本日の御題:日本の教育を考える〜社会科編
◆公民とは?
 教育問題で社会科というとまず歴史認識問題が頭を過ぎってしまうが、本コラムで扱うのは「歴史」ではなく 「公民」であることをまず断っておきたい。

 まず「公民」とは何かを簡単におさらいしたい。
 中学の社会科は大きく分けると「地理」「歴史」「公民」に分けられる。

地理」とは、どこどこの地域では林檎が取れるだとか、どこどこの国は石油が採れるだとか、 はたまたどこどこの地域は雨が少なく気温が一年を通して高いだとか、暖流と寒流がどこどこを流れているとかetc...

歴史」とは、平安時代に起こった出来事や、遣唐使が盛んだったとか、はたまた西ローマ帝 国が、オスマン・トルコがいつ栄えいつ滅んだかを学ぶ。

 おそらく多くの日本人にとってここまでは簡単にイメージが湧くだろう。しかし、「公民」 となると、話は変わってくる。
 まず言葉が浸透していないので分からない方もいるだろう。簡単に言えば、議会制民主主義はなんぞやから衆参両議院の働き、 議員の任期や選挙権・被選挙権の年齢など主に政治システムの基礎と、労働基準法や男女雇用機会均等法などの 法律関係を学ぶのが公民である。

 さあ、ここまでクドクド説明してから、いよいよ本題に入ることにしよう。

◆公民を重要視しない中学の社会科
 実は公民という分野は高校の入学試験に占める割合が総じて低い。地理:歴史:公民の比率は、それぞれ4:4:2である。
 しかも高校に入ってからは一般には殆ど学ばないため、知名度は著しく低下する。
 そしてこれこそが日本を政治三流国にしている現況ではないかと筆者は考えている。

 私にも思い当たる節のあることだが、とにかく政治と言うのは手を付け難い分野である。新聞を日頃から読んでいても、 またテレビでニュースを毎日見ていても、日常の生活に直接影響することであるにもかかわらず分かりづらい。
 たとえば「委員会」「審議会」って何? と聞かれていったいどれほどの人が正確に答えられるだろう。また、国会で法律が 作られ(立法府)、内閣は行政府だからまさに法律に則って様々な事をする機関であり、裁判所は司法だから……といった具合に漠然 とは理解していても、どこで何がどんな風に機能しているのか、また法案の審議とはそもそもどのように進められているのか、 非常に分かりづらい。

 するとどうなるか。政治に興味を持っているものの、実際に向かい合おうとすると敷居が高いので諦めてしまうということが 起こるのである。これが繰り返されれば、次第に政治に対して興味も薄れていくだろう。
 これは詰まるところ、基礎知識がないから理解しづらく、理解しづらいから無関心になる、という流れがあることを意味する。
 そしてその原因は、中学時代の社会科にあると筆者は考える。

◆公民をもっと大切にすべき
 以上の理由から、筆者は公民をもっと大切に扱うべきだと考える。また高校でも一般教養として教えるべきだ。
 政治に関心を持ってもらうためには、その基礎知識を前もって持っている必要がある。
 でなければ、ある政党が数に物を言わせてどんなに腹黒い法律を通したとしても、そして野党がどんなに真顔で批判し、国民に 訴えたとしても決して通じないだろう。

 昨今、投票率の低下が問題になっている。短期的には投票時間の延長でいいだろう。しかしそれは抜本的な解決には ならない。長期的には教育から変えることが必要なのだ。

 民主主義とは国民が主役の政治システムである。その国民に政治システムの基礎を教えなければ、選挙のときに候補者を選ぶ 基準のレベルが低下するだろう。その結果、知名度ばかり高いアイドル議員で国会が満たされるようなことが起これば、 それこそ選挙によって選ばれた訳ではない官僚の思うが侭である。
 国民は政治家は選べても官僚は選べない。 つまりこれは官僚に政治をゆだねると言うことは、国民の手から政治が離れることを意味する のである。
 そうならないためにも、日本の社会科の教育を変えなければならない。

珊瑚さんからの感想(1999.08.17)
陽圓喜さんからの感想(2000.04.05投稿:2000.04.09掲載)

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