オーディオ日記 第15章 耳がよくなけりゃすべては(その5) 2001年 7月 9日


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上記の構成を踏襲しながら、ふと思いつくところあり、2450Jに対し、0.45mHのコイルを 挿入して周波数特性の変化を把握する試みを行ってみた。

16Ωの2450Jに対して0.45mHのコイルは約5.8KHz/-6dB Octのローパスフィルターになる計算。(計算は後から確認したのだが)コイルを入れない状態をDG-28にて2402Hの高域を出さずに測定してみると7KHz以前からレスポンスが減衰し始め、10KHz越える辺りでは既に-12dB以下のレスポンスとなるが、12~14KHz辺りに理由は今ひとつ明確ではないが、レスポンスの小山がある。(レベルは相当低いが)2450Jの高域がスルーの場合、周波数レスポンス上は問題ないように見えても、2402Hとの干渉もあるのではないか、というのがそもそもの発想である。それであれば、F20のパラレルドライブ+ネットワーク(今回はコイルのみだか)を試して見たくなるのは人情というもの。さて、0.45mHのコイルを挿入した2450Jのレスポンスであるが、3.5KHzを越えた辺りから減衰が始まり、7~8KHzでは何も入れない状態に比較して-2~-3dB以上の落ち込み、10KHz以上はほとんどレスポンスがなくなる。当然さらにその上の小山は発生しない。あれぇ~、思ったより落ち込みが早いな、と思いつつ2402との合成レスポンスを測定してみると、5KHzから15KHz位までの範囲で思ったほどの変化がなく、いやむしろ、ほとんど同じと云って良い位。2402Hの単体でのレスポンスは7KHzのクロスオーバー(-24dB/OCT)から想定できる以上に7KHzから下のレスポンスがあり、5KHz周辺は意外なほどレベルが高い。コイルを入れた状態と、そうでない状態とDG-28での測定結果はそれ程差がないのならと思いつつも両チャネルにコイルを挿入し、DG-28での補正量を全く変更せず、一応、やっぱり念のためという感じで試聴してみた。
あれぇ~、何かこれいいぞ?
ということで次から次に試聴。う~ム、高域の気になる点がすっきりと解消されているような。変に音が硬くならず、むしろ、ほわっと、やわらかい感じが出ていて結構良い。いや、ずいぶん良い。それでいて高域の落ち込んだ感じはまるでなく、むしろ若干高域のくっきりした感じが出ている。特筆すべきは弦の高域が荒れることなく広がりを残しながら、すっきりと聴かせてくれている点。ボーカルも声の良い意味での質感をきちっと出しながら、荒れた感じがせず、好ましい。プレゼンスを失ったくすんだ感じにはなっていない。

う~ん、周波数特性上はそれ程変化がないのに、この音の違いは一体どう説明できるのか? 2450Jの高域をスルーで出すとやはり、干渉が起こり、悪影響を及ぼすのであろうか。あるいは4インチダイヤフラムはあまり高い周波数まで使ってはいけない(分割振動を起こす)ということであろうか。これが本来の3WAYの音なのであろうか? 音の感じは表現が難しいが男性ボーカル(ブラザーズフォーやポールサイモン)を聴く限り、自分自身にとって何時の間にかリファレンスになってしまっている(?)中学時代の旧友の家のOlympusの音に近い。(彼の家の音は既に失われて久しいが、記憶だけが残っている)ということは、云わば非常に感性的にはグッドな音ということ。F-20を2台使用した3WAYマルチはシリアル接続による悪影響から逃れることが出来ず、挫折してしまったが、これが本来の3WAYの音なのであろうか?声の感触が非常に気持ちよく聴ける。弦についても時として気になる高域の押し付けがましさが顔を出すことなく、気楽に聴ける。女性ボーカルは未だそれ程時間をかけて聴いてはいないが、例のシャリつきがもうほとんど無い、と云って良い位姿を潜めている。いやはや、ひょんな実験がこのままシステムに定着してしまいそうだ。

そこで思うことはやはり機器(この場合はDG-28)には頼り過ぎではいけないということ。特に周波数レスポンス以外の部分は機能的に測定できない訳なので、周波数特性だけを目安にするということはやはり危険である。もちろん今回の場合の決定的要因はより自然な3WAYに近づいたことだと思うが、DG-28の全帯域の周波数測定を行っているだけでは、決して把握できない内容であったと思う。同様にF-20のシリアル接続がだめということもDG-28では測定把握は困難で、最終的には聴感に頼ることにより、判断出来た訳なので。さて、こうなると本構成をベースにレベル設定など追い込まねばならないし、ローパスのネットワークとして考えた場合、-6dB/OCTで良いのか?ということ。となれば、これは次にコンデンサとの組み合わせで-12dB/OCTのネットワークにチャレンジして、より完成度を高めた構成にしていきたい。 -12dB/OCTの7KHzのネットワークは1μFのコンデンサがあれば良く、幸いこれは手元にある。コンデンサが音質に与える影響はある程度は承知しているつもりなので、-6dBあるいは-12dBの設定の判断だけはしておこうと考えている。
なお、このように考えていくと、高域のハイパスフィルターも現在はF-20で行っている訳であるが、チャネルデバイダーにはチャネルデバイダーのデメリット(主としてS/Nの部分で)があるため、変則的な3WAYとしてこちらのネットワークも試してみたくなるのが人情というもの。気持ち的には何たる壮大な遠回りと思いつつも、これで確実に音が良くなっているし、今までの経験がいろいろな意味で生きているので、まあ、趣味としては「良し」としなけりゃいけないか? チャネルデバイダーとネットワークを使用した変則3WAYマルチであるが、これもまた趣味の世界であろう。


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