劇団太陽族
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『それを夢と知らない』

−町の小さな映画館で−

2003年6月19日収録

−−再演に当たって作・演出に聞いてみました。
岸部 今回、1998年初演の作品の再演ということなんですけども。なんで、また再演を?
岩崎 一つは、今回は芸術創造館と西鉄ホールに持っていく、ということがあるからさ。前回、西鉄ホールに持っていったのが「ここからは遠い国」という作品であったのよね。「それを夢と知らない」っていうのは、その続編的な要素がある作品ですから。それが一つ。
それから、もう一つは、この間、吹田メイシアターという劇場で、ワークショップ公演でこの作品を上演したんですね。それで、いろんな年齢層の方々が出はりました。下は20代前半から上は76才くらいやったかな、そんな声楽の先生まで。その時、だいぶ書き換えもやったんです。もともとある意味、太陽族の当時の劇団員に対する「あて書き+α」という気持ちで書いた作品なんだけど。吹田の町に住んでらっしゃるオーディションで受かったメンバーとやってみたところ、作品のすごく新しい魅力みたいなものがまた見れるのかな、ということを思ったということも一つありますね。
劇団員もずいぶんと当時上演した時と変わってるんですけど、今いるメンバーは、この「それを夢と知らない」をやるのに、ぴったりはまるなという意識があるんですね、僕の中に。それも、再演を決めた一つの大きい要因。
あとは、客演の人たちの魅力も十分に出せるかなというふうに思ったっていうのが、この再演を決めた物凄い大きい理由やと思うわ。
岸部 去年「ここからは遠い国」にも出てくれた中村なる美さんと、南河内万歳一座の前田晃男くんと、遊気舎の林真也くんが客演してくれるわけですが、3人についての印象は?
岩崎 中村なる美はねえ。好きなのよ。ふははは。何が好きなんか、自分でもよう分らへんねんけどね。
岸部 前から言うてるね。
岩崎 何か好きなのね。やっぱり、女優さんとして見てて面白いなと思うんだね。いわゆる派手な魅力の人じゃないんだけど。もともと劇団☆新感線にいらっしゃったということで、体の切れはもちろんいいし。お芝居も的確なお芝居をしはるんやけど。どっか彼女の持ってる空気が寂しげなんだよ。それがね、僕はそれがこの「それを夢と知らない」にとても合うんじゃないかなというふうに思ってるわけです。中村なる美さんという人は物凄くものを考えてる人なんだろうなと思うんです。それと、とても背が高いというのが面白いかな。うちの劇団員は、突出して背が高い人というのはあんまりいないんで。
岸部 ささじゅん、高いで。
岩崎 んー、失礼。新たなる劇団員、佐々木淳子は背が高いですが、すらっと系・・・。
全員 はははは。
岩崎 の、人はうちにいないわけですね。
岸部 はい。
岩崎 中村なる美さんは、今回エアロビの先生という役なんで。そういう部分でも、とてもマッチするかなというような思いがあります。
前田晃男くんに関しては、南河内万歳一座のお芝居を随分と見せてもらって。いっぱい魅力的な役者さんがいる中で、前田晃男くんに惹かれるなっていうのを思ってました。その魅力が何なんやろって。一緒にやってみないと見つからないと思うんですけど。それが何なのか見極めるために出てほしいなと思ってるとこあるわけですね。この間の南河内万歳一座のお芝居…
岸部 「みんなの歌」
岩崎 その中で、いつもの前田晃男くんと違うタッチのお芝居をされてて。あれ、芝居のやり方を変えたんかなーと思って楽屋に会いに行ったら、いつもの前田晃男くんがいて安心したっていうのがありました。僕にとっては舞台で輝いて見える人なんで楽しみです。
林真也くんに関しては、こないだひとり芝居を創造館で見せてもらって、すごい達者な役者さんやなと思ったね。その芝居で、3本目の林くんが自分で作ったお芝居がとても面白かった。言葉が極力少なくなってて、見えない敵というかそういうものにおびえ続けているという役柄を演じられてたんです。遊気舎ってエンターテイメント系の劇団だと思うんですけど、遊気舎の面白いところはその裏側にある何かオドロオドロとした気持ち悪い部分にあるのかなと思う。林くんとは、この間福岡で情宣いっしょに回ったんです。林くんの情宣用の写真っていうのが、なんかジャニーズ系のサラサラ髪のにっこりした少年のように写ってるんだけど、その裏側にある彼の暗さみたいなものを、僕はとても魅力的だなと思うんですね。今回の映画青年、初演は三上が演じた役なんですけど、また新しい役柄として立ち上がってくるんじゃないかなというふうに思います。
岸部 今回は新しい客演さんもいて、劇団内では三上が役を変わりますよね。
岩崎 そうですな。
岸部 初演に出てて、そのままの役で出んのは、森本と岸部と、篠原と、だけ?
岩崎

だけ、です。

岸部

南勝さんの役っていうのは改訂ですね?

