寿沙都がこの後に「大英帝国の奇天烈な風習でございます」と教えてくれるとおり、明治時代の日本には「誕生日に蝋燭を立てたケーキで祝う」風習はなかった。
そもそも日本では一般的に、第二次世界大戦頃までは、数え年で年齢を表し(=年が変わると、皆いっせいに年齢に1を加えていた)、実際の誕生日に祝うという風習自体がほぼなかった。
そういう理由で、龍ノ介は「呪いですか」と尋ねるのだが、英語版だと「悪魔崇拝(devil-worship)の儀式か何かですか」と聞いている。
それに対して、6ゴウことJuror No. 6は「違う! angel cakeじゃ!」と言い返している。
devil(悪魔)に対してのangel(天使)という言葉遊びになっている。
angel cakeはアメリカ生まれのケーキで、Angel food cakeまたはAngel cakeという。シフォンケーキのご先祖様。
Angel food cake - Wikipedia
farthings:4分の1ペニーの価値がある昔の英国のコイン。ファージング銅貨。
ha'penny:半ペニーの価値がある昔の英国のコイン。つまり「half penny」を略している。
日本語版では「小銭」としか書いていないが、英語版では実際に拾った硬貨の名前を上げている。
Farthing (British coin) - Wikipedia
Halfpenny (British pre-decimal coin) - Wikipedia
証拠品「Anniversary Bouquet(プレゼントの花束)」の詳細を調べた時の、「龍ノ介が知っている花の種類は3種類」の話。
英語版だとSusatoが「果樹以外のお花についても勉強なさってみてはいかがでしょう‥‥」とツッコミを入れてくる。
つまり英語版では、「Ryunosukeは、果物がなる木の花ばかり知っている」という解釈で、「花より団子」ならぬ「花より果物」、という意味合い。
だが、日本語版の「『梅』と『桃』と『桜』」という文章を読んで、日本人だと「果物ばかりだ」というよりは、「龍ノ介は、日本に昔からある(日本人が常識的に知っている)花しか知らない」と解釈する方がほとんどであろう。
だが、そのニュアンスは日本人以外には伝わりにくいため、英語版では「Ryunosukeは花より果物」というローカライズをしたのではないだろうか。
英語版では、
Garrideb「彼女の投げてきた『柔らかい』弾丸で、パイプは見事にノックアウトされましたよ。パイプを拾い上げようとしたら、二つに割れていましてね。スポンジでそんな風に割ってみたいものです。」
と、奥さんに向けてちょっとした反撃をしている。
Deadeye:射撃の名手
英語版では、Garridebの「deb」と韻を踏んで「Deadeye 'Deb」という異名があった、と言っている。
日本語版では、ホームズの下宿先の大家については全く不明だったが、英語版では「landlady」になっているので、大家が女性だということがわかる。
実際、原作ホームズでも、ホームズの下宿の大家さんは女性で、ハドスン夫人(Mrs. Hudson)と呼ばれている。
ハドスン夫人 - Wikipedia