定している。音像も小さく、肥大した感じにはならない。それでいて、低域の弾む感じや量感はあり、さらに音楽全体がうるさくならず、静かで落ち着いている。一方で高域はPT-R9のダブルスタックの効果か、非常に透明度高く、それでいて自然である。変に硬質なところや、ギラついた感じは微塵もない。これにはDN-8Pの貢献も大きいのだろうか。音楽の美妙なニュアンスや空気間、空間の感じが良く出ているように感じられる。まずは小編成のクラシック(当然Mozart)から聴き始めたが、いやいや、こんなに良いなんて。ヤマハのアンプで心配していたような音質やノイズの問題はなく(特にトランスアッテネッターで-6dBしているせいかもしれないが)、いずれは変更しなければならないであろうが、当面は使えそうである。しかし今更ながら尾思うのはブリッジ接続による低域の改善効果である。通常の使用方法では何となくドライバーに負けているような線の細さが時折顔を覗かせるのであるが、ブリッジ接続においてはそのような感じはまるで無く、豊かに、それでいて音像が大きくならず、変にボンついたところも出ない、という全くの合格点であった。この方式自体は前から何回も試してその良さは確認済であるが、その他の環境や設定などが整ってきたこともあってのことではないだろうか。

いろいろと試聴する中での曲の印象を記す。まずはBeatlesのHere Comes the Sun。この低域のマッシブさ、それに埋もれないボーカルとシタール。全体的なトランジェントの良さは圧巻である。ボリュームは少し控えめであったが、次回はさらに大音量にチャレンジしてみたいという出来であった。いよいよ旧友の家のかつてのOlympus S8RとMacintoshの組合せを凌駕できたのであろうか。それならばすごいことだぞ。さて次はお待ちかねのAgnes ChanはToday。いや~、何とも絶品である。ボーカルの豊潤さと柔らかさ、それでいてライブの雰囲気はきちんと出てくる。声の再現については全くの文句なし。ついにここまで来たんだね。多少大きめのボリュームで聴いたが、それがさらに正解。お次はサンサーンスのクリスマスオラトリオ。これは冒頭のPreludeとDuoのみを聴いたが、Duoにおけるソプラノの声の質及びハープとの空間の表現は秀逸。後半ソプラノが声を張り上げるところもほとんど破綻なし。Preludeは夜暗いところでひっそりと浸りたいような出来。尾崎豊の好きな数曲も低域からリバーブの効いた高域まで欠点がない。特筆すべきは低域のマッシブさの表現とそれでいてうるさくならないこと、音像の小さいこと。ボーカルも声が非常に良い方向に再生される。うむ、参った、である。寺神戸亮のバイオリンソナタは弦の煌きが空間に飛び散るがごとく。それでいてささくれた感じは一切なく、ひたすらひたすらのびやかで、自然である。バイオリンがここまで表現できればもはや本望である。まだ、一日二日の試聴であり、セッティングもベストとは云えないかもしれないが、とにかく何時までも聴いていたい、という気持ちになる。今後はさらに多様な曲を聴いて、微妙なセッティングを詰めていくことになろう。

それにしてもDN-8Pと自作のネットワークでは随分と表現に差が出てしまうようだ。ちょっと散財ではあったが、DN-8Pと合わせての購入が大正解であったと思う。このような機会でなければコストにこだわり、少なくともDN-8Pは単独で購入することはなかったであろうから。さて、低域のアンプについては今後の方向を考えるとき、結構難しくなってきた。基本線としてはA-50Vのような小出力でも駆動力の高いものを、と考えていたがSUP-L11を駆動するためにはある程度のパワーが必要になるのかもしれない、というのが今回の結論である。特に小音量からの音の立ち上がりをリニアに再現させるためにはパワーは不可欠なのであろうか。まあ、ブリッジ接続による効果(ダンピングが多少落ちるなど)との関連までは判らないが、やはり余り小さいパワーでは音量を大きくした時に不足になってしまうのではないだろうか、などなど。一方高域のアンプについては種々問題(見栄え、機種としての安定感その他)あるのかもしれないが、とりあえずの再生音としては合格点とも云える。ただし、将来的にそれなりの物に変更したいという点は変わらない。ただし、先にも書いたが適当な候補の機種がないのが悩みの種。薄型ですっきりしたデザインでパワーは控えめで良いからクオリティを感じさせるものであれば。まあ、しかし当面は予算もないことからヤマハを使い続けることになろうかと思うが。

そこで問題となるのは、せっかくPT-R7Yを戻したS-955を駆動するアンプがなくなってしまったこと。PT-R7Yは結局ステンボルトの方で取り付けた。(スコーカと同様である。ウーファーはまだ、ステンボルトを調達していないので、黒い鉄製のまま。いずれ変えようかと思ってはいるが)ニス塗り等のリストアと相俟ってそれなりの雰囲気になってきたのに、今度はアンプが無くなってしまうなんて。残念ながら現状ではP-360のブリッジ接続はもはやはずせない。このため、新たに高域用のパワーアンプを購入するが、S-955用のプリメインアンプを購入するかのいずれかである。どっちにせよ中古品狙いなので、YAHOOオークションなどインターネット系を中心に気長に探すしかない。まあ、それもまた楽しみであろう。何にせよ、秋の夜長が楽しみな状況になってきた。


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