岩崎 そうですね、改訂。
岸部 どういうふうに改訂したいかっていうところを。
岩崎 まず、初演の時は、舞台になってる映画館の主であるところの映写技師であるお父さんっていうのは出て来なかったんですよ。
岸部 存在は書いてたけど出て来なかったんやね。
岩崎 不在の人ですね。映画館の閉館の日に、ずっと映写室に上がりっ放しで出て来ない。結局、ロビーで右往左往してるのは、僕、岩崎を中心とした世代の人たちということだったわけですよ。戦後なり高度成長を担ってきたのはやっぱり、南勝さんたちの世代で、その人がこのロビーに降りてきた時にどんな言葉を発するのかなっていうのはやっぱり聞いてみたい気になったね、僕自身も。と言うのは、9.11以降またアメリカがいろんなところにブイブイとおどしをかけてるような昨今の状況の中で、なんか右往左往している30代20代の姿だけでは現在は切り取れないなと思って。だから今回は、南勝さんにこのロビーに降りてきてもらう映写技師の役ということです。
で、南勝さんの中では何かもうプランが出来上がってるらしくて。
全員 おおー。早い。
岩崎 物凄くダンディな人になりそう。
全員 ふふふふ。
南勝 いや、邦画系やってるか洋画系やってるか、そこをちょっと聞いたわけやけどね。
   
−−作品の舞台になってるのは今日で閉館するという映画館のロビー。美術プランを練るため、あちこちの映画館を取材した今井から。
岩崎 趣味で行くと、恐らく俺は洋画系やろな。
今井 この「それを夢と知らない」の映画館って誰の持ち物なんですか?
岩崎 ん、だからビル自体はあの、あれやんか。
森本 キャッチャー。
今井 キャッチャー。
岩崎 キャッチャーの、ビル。
今井 で、この映画館を作ったのは誰なんですか?
岩崎 ピッチャーの、親父さん。
今井 親父さんが、個人経営してはった。
岩崎 そう。
今井 どっかの映画会社直営のとかそんなんじゃなくて。
岩崎 たぶん個人やろな、うん。
今井 親父さんの趣味。
岩崎 だから、興行主やねん。映画の業界っていうのは、たぶんその地域の興行権とかいうのがものすごくあって。せまい、せまいのよ。で、これはあった話なんやけど、どっかに多目的ホールが出来てさ、そこで上演会やるやんか。そうするとね、ヤクザが殴り込んでくるのよ。「できへんようにしたろか」って。「ここの興行権はうちが持ってんねんぞ。断りないってどういうことやねん。」って。
南勝 そうやな。
今井 ちょっとこう腹巻きでもしてそうなオッチャンが券切ってはるところか。初演の時、北山あきが着てたようなほんまの事務服きてる人か。それか、小劇場行ったんかと思うような若い方がやってるかって。取材に行ってみたらいっぱい分れてたんで。
岩崎 分かれてる。だから、新しいいわゆるミニシアター系のところはさあ、映画好きが集まってて。「それを夢と知らない」の映画館なんかは、たぶん古い興行系のところやと思う。
今井 一軒ひまでおばちゃんが機嫌ようしゃべってくれた映画館があって。そこだけ隠し撮りせずにどうどうと写真撮ってたんですけどね。「チケットほしい」って言うたら、おばちゃん、近所のおばちゃんとしゃべりこんでて相手にしてくれなくって。「すいません、あの・・・」って。
岸部 そこでは何がかかってんの、その映画館。
今井 「あずみ」。
岩崎 東映封切り系か。
今井 そこはね、ひとり。しかも1000円。
全員 へー。
岩崎 それってすごい安いね。
今井 金曜日サラリーマン1000円やった。
篠原 金曜日の一回目の上映が安いっていうところありますよね。
今井 いや何かね、劇場によっていろいろ違う。第七芸術劇場(十三)はね、金曜日はカップルデーでカップルやったら安いんですよ。いろいろ映画館によってサービスの体系が違ってる。
岸部 レディースデーって言うのはあるねえ。
今井 だから結構がんばれば安い。写真撮らせてもらおうと思っても、そういう「私はここの単なる受け付けやってるだけ」って言うおばちゃんの映画館は結構警戒心がないですけど。
岸部 ああ。「かまへんよー」みたいな。
今井 天王寺のところはすんげーおもしろ雰囲気で色合いもよかったんで、盗み撮りしたかったんですけど、監視のオッチャンがすごい厳しい。
岩崎 あそこは、もう。ね、シネコンの一部に組みこまれてるでしょ。
今井 そうそうそう。
岩崎 ね。だからよ。
今井 でも建物は古いです。
森本 あ。アポロでしょ。
岩崎 うん、そう。アポロの裏の地下に降りていくところの映画館は、組み込まれちゃったんだよ。
今井 どうしようかな、でもオッチャンの目がすごい光ってて、何か言われるとイヤやなと思って。
全員 ははは。
岩崎 今、一番ひなびた感じがするのが、塚口やね。サンサン劇場。
篠原 ああ。
岩崎 あそこはすごいよ。もう、ほんま。「ゴジラ」と「とっとこハム太郎」見たけどね。
岸部 なんでや!
全員 ははは。(爆笑)
岩崎 やっぱ家族づれが来ててね。もうファミリーな雰囲気があっていいんだよね。
今井 あと、受付カウンター。200人は入るくせに何のお菓子も置いてないところが一軒あって。ほんまにこんな机ポンとおいて、そこにモギリのおばちゃんがいて。僕が行った時にはモギリのおばちゃんすらいなくて。チケット売ってるおっちゃんが「どうぞ入って」って言うて。ほんで、入って行ったらお客さん誰もいなくて。
岸部 ふうん。
今井 あのカウンターの所、透明なガラスじゃないですか。ちょっと明かり入れて。で、ちょっと非常灯つけて。天井みたいなところに、ランプつけて舞台の転換の時にやったら綺麗かな、なんて。
岩崎 あ! いいやん。
今井 非常灯。
岩崎 やろう、やろう。
今井 非常灯、結構目立つしな。
岩崎 いやー、それおもしろいね。
   
−−と、プランもふくらみ、稽古への意欲も高まっていくのでした。
岩崎

とにかくですね、しっかりと稽古やってもらう。客演さんも迎えて、新たなる「それを夢と知らない」を皆さんにお目にかけようと思っておりますので。是非是非、足をお運びいただければうれしいなと、劇団員一同おまちしております。