■シャーロック・ホームズ:Herlock Sholmes
原作小説の綴り「Sherlock Holmes」ではなく「Herlock Sholmes」である。
Herlock Sholmesはモーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンシリーズに登場する、シャーロック・ホームズを基にしたパロディキャラで、Sherlock Holmesのアナグラム(文字入れ替え)である。
フランス語っぽく読めば「エルロック・ショルメ」、英語読みは「ハーロック・ショームズ」
参考:ルパン対ホームズ - Wikipedia
このような変更になったのには、シャーロック・ホームズの海外での著作権問題が関係していると思われる。
元の小説自体はパブリックドメイン扱いで、インターネット上に英語の原文が全部載っているほどであるが、原作を題材にした創作物については、2020年にも以下のような事件が発生している。
女性に優しいシャーロック・ホームズは著作権侵害 遺産管理団体がネトフリ提訴 国際ニュース:AFPBB News
このようないざこざを避ける為、英語版では名前を変更せざるを得なかったのかもしれない。
結果として、逆転裁判シリーズによくある、キャラクターのネーミングでの遊びが実現できたと言えるのかもしれない。
なお、モーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンシリーズで、ワトソンポジションに当たる相棒の名字がWilsonである。
本作ではジョン・H・ワトソンとアイリス・ワトソンの名字がWilsonに変更されているが、これも上記の著作権絡みの問題からと推察される。
■グリムズビー・ロイロット:Grimesby Roylott
Grimesby Roylottはもともと、ホームズ短篇集第1作「The Adventures of Sherlock Holmes (シャーロック・ホームズの冒険)」に収録され た短編「The Adventure of the Speckled Band(まだらの紐)」に登場するキャラクターである。
Herlock Sholmesとは異なり、ホームズ原作小説そのまま使われている。
上に掲載した「女性に優しいシャーロック・ホームズは著作権侵害 遺産管理団体がネトフリ提訴 国際ニュース:AFPBB News」にもあるが、海外ではホームズが登場する初期の小説は著作権が消滅して誰でも許可なく使用できるという裁判の判決があった。「まだらの紐」はホームズシリーズでも初期の作品にあたるため、こちらは問題なく使えたのかもしれない。
■デミトリ・デミグラスキー:Vilen Borshevik
Vilenはvillain(悪役)、Borshevikはボルシチ(Borscht)からなのかボリシェヴィキからなのか。
■ミトロフ・ストロガノフ:Bif Strogenov
ビーフストロガノフ(boeuf stroganoff / ロシア語ではбефстроганов)から。
■ニコミナ・ボルシビッチ:Nikolina Pavlova
Nikolinaは実在するロシア系の名前。
Pavlovaについては、19世紀末生まれで20世紀初頭にかけて活躍したロシアのバレリーナ、アンナ・パヴロヴナ・パヴロワ А́нна Па́вловна Па́влова(Anna Pavlovna Pavlova)が由来の可能性がある。
参照:アンナ・パヴロワ - Wikipedia
彼女は訪日公演も行っていて日本バレエ界の恩人「三人のパヴロワ」の一人。その上洋菓子「パヴロワ」の名前の由来ともなった人物で、2話のロシア人キャラのネーミングが料理名由来でそろうことになる。
■蒸気船アラクレイ号:Steamship SS Burya
Buryaはロシア語で「嵐」の意味。なお、「SS」は"S"team"s"hip(蒸気船)のこと。海外では船の動力の省略形を船名の頭に付けるらしい。よって船名は「SS Burya」。
Kazumaは、Susatoを「Judicial Assistant Mikotoba」と呼んでいる。日本語版とほぼ同じ呼び方。
■『アケルナ』の札:Paper Seal
英語版でも、日本語の「アケルナ」が書かれている。証拠品の詳細画面には「Keep out」と英訳が出る。
テイクダウン(Takedown)は、レスリングや総合格闘技において立っている相手をグラウンドに倒すこと、またはその技術。
テイクダウン - Wikipedia
■調べる:Examine
■話す:Converse
■移動する:Move
■つきつける:Present
探偵パートの4つの基本コマンド。
これまでの英語版逆転シリーズでは、「話す」コマンドは「Talk」とローカライズされてきたが、本作では「Converse」である。
Converseは「談話する、語り合う」の意味で、やや古い表現(19世紀っぽさが出る)とのこと。(ツイッターで教えていただきました)
公式開発ブログ 第2回 大いなるローカライズの冒険にもあった、カレーライスとIndian curryの違いの話は、ホームズ(Sholmes)に証拠品「校章(University Collar Pin)」をつきつけた時に聞ける。
Ryunosukeは「Herlock Sholmes」という自己紹介を聞いて、
「Herr Lockって‥‥あなたはドイツ人ですか?」(You're...German? 'Herr Lock', was it?)
