オーディオ日記 第14章 音の彼方(その2)2000年10月23日


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ひとつの安定したところに落ち着けないのが自分の性分なのかもしれない。今回、ふと思い付くことあり、構成を変更した。

一つの要因は高域、特に女性ボーカルにおける高域である。従来、幾度となく気にしてきたこのポイントであるが、様々なセッティングにてある程度クリアーできるところまできた。しかしながら、まだほんの一掴み納得できない部分が時折顔を出す。これを避けるにはもはや2402Hとの決別しかとないと分かっているが、現状の3WAYで本当に2405が適合できるのか自信が持てないでいた。なぜならば、DG-28での補正では10KHz位までがある程度フラットにできていれば、それ以上はダラ下がりの周波数特性で聴感上何の問題もなく、きちんと再生のプレゼンスも表現される。むしろあまりフラットに近づけると、落ち着いて聴けなくなってしまう。このような状態で言わば同類である2405がシャリ付きを出さずに透明感、エコー感の再生に貢献できるのか、あるいはいっそリボン型が良いのか、あるいはエール音響のような超高級ドライバーが必要なのか、自宅で実験できないだけに、悩みは尽きないでいた。それならば、2450Jはスペックでは20KHzまで再生できるはずだし、DG-28によってある程度の補正は効くはずだし、ということで、2WAYに戻してみた。

補正をかけない状態で特性測定をしたところでは、やはり10KHz以上が大きく落ち込み(おいおい、カタログスペックとは違うじゃないか?)、これだけでは音にはならない。 そこで、DG-28により10KHz迄は原則フラット、それ以上は3WAYの時と同様にダラ下がりとしてみた。この設定での再生であるが、落ち着いた感じがしてボーカルもプレゼンスをあまり失わずに、シャリ付きをもう気にする必要もなく楽しめるようになった。その他の音楽もまあまあ聴けるではないか。多分F-20を一台にした目に見えない効果もあるのだろう。ただ、何となく線の細い感じがして、弦主体の音楽には乗り切れない。DG-28の補正は軸上1.2mの距離で左右それぞれ個別に補正を行い、P-102を使用せずにP360のパラレル接続で低域と中高域に使用。中高域のレベル設定はアンプにて-15dBで以前と変わらず。
1日この構成が聴いてまあまあ満足であったが、次には中高域にP-102を使用し、P-360はBTL接続で使う方式をチャレンジした。BTL接続については過去に一度挑戦して、それなりの効果を確認できていたが、その時点ではあくまでも3WAY狙いであったためにアンプ台数が不足し、途中で元に戻した経緯がある。上記の構成でまあまあと書いたのは、やはりスピーカの音というか、音楽に浸りきれない部分が残らなくもなく、音色という観点からはベストではない、という感じがしていた。そこで、どうせ2WAYで良いのなら、ここはBTL接続に行くべきだというのが自然な結論と考えた。 P-360はBTL接続で出力200Wが600Wになるが、ユニットの見かけインピーダンスが半減(8オームから4オーム)し、ダンピングファクターも300から150となる。これがどのような意味と影響があるのか、実の所は良く分からない。(インピーダンス4オーム以下のユニットは基本的には接続できないということらしいが)。BTL接続で単に出力が増すだけなのか、音質への影響があるのか良く分からないが、とにかく圧倒的に余裕があり、EVX-150Aが「軽く」、「小さく」鳴る。 あくまでも比喩であるが、そう感じる。低域が力強く、豊かになったような気がするが、決して高域とのバランスが狂う訳ではない。また、所謂低音も音像は小さく、肥大した感覚にはならない。それでいて、必要充分な低域が再生できているような。だから音楽が気持ち良い。ユニットを離れて音楽が奏でられているような。特にクラシックにおいては音がスピーカーの箱からはなれ、漂うような弦の感じが出る。そして何よりファットにならず気持ち良い中低域。音量を上げればあげるほどリアリティが増して行き、うるさくはならない。ボーカルのシャリ付きなど、どこかへ消えたかのよう。

う~ん、どうしてこうなるのか理由がやはり良く分からない。EVX-150Aをきちんと駆動するためにはやはり大出力のアンプが必要なのであろうか。今回のこの差は出力の問題ではなく、質感が違うような気がする。なお、チャネルデバイダーのスロープ特性は低域側が-12dB/Oct、中高域側が-24dB/Octを使用した。またP-102はバランス接続とした。DG-28では左右個別のチャネル毎に補正しているので、わずかであるが、周波数帯域によって、定位が動く難点がある。この点は少し時間をかけてきちんと調整する必要があると考える。

この設定で聴く音楽は楽しく、美しい。3WAYにこだわる必要は余り無いのかもしれない。10KHz以上をうまく再生したいのであれば、完全な3WAYはなく、アドオン的にリボンツィータ辺りを足していく構成で充分ではないだろうか。 そうであれば、F-20は一台で足りてしまい 複雑な結線も必要なくなって、シンプル路線となりそう。音楽のファンダメンタルはやはり中、低域にあり、いたずらにワイドレンジにする必要性に疑問無しとはしない。ただし、我が家の構成では能率合わせの意味でもアンプがもう一台必要となるなどリボンツィータ導入の実現上のハードルも別途あるが。

ルービンシュタインの皇帝第二楽章が弦もピアノも納得できる。ツインマーマンのショパンのコンチェルトも然り。 ピアノの低弦が張り詰め、震える感じが出る。 中島みゆきの新しいアルバムの夢の中へやPAINも極上である。弦は漂い、ボーカルが何より落ち着いており、不自然にうるさくならないし、線が細くなりすぎたりもしない。まさに不思議である。スピーカーの内振りも変え、ストレートにリスニングポイントを向けた。それでもやはり不安定な高域にはならない。 これは本当に具合が良い。
アコースティックベースの音像は小さく、引き締まりそれでいて迫力は充分、決してブーミーにはならない。むしろ拍子抜けするくらい。不足が無いというよりは、余分な物がない、という感じがする。次々に音楽が聴きたくなり、昨日の日曜の午後はラジコン飛行機飛ばしから早めに帰ったあと、この設定に変更し、夕方までずっと聴き惚れてしまった。
この状態にリボンツィータ追加するのが本筋なのであろうか。 それともこの先に真の3WAYの世界があるのだろうか。あるいはBTL云々よりもアンプの影響が大きいのであろうか。近づきつつあり、見えてきたような3WAYマルチの世界が別の角度からみることにより、また少し遠くなってしまったようにも。でもこれは別の山であっても一つの頂上なのかもしれない。2450JとEVX-150Aという個性の強いユニットを使いこなし、納得の音色で音楽を奏でさせるためにはまだまだいろいろなアプローチが必要と分かった次第。確かにホーンドライバーや15インチウーファーは使い辛く、途中でギブアップする人も多いようであるが、これはしばらくチャレンジであろう。 ドーム型に逃げるのはまだ早すぎる。(おとなしく、気持ち良く聴けるという点で、興味はあるのだが、、、、)小音量でも何となく楽しめるような気配もあり、これはもう少しチャレンジなのだが、多少期待してしまう。 ただ、本領はある程度の音量によるリアルさであろうが。


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