オーディオ日記 第17章 飛躍(その1) 2002年2月6日


TOP Audio Topics DIARY PROFILE LINK

11月に所属変更となってから、非常に多忙にて3ヶ月以上も記録する機会がなかったが、この間にも着々と「音の向上」を目指したアクションを重ねてきた。その辺りのサマリーを記していきたい。まず、大きなインパクトがあったのはSONY SUP-L11の導入である。年末頃にオーディオユニオンに寄った帰りに何気なくGTサウンドを訪問し、試聴していたところ、SUP-L11の中古品があるとのこと。店主はGタイプの新品を進めたいようであるが、そちらはあまりにも高価。当方としてはノーマルタイプの中古品でも十分である。早速飛びついたことは云うまでもない。
SONY SUP-L11
さて、とにかく問題は音であるが、何はともあれ、箱にセッティングしなければならない。ユニットひとつで20Kg近い重量があり、これを取り付けるだけで大変な重労働であった。はやる心を押さえながら、大汗をかいて何とか左右両方の取り付けが終わり、音出し。非常におとなしく、温かみのある音が出てくる。ボーカルについては予想通り納得のいく、文句のない音である。人の声が本当に人の声らしくて違和感がない。従来はこの部分になんとなくわだかまりがあったのであるが、これがすっきりと無くなった。これよ、これ。音のやわらかさを保持しながらも、音の輪郭が明確でかつ、S/Nがぐんと上がった感じがする。背景の音がひとつひとつ聴き取れることにも驚かされる。音圧(能率)は比較すればEVX-150Aの方が高いような気もするが、DG-28にて測定してみた限りではほとんど差がない。やはり聴感上のS/Nが優れているというべきか。また、特筆すべきは音量が小さい時でもそれなりのプレゼンスがあり、音の芳醇さが出ており、線が細くなりすぎない点。これであれば小音量でも楽しめる。低域と中域の設定はいろいろ試行錯誤した結果、SUP-L11は650Hzクロスの-12dB/OCT、2450Jは-24dB/OCTで、かつ逆相の接続とした。従来のEVX-150Aは正相であったが、DG-28にて音のつながりのスムーズさを見ると、どうも逆相の方が良いようなので、当面これで行くこととした。

さて、さらにひょんなことからリボンツィータも手に入れることになった。これは「粗大ゴミとして落ちていたものを拾った」という何とも説明しにくい事実。年も明けて1月、なんと粗大ゴミ置き場に往年の名機、パイオニアのS-955が打ち捨てられているではないか。当然そのような状態であるからして箱はかなりぼろ、ウーファーのエッジはほぼ崩れ去っている状態。素人目には当然使えそうに見えないし、このままではゴミそのものである。が、高域に使われているのはリボンツィータである。これが「生きて」いれば、全くの拾い物である。そこで改めてワゴン車にて夕闇にまぎれてゴミ拾い。いや、重いのなんのって。(片側にて約45Kg!)さて、勇んで家に持ち帰り、箱をきれいに拭いて(そうは云ってももはや傷だらけで其のままで何とかなる代物ではない)、ユニットの取り外しと音出し。ヤマハのアンプをわざわざ持ち出して、いよいよチエック、ん? やっぱりだめか? 変なハム音しか出ないぞ。 じゃ、別のユニットは? 同じ? 中域のベリリウムドームスコーカは? やはり同じ変なハム音。やっぱりだめか? いや、待てよ? 音が出ているということは断線ではないのでは? 良く調べてみると、アンプへの接続がちゃんとされていない状態だった。いやはや、あせりすぎ。結果、すべてのユニットは「生きて」いた。なお、搭載されているリボンツィータの型番はPT-R7Yである。 おそらくこれは初代PT-R7の単品ではないバージョンであろう。ということは、音はPT-R7と同等のはず。箱、及びスコーカ-等の有効活用については別途ゆっくり考えることとし、早速2402Hの変わりにPT-R7をつないで見ることに。とりあえずはアッテネッターも通したまま、ネットワークは従来のまま。ローカットの周波数は問題ないはず。 で、ミュージックスタート! おんやあ?こりゃ、ええんでないのぉ?2402Hでは出せなかったエーテルのように漂う高域がすんなりと出てきた。そうなんだ、この高域を求めていたのに、今までのユニットではどうレベル調整しても、接続方法をチャンデバやらネットワークやらといじってみても出せなかった、浮揚感、透明感そして、S/Nが高いと感じさせるこのエーテルのような? ~ん、表現が難しいが、バイオリンの音が楽しく、優しくなる音だ。やっぱり今まで今ひとつ納得できなかったのは高域のユニットのせいで、これを解消したのがリボンツィータであった。最初は2402Hと同居させる形で隣において試聴を始めたが、もう翌日には2402Hを撤去してしまった。拾い物?とは云え、リボンツィータにノックアウト状態であった。もっと早く交換すれば良かったと思いつつ、我慢していたからこそ、SUP-L11を格安で、リボンツィータを「ただで」入手できたわけだ、とも思う、けち臭い根性。でも、ま、音がこんだけ良いのであれば、理屈は不要。イヤー、ボーカルと弦が非常に良くなった。とにかく、クラッシク系ではどの音楽もいやみが無くて、楽しめる。ボーカルは実在感があり、変なシャリつきもなく全く「声」を堪能できる。万歳。しかしながら、ジャズ、フュージョン系では音の荒さがない分、多少音楽の力感が失われるような感じがあるかもしれない。

