アメリカの好景気に騙されるな に対する投稿
劉表さんのご意見
 アメリカの景気がよさそうに見えるのもかつて90年ごろに日本の景気が良かったのも 単純為替レートと設備投資の更新時期、それと人口構成の問題であると考えてます。

 80年代前半の強引なドル高財政赤字政策によりアメリカの産業は壊滅し、また浪費癖が染み付いた。
 そのためたまたま、日本が強いように見えただけです。
 その効果が円高に転じた90年ころまで続き日本はバブル景気に沸きました。

 ところが、その日本がバブルに沸いているあたりからアメリカでも古くなった設備の取替えが進んだ。 ドル安で多少は産業も息をつくようになりました。

 一方日本は80年代後半にした設備投資が世代的にだんだん古くなっていきます。
 アメリカは90年代に入ってからの新しい設備を使っている。となると競争力は逆転します。
 設備の平均年齢もたしか逆転したはずです。  日本で投資がされないから、アメリカへ金が向かうしかありません。それが好景気の正体だと考えます。

 人口構成ですが、ベビーブーマー世代の問題です。アメリカのほうが少し世代が上なのですね。
そこで、景気の日米での差が需要供給両面で起きると考えています。


管理人より
 度々貴重なご意見をお送りいただきありがとうございます。
 何か意見を持たれる方、何か一言言いたい方、是非とも忌憚のないご意見や反論をお聞かせください。

 平成不況はよく「金融不況」「構造不況」などと呼ばれてます。劉表さんのご指摘は、主にこの金融不況の観点から 見ていると言えるでしょう。

 金融に多大な影響を与えるのが「為替」であり「証券・株式」であり、また「マインド」だと思います。
 そして、'80代のアメリカは貿易赤字に苦しみ、高いドル政策の放棄により円高が進み、海外の投資家は一斉に円を買いました(詳細1)。
 これがバブルという好況を生んだといえるでしょう。

 ただ80年代のアメリカと90年代の日本では、同じ不況と言えども形は全く異なっているとも筆者は考えています。
 まず貯蓄率です。日本とアメリカの貯蓄率は、80年代と90年代で1度も逆転されたことがありません。不景気でも好景気でも アメリカは低く、日本は高いのです。つまりドル高によってアメリカ国民に消費癖がついたとしても、その後ドル安になっても 全く改善されていない。しかし経済状況は大きく変わりました。

 むしろ個人消費の増加・減少は二次的なもので、根本には劉表さんの指摘された設備投資があげられると思います。
 為替変動による設備投資の影響は大きいでしょう。円高による海外への工場の移転は雇用機会の空洞化を 生むだけでなく設備投資の機会も奪います(詳細2)。
 このために日本は膨大な貿易黒字とは裏腹に経済は沈滞しているのではないでしょうか。

 また人口構成が影響しているというご意見はまさに同感です。構成が変われば消費動向も変わりますが、日本では老人向け のニュービジネスでまだ成功例がありません。老人介護に関してはいよいよ採算があえば一般企業も参入できる環境が整ってき ましたが、これが大きな市場になるにはまだ時間がかかるでしょう。

 投稿いただいてからアップするまで少々時間がかかってしまって申し訳ありませんでしたが、これに懲りずにまたご意見を 聞かせていただければ幸いです。

劉表さんからの感想(1999.9.13投稿、9.18掲載)

(詳細1)
 円高が進むとなぜ日本へ海外の資金が流入するかを円建て預金で考えてみましょう。

100ドル投資した場合、満期時に受け取る金額は、
(元金)$100+(金利)$x

となります。しかし実際はそれを母国の通貨に変えなければなりません。
 預金した時が1ドル200円で、満期になった時が1ドル100円だったとしましょう。またその間の平均利率が5%で あったとすると、

$100=\20000……円建ての投資金額

\20000×1.05=\21000……円建ての満期時手にする金額

 これを1ドル100円でドルに変換するので、

\21000=$210……ドル建ての金額

となるわけです。
 実際にはこれに手数料などかかりますが、当時の円高の流れは僅か数年で円の価値が倍以上に跳ね上がったため、 手数料の負担は相対的にかなり低いものでした。

 同様のことが株式などにも言えます。
 当時の日本は戦後最大の好景気に酔いしれており金利も高かったので、円高基調にある日本への海外からの投資は 加熱状態にありました。そしてそれがさらに円高・株高をもたらしたのです。

(詳細2)
 電力・交通などのインフラから原材料の調達などの理由により、全ての生産拠点を海外に移すことが できるわけではありません。
 たとえばハイテクノロジー分野では、原材料にも高い品質が求められますが、海外の企業ではそこまでハイクオリティな 原材料を調達できないことがあります。
 また高品質の材料を作れるような先進国への生産基地移転は人件費の高さや、為替、納期・研究開発期間 の短縮、本社との意思の疎通などの理由から必ずしもメリットがあるとはいえません。
 よって高品質の製品を作る工場については、これまで通り国内にあることが多い。
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