#438 クラウド損得勘定

2020/12/12

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 Googleが、フォトストレージサービス「Googleフォト」で無償提供してきた画像の無料・無制限バックアップサービスについて、2021年5月に終了すると発表した。具体的には「高画質」の写真(元サイズから圧縮、最大1600万ピクセル)や動画(同じく、最大1080p)を容量無制限で保存できていたサービスが、2021年6月以降は、GoogleのクラウドサービスであるGoogle Oneの一部として扱われ、15Gbyteまで無料、それ以上は容量に応じて、100Gbyteで月250円、200Gbyteで月380円、2Tbyteで月1300円かかることになる。なお、2021年5月までに保存されたものについてはこの対象外となる。

 私自身も、無料で使えるなら便利だしいざという時のバックアップにもなるのでいいかと利用していたのであったところ、このアナウンスである。有料化されることで、引き続きこのサービスを使い続けるかどうか、別のサービスに乗り換えるのがいいのか、そもそも100Gbyte250円というのが高いか安いかというところで、ネット上でもいろいろ議論が起きているところだとも聞く。

 私の場合、最近はスマホで済ませることもあるが、大量に写真を撮る時はコンパクトデジカメを使うことが多い。いずれの場合であっても、撮った写真は一旦パソコンのHDDに保存し、日付別・テーマ別に分類したあと、NASにバックアップを取るほか、サブセットとして短辺720pixelくらいに圧縮したものも作り、スマホに保存して参照できるようにしている。Googleフォトには、NASに接続したパソコンから自動的にアップロードすることで、バックアップ的に使うような感じであるが、既にバックアップも含めてローカルの環境で保存管理しているので、このサービスがなくても大きく困ることはない。

 よくあるケースとしては、スマホで写真を撮っていて、すぐに容量がいっぱいになってしまうので、自動的にGoogleフォトに保存するようにして、本体からは適宜削除するというものだろう。この場合は、撮った写真はGoogleフォトにしかないということになるから、有料化にあたり、これまで大量に保存してきた写真と今後撮る写真の保存をどうするか悩む人も多いのではないかと思う。

 単純にストレージとしての比較だと、ローカルなストレージの価格は今ではだいぶ安くなっているから、クラウドサービスはそれほどお得だとも思われない。ポータブルHDDであれば、今では2Tbyteのものが7000円くらいで買える。Googleフォトでは2Tbyteで月1300円、年13000円とのことなので、半年くらいで償却できる計算だ。スマホに挿せるmicroSDの場合でも、128Gbyteのものが1500円くらい。100Gbyte250円のサービスと比較しても、やはり半年くらいで償却できる。前にも書いたが、「月々いくら」というのは、単位当たり少額に見えても、続けていると結構な金額になるものである。

 だから、クラウドサービスを利用するかどうかは、ストレージ以外の機能(検索機能やセキュリティ、ユビキタス性)をどれだけ重宝するかどうかというところで判断するのだろう。私の場合は、通信速度に難がある分、安いMVNOサービスでスマホを運用しているので、写真はクラウド上にあるよりもローカルにある方がアクセスしやすい。

 私の場合、写真や動画は一度撮ってしまえば、あとは鑑賞するだけ(編集不要)のものなので、それがクラウドにあることにあまりこだわりはない。クラウドの一番の利用価値は、複数の端末で最新のものを参照・編集し保存できるというとことだと考えており、容量的にも小さいテキストファイルが保存できればそれで充分と考えている。なので、恐らく有料になって以降のGoogleフォトは利用しなくなってしまうと思う。

 そもそもクラウドサービスというのは、タダで使わせてもらえるだけ有り難いと思わないといけないものである。私もよく使うファイルをクラウドに保存して便利に利用させてもらってきたが、サービスが有料化されては別のクラウドサービスに乗り換えるということを繰り返してきた。今は、テキストファイル中心の常用のファイルに限定してMicrosoftのOneDriveを無料(5Gbyte)の範囲で使うことで済ませている。結局のところ、ネットの世界も長期的に見れば、「無料の昼食」なんてものはない(There's no such thing as a free lunch.)ということなのだろう。


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