さて、ここまで来たら、次には厳密なレベル調整、セッティングにてもう一段の高みを狙わねばならぬ。まずは高域のレベル調整。従来2KHz以上を-2dB/OCTにてだら下がりにしていたが、これでは少し物足りなくなる。結局、アッテネッターをはずし、一切のレベル設定を止めて、ネットワークのみ介在させている。DG-28の測定上では従来より10KHz以上が明らかに高くなっており、さらに従来の2402Hで出せなかった16KHz以上も十分レスポンスがある。これでも全く高域に荒さがなく、非常にスムーズかつ、リアルである。中域はこれもアッテネッターを廃し、S/Nを稼ぐためにアンプで-15dBとしている。今のところこの辺りで結構塩梅が良い。さて、問題となったのはDG-28の存在である。2450Jを逆相接続したことおよび高域のレベル設定により1KHz以上はほとんど補正を必要としなくなる状態になっており、この帯域をあえて自動補正する意味があまりなくなった。1KHz以下については当然のことながら、レスポンスにばらつきがあり依然として補正が必要な状況ではあるが、逆に補正をかけてしまうと「音の美味しさ」が僅かであるが、失われてしまうような気配がある。むしろ、あまり中低域のフラット化を意識しないほうが良いのかもしれない。全く補正しない状況では100~300Hz辺りは膨らんだ状態であり、60~70Hz付近には大きなディップがある。しかしそれでも音楽の「豊かさ」が感じられる。最終的な結論は非常に難しいものがあるが、当面はDG-28の使用を見合わせることとした。レベル設定は中域が-15dB(アンプでの絞込み)、高域が±0dBである。結果として一切のアッテネッターは使用していない。