と聞き返している。
ドイツ語だと、「Mr(ミスター)」に当たる言葉が「Herr(ヘル)」であり、Ryunosukeは「Lockという名前のドイツ人」と聞き間違えているのである。
Ryunosukeの勘違いに対するSholmesの答えは、
「いや、いや、ボクにはHerrは付きません。いや、Hair(髪)は付いてますがね。」(No, no, I have no 'herr'. I mean, I have HAIR...)
という冗談。
原作のシャーロック・ホームズが掲載されていた雑誌は「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」。
3DS/スマホ版では、そのまま「ストランドマガジン」という雑誌名が使われていた。
本作では日本語版、英語版ともに「ランドストマガジン/Randst Magazine」に変更されている。
3DS/スマホ版は「ストランドマガジン」のまま、現在でも変更されていない。
特別付録の番外編に合わせて、日本語版・英語版ともに「ランドストマガジン/Randst Magazine」に変更したのかもしれないが、実際の理由はわからない。
日本語版では龍ノ介が入っていたたんすを「洋箪笥」と呼んでいるが、英語版では「wardrobe」。
そもそも日本語でもクローゼットとたんすは別物で、クローゼットは「closet」で、たんすは「wardrobe」である。
上ではSholmesが「wardrobe」ではなく「Garderob」と言っているが、これは床に書かれたロシア語のダイイングメッセージ「ГАРДЕРОБ」を、英語などで使われているラテン文字のアルファベットに変換すると、「garderob」になるため。
「ダイイングメッセージはgarderob」→「garde・rob」→「rob・garde」→「犯人の名前はRobert Gardeかもしれない(※Robertの愛称がRob)」
というのが、Sholmesの推理である。
ホームズが読める簡単(?)な日本語の話。 英語版では「さよなら」「盆栽」「帝」「などなど」が読める模様。
Strogenovは
「逃げようとしてもムダだ、ロブスターが山の上で口笛を吹ける訳がないのと同じようにな。おっと、英語で言うのなら、豚が空を飛ぶ訳がない、だな。」
というようなことを言っている。
英語では「絶対に無理なこと、できないこと」の慣用句として「pigs fly(豚が空を飛ぶ)」というフレーズがある。
空飛ぶ豚 - Wikipedia
似た慣用句のロシア語バージョンが「ロブスターが山の上で口笛を吹く」。
ロシア語では「Когда рак на горе свистнет」
■共同推理:Dance of Deduction
直訳すると「推論の踊り」。確かに踊っているのだが‥‥。「D」で韻を踏んでいるのがミソ。
英語版だと「以上。シャーロック・ホームズによる、ロシアの謎の《名推理》でした。‥‥初歩だね!」
ロシア語風にElementaryの最後に「ski(スキー)」を付ける言葉遊びの模様。
ロシア人にはチャイコフスキーとかドストエフスキーとか、やたらスキーが付く人名が多いので、それをもじっているのだろう。
■論理と推理の実験劇場:Logic and Reasoning Spectacular
Nikolinaの略称としてNinaだと説明している。
英語版では一人称で「ニコ」を使っているシーンでは、Nikolinaは「Nina」を主語にすることはなく、普通に「I」や「me」を使っている。
ちょっと片言っぽい雰囲気は、英語版でも簡単な英単語を並べることで表現されている。