2001年8月

ロシア帆船パラダ号 2001.8.6.  おろしあの船

港の町には船は珍しくもないけれど、
ちょっと珍しい3本マストの船が錨を下ろす。
遠い国のにおいを乗せてやってきた、
遠い国の若者が、立派な制服も窮屈そうに、
幼子の笑顔でウィンクをくれた。
訪れた東洋の親子連れたちを見て
思い出すのは母のおもざしか、
それとも恋人か。
世界の海を巡る船とともに想いも旅をするのだろう。
ハウスの見える家の前で火を焚くお盆 2001.8.15.   お盆

家々の門かどで松に火がつけられる。
いつもは見られない顔もみな揃い、
家々はそれぞれにいつにない賑わいになる。
家で火を焚いた後は花と松を携えてお墓へと歩く。
そこにもまた、普段は見られない顔顔がある。
ヒールの高い靴を履き、お化粧の似合う女の子も、
ヨチヨチ歩きの頃から、家の火を眺め、お墓に松をくべに来たのだ。
もうもうと煙るその向こうで、今はいないおばあさんが手を振る。
お山の大将もちょっと夏バテ 2001.8.23.  あっついなあ

ひとけの少ない暑い午後。
愛嬌を振りまく相手もなく、岩山を一人駆け上る。
どこが一番涼しいか、どこが一番安らげるか。
小さな公園の小さなサル山。
こんなに小さな世界の中で、それでも彼は考えるのだろう。
今求める一番の幸せを。
落ち着いたこの場所で安心した顔が振り返った。

暑さなんかへっちゃらさ 2001.8.23.  もくもくと

他の山羊たちがみな木陰で休んでいるのに、
一頭だけ、一心に草を食む。
強い日差しをものともせず、ただただ口を動かして。
どんなに暑い日なかでも、頭から汗を滝のように流して遊ぶ、
真っ黒に日焼けした幼な子のように。
せめて帽子をかぶせてあげたいな。
そんな事をふと思う、無心の姿に。

music by Sora Aonami