さて、先のS-955の扱いであるが、まずはこれをリストアして、使用可能な状態にしなければならない。外観については、このままでは如何ともしがたいので、少なくとも表面は一度はがして、再塗装と考えた。問題はウーファのエッジの修復である。エッジ修理は業者に頼めばできないことはないのだが、片側で安くても14,000円程度はかかる。両ユニットの修理が前提となるので、これは多少工夫しなければならない。オーディオミーティングルームに質問を投げかけてみると、エッジ修理は材料さえ揃えばあまり難しくないとのコメントが返ってきた。さて問題はエッジの材料である。同様にインターネットでサーチすると14インチのJBLユニットのエッジを販売していたが、これでも片側7,000円もしてしまうし、これはウレタンのエッジであるので、やはり経年変化に問題が残る。一番経年変化の心配がないのがゴムエッジであるが、これは当然純正品がないので、何らかの工夫が不可欠。そこで思い出したので、防振ゴム等を売っているジョイフル本田の素材売り場。結局0.5mmのゴムシート(300円)とゴムのりを買い求めた。締めて500円前後である。さて、修理の手順であるが、すでにぼろぼろになっているウレタンエッジをコーンからきれいにそぎ落とし、その他のパーツ、コーン紙もアルコールで拭いて磨き上げた。センターキャップが片側つぶれている部分は幸いにも裏側から棒で押して、凹みを直すことができた。ゴムシートはまずおよそのサイズを測り、ドーナッツ形状に切り出した。これをコーン紙の外形に合わせるように調整し、フレームと合わせるようにサイズ調整。次にフレームへの貼り付け、最後にコーン紙への貼り付けの順番で行った。ゴムのりにより多少ゴムシートが伸びてしまうので、若干しわが寄ったり、となかなかの苦労であった。最後にコーン紙裏側の余分と思われるゴムシート部分をカットし、はみ出したゴムのり(やや黄色がかっており、そのままでは目立つ)に黒のプラカラーで着色。まあ、確かにそれほど見栄えは良くはないが、何とかエッジ修理が格安で完了した。心配点としてはコーン紙の動きがゴムにより(立体成型ではないため)制約されたり、ゴムのりがはがれたりすることであったが、テストでの音だしの限りではそれ程問題になる点はなかった。一応ユニットは修理完了とした。

さて、次に箱であるが、まずは表面のカンナがけ。これには結構苦労した。特に一つ目の箱(右側)は方針を間違えたために、最終的には今一の外観となってしまった。コーナー部分等のつぶれがあったため、これをけずり、さらにバッフル面をやや曲面化しようとしたのであるが、これが間違い。素直に、コーナーだけの削りが正解であった。なお、一つ目はカンナの刃の出し具合、力の入れ方等判らず、結構体力を必要としたが、二個目は割とすんなりと削ることができた。さらにペーパーをかけて、ニス塗り。今まで良く使っていたチーク色にしようか迷ったが、今回は木材オイルを使用。色は多少うすいので、仕上がりとしてはちょっと不足。やはり最終的にはチーク色にすべきか思案のしどころとなっている。さて、中域のユニットについてもガードの金網をはずし、クリーニング。そこそこひどい状況ではあるが、何とか完了。さて、箱の色については最終的な悩みはあるものの、それはさておいて、各ユニットを搭載し、早速音だし。うむ、やはり中域ユニットの音が結構勝っており、そのままでは強すぎる。それに比して、低域はやや大おとなし目か?ただし、バスレフのチューニングのせいか、聴感上の低域は出ているようにも聞こえる。全体のバランスとしては中域を-3dB程度が妥当か。さて、その状態での音であるが、どうしてどうして立派なもの。特に、高域、中域については解像度はともかくとして大きな問題はなく、結構聞かせる。ただし、低域に関しては残念ながら少しユニットのクオリティが多少低いか。(比較相手がSUP-L11では勝負にはならないと思うが)部屋の中ほどにおいての確認であるためか、音場感が良く出るようである。この点はまずまず及第点。ただし、箱の背が低いので、実際の設置に際しては高さの調整が必要であろう。高域ユニットは結局流用してしまっているので、当面は2階のパソコン部屋への設置とする予定。ただし、配置その他については多少工夫をしないとだめ。(サイズが結構大きく、また重いので)パソコン部屋で使うためにはアンプも必要となるのであるが、現状は余りがない。まあ、ゆっくり使用法を考えるとしよう。将来的には別途高域ユニットを手配したら、5.1チャネル用のリアスピーカーとする手もあるし。


next back