■ネミー・ティンピラー:Nash Skulkin
■タリー・ティンピラー:Ringo Skulkin
■ウゼー:Sulky
ネミーが持っている梨、タリーが持っている林檎から、Nashi→NashとRingoという日本語由来か。
Skulkinはskeleton(骸骨)と、skulking([恐怖・臆病・悪巧みなどで]こそこそする、こそこそ逃げる)からと思われる。
ここからは余談になるが、イギリスでリンゴといえば元ビートルズのリンゴ・スター(Ringo Starr)が有名である。彼の名前のリンゴはアメリカ西部開拓時代のガンマンのリンゴ・キッド(本名John Peters Ringo)からとられた芸名である。John Peters RingoのRingoは日本語の林檎とは関係がなく、RingoldやRingrose、Ringrosなどから派生した名字らしい。
日本人から見ると、日本語の林檎がなぜ英語圏の人物の名前に使われているのかと疑問に思うかもしれないが、以上の通り、日本語の林檎は関係ないのである。
Sulkyは、「すねた、むっつりした、不機嫌な」といった意味。
日本人の「ファンシー」のイメージは「可愛らしい」だが、これは「意味が日本で変わってしまった外来語」。
イギリス英語だと「装飾された」の意味合い。
また、現在のイギリスだと「fancy dress」は「コスプレ」の意味であり、本作においては「仮装用の服」のようなものだと考えればよいだろう。
「スサト」は「Susarto」と、ちょっと妙な発音になっている。
新聞記事の見出しは、英語版だと上の通り、頭文字で韻を踏んでいる。
「Pawnbroker Perishes in Pickpurse Plunder!」:質屋、スリの強盗により死す!
「Discharged Diver is Dauntless Do-Gooder!」:元スリ、勇敢なる善行
※ここのDiverは俗語で「スリ」のこと。
電気通信士の5ゴウは、裁判中でもひたすらモールス信号を打つための器械(電鍵)を叩いているが、英語版だと文章の終わりに必ず「Stop.」と言う。
英語のモールス信号では、文章の最後のピリオドは「.」のモールス信号を打つのではなく、「Stop」のモールス信号を打つ慣習があるようである。
communication - Why exactly did telegraphs have to use "STOP" instead of a period and "QUOTE" instead of a quotation mark? (Or special codes.) - History Stack Exchange
以下意訳:
>1928年に発行された「HOW TO WRITE TELEGRAMS PROPERLY」という冊子には、STOPの使い方について次のように書かれています。
>句読点を使わずに意味を明確に伝えることができないと思われる場合には、「Stop」というワードを使うことができます。「Stop」は、「ピリオド」を意味する公式の電信用語として世界中で知られています。
>この言葉は、第二次世界大戦中に、小さなピリオドの打ち間違いによるメッセージの乱れや誤解を防ぐために、政府が広く採用したものです。
>政府の重要な命令は明確でなければならないと考えた役人たちは、ピリオドを示す「Stop」という言葉だけでなく、「comma」「colon」「semi-colon」と綴る習慣を取り入れました。また、クエスチョンマークを意味する「query」という言葉もよく使われていました。
■Autopsy Report:解剖記録
日本語版だと「執刀医サイモン」と書かれていたが、英語版だと、「Coroner: Dr Stevens」。
ティンピラー兄弟こと、Skulkin兄弟は、かなり難しいコックニーとスラングを使う。
ティンピラー兄弟がふたり合わせてポーズを決めるときのセリフ。
「Cos」はBecauseの省略形なので、
「おおせのままに! なぜならSkulkin兄弟は決して、こそこそ逃げ隠れしない(skulking)から!」
Juror No. 6は日本語版と同じで、英語がよくわからないという設定。
上のセリフは、「vicious(悪い)」が「wicious」になっているが、これはロシア語訛りの英語の表現。
ロシア語訛りの英語だと、「v」と「w」が一緒になってしまうことがある。
このセリフもコックニーとスラングだらけだが、後に6ゴウが意味を教えてくれることになる。
Juror No. 6「このコトは、以前あの兄弟が証言した内容と一致シマセン。
彼らは、『Lucy Lockets』から『dukes』する時間はなかった、と言いマシタ。
ワタシの慣用表現集によると、『dukes』は『手』のコト。そして『Lucy Lockets』は『ポケット』を意味シマス。」
Ringoのセリフの正解は上の通り。
「Didn't even 'ave time to pull me dukes out me Lucy Lockets.」
を意訳すると、
「ポケットから手を出すヒマすらなかったぜ。」
ということである。
「duke」には「公爵」以外に、dukesという複数形で「こぶし、げんこつ」という俗語での意味がある。
「Lucy Lockets」は、イングランドの古い童謡のタイトル。
ルーシーロケット Lucy Locket 歌詞の意味
「ルーシーロケットがポケットを失くした」という歌詞にちなんで、「Lucy Lockets」がポケットを意味するようになった。
日本語版の「lancet(ランセット)」と、英語版の「scalpel」だが、どちらも手術に使うメスのことで、lancetは両刃、scalpelは片刃。
get the wrong end of the stick:取り違える、すっかり誤解する
英語版の会話は、
Ryunosuke「6号さん、あなたは大きなカン違いをしています。」
Juror No. 6「ワタシ、棒は持ってイナイ。ワタシはネズミを持ってイル。」
英語版では、慣用句としての「get the wrong end of the stick」を理解できなかったJuror No. 6が、「stickは持っていない、持っているのはmouseだ」とボケている。