オーディオ日記 第6章 脱出(その2)1998年12月日付不詳


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12月に行ったは作業はいくつかのステップがあり、以下に個別に記す。

(1)左右の定位と左チャネル高域の違和感
高域の左右違和感、定位に不安定さについて、まず高域ユニット、ネットワークごと左右の交換を行った。症状が右チャネルに移ったような気もしたが、明らかではなく、症状が減ったような気もした。 フラッターその他の影響も考えられるため、測定により補正しながら、グラフィックイコライザーをかけることとした。これによりベストではないが、高域の違和感については改善された。 従い、コンデンサ等の問題ではないと考えて良いと思われる。

(2)F20の借用
試聴機が届き、バランス接続により早速試聴した。なお、高域、中域にはデバイディングネットワーク(6.5KHz)を挿入したハイブリッド構成のマルチアンプシステムである。また、測定によるイコライズも上記と同様に実施した。結果は「絶句!」である。過去に得ようとして得られなかった音がすんなり出てきたのである。 これは遥か30年も昔、親友の家で聴いたJBL Olympusの音に近く、しっかりとした低音に支えられた過渡特性の優れた全くうるさくない音。涙ものである。チャネルデバイダーの質によりこれだけの差が出るとは予想だにしなかった。DODのチャネルデバイダーの音はいったい何ナノだ?特に、声の質感が非常に良くなった。また高域については現行のグライコではイコライズしきれていないせいか、多少定位感に問題を残すが、クリアーさ、透明さについては全く問題がない。ボリュームを若干上げても不思議なことに耳につくうるささがなく、非常にパワフルな音となり、これは「浸れる」という感じである。もはや、クロスオーバーネットワークの環境には戻れない! しかし、何でこんなに差があるのだ? これはもうすぐにAccuphaseのチャネルデバイダーの「買い」である!!

(3)Accuphaseチャネルデバイダーの購入
チャネルデバイダーの購入の決意をしたものの、F20でいくのか、3WAYのF15Lにするのか思案の別れどころである。おそらく、今回これだけの改善があったということは長い目でみれば3WAYマルチへの移行が自然であろう。ただし、改善効果やスペースファクタを考えると2WAYで良いかもしれない。F15Lが中古で138,000円(周波数ボード抜き)。F20は新品2割引として184,000円。大いに悩んでいるところにF20の展示機があるとのグッドニュース。なんとメーカー保証がついて149,800円であると。オーディオユニオン新宿店へ行き、交渉したところ、周波数ボード込み、消費税込みで160,000円となった。音質的には新製品であるF20の方がずっと良いとの店の人のアドバイスもあり、結局は音が良くならなければ、支出に対する意味が全く無いので、F20に決定した。 価格については大変にラッキーである。全くの新品ではないが、保証付きの美品。さらに99年より同社の製品保証は3年間にのびるとのこと。 Accuphase社の製品は音質はもとより、自宅での試聴、保証、故障修理の体制といい、全くオーディオファンの心を掴んで離さない。

蛇足であるが、届いたF20には何とFB290の周波数ボードがおまけについているではないか!?(これは何かの間違いかもしれないが、おまけということでもーらい。)

さて、F20であるが、650Hzの周波数にて分割、スロープ特性は低域、中域とも-18dB/Octとし、JBL2450Jのドライバーのみ逆相接続。レベル調整はP-102側にて-13dBとした。従い、F20では中高域の絞り込みを行っていない。(アンプにて絞った方がS/Nが稼げるため。F20での絞り込みはまだ充分試していない) さてさて、その音であるが、何ともスピーカーの能力がやっと発揮されたのでは、と思えるグッドな音。今までの音は一体何ナノだ? これはクロスオーバーネットワークの音だったのか?確かに既に20年程度使用しているネットワークであり、何らかの劣化をしていることはあると思うのだが。
不思議なことに従来アンプのヒートアップの前と後に相当の差を感じていたのだが、この構成ではこの差をあまり感じない。電源オンの直後から結構良い音で鳴る。これはどうしてだろう。とくかくビートルズやブラザースフォーなど最高で、この声の質感には参ってしまう。また、弦についても非常に艶やかである。さらに音量を上げた時の快感が何とも言えない。非常にエネルギーバランスが良く、本当にうるささを感じないのである。継続的に行ってきた数々の改善作業がやっと総合的に納得できるレベルへと達したのかと思うと努力(?)が報われた感じである。空気感、空間のイメージが出てきて、音に奥行が出てきたようにも感じられる。昨年8月にスピーカユニットを総入替してから1年半近く。 紆余曲折を経てやっと落ち着いたと言える。(願わくばこの状態が続くことを!?)
なお、中高域のネットワークの結線はなるべく短くし、すべてMonitorPCケーブルとした。当然のことながらアッテネッターは入れていない。この中高域についてはほとんど違和感を感じることがないため、この部分のマルチ化は急ぐ必要はないでは?と思える。現状、低域と中域のつながりの辺りにレスポンスのムラが(あまり正確ではないが)測定されており、今後はこれらの改善に手をつけていく必要がある。左右の定位についてはグライコを聴取位置での測定による補正を行ったため、かなり改善されているようにも思うが、理想から考えるとまだまだである。 いずれ機会を見てデジタルグライコの導入を図ることになろう。 現行のアナロググライコは非常に古いのと各バンドの補正を必ずしも望み通りに行うことができないという問題点があり、いずれ機会をみて更新しなければならない。
グライコの候補は当然DG-28であるが、現状ではDAコンバータ単体を持っていないため、ここだけ急いでもだめ。 トータルに考えるとDAコンバータまたはCDトランスポートとDAコンバータ部が独立して使用できるDP-65Vのような製品が同時に必要となる。これは合計金額では結構高くなるため、当分無理であろう。

当面の回避策としてはDC-61程度の単体DAコンバータの導入も考えられるが、本来必要なのはデジタルグライコである。実際のところCDP-R3の音にはそれ程不満がない。あるいはテクニクスのプログラマブルプロセッサーのようなデジタルのグライコ機能を安価に実現した製品も候補として考えられる。 このプログラマブルプロセッサーは機能設定用にDOS/Vパソコンを利用しなければならないのが、問題点であり、さらに内臓DAコンバータ部分が弱いと考えられる。(価格的には仕方ないと思われる)
一方で設置場所の観点からは新たな機器をもう置く場所がない。将来的にはTV画面の拡張も行いたいので、あわせてレイアウト変更、ラックの作成や変更など必要。この観点からも、3WAYマルチへのハードルは高い。 なお、別の観点ではあるが、デジタルグライコとは別に中高域のディバイディングネットワークについても厳密な吟味が必要であろう。 特に端子やコンデンサの品質がこのままで良いのかという点。
特にコンデンサの質については低域のディバイディングネットワークにおけるこの音質の差を目の当たりにすると、是非とも追求しなければいけない点であると思う。また、聴取位置での測定の結果、バスレフポートの作成により低域に思わぬ弱点の発生を確認している。バスレフの効果の出ている40Hzは問題ないが、その上の50~63Hz辺りが大きく凹むのである。聴感上はそれほど違和感を感じないので、測定の誤差もあるかもしれないが。 これはおそらくスピーカーボックス自体の容積が小さすぎるのが原因ではないかと推測している。この点についての改善は相当高価な箱を購入するしかアイデアが浮かばず(自作は無理!)作業は将来的なものとならざるを得ないが